第十五話 最終試験
13,14,15話一気に更新しました。すいません。私が明日、明後日を待ちきれませんでした。
どうぞ楽しんでください。
師匠の言葉から一週間後、ついにその時が来た。
今日までの一週間、師匠達の指導はなく、ひたすら技術を磨くのに全力を注いできた。理由はおそらく……いや、どんな試験だろうと、絶対に乗り越えてやる。
朝起きると、すでに師匠達の姿はなかった。
俺達は朝食を食べて準備をした。途中でソラが、武器は持っていかなくていい、と言ったので言われた通り武器は持たずに出発した。どうやらソラは来てはいけないと言われているようで、一人で家に残った。
「頑張って! 二人とも!」
「おう!」
「えぇ!」
ソラの応援にありったけの元気を込めて返事をした。ソラは扉の前で、祈るように両手を合わせていた。
ソラが、私達が初めて会ったところ、と言っていたのでそこに向かう。
懐かしい。そういえば、ここで侘び寂びを教えてもらった。
目の前には、武装した師匠達が立っている。
「来たの。覚悟はできておるな。」
俺達は頷く。
「最終試験は、あたしらとの決闘だよ。もちろん、手加減するつもりはこれっぽっちもないからね。そっちも全力で来な。」
「「はいっ!」」
やっぱりそうか。アウリエラも気づいていたようだ。俺達に動揺はなかった。
「良い顔じゃ。ラキエル、これを。」
「アウリエラ、あんたにも。」
師匠は俺に刀を、桜さんはアウリエラに大太刀をくれた。
前に言っていたものだろう。
「刀が陽に心でひごころ、大太刀は受に月でうづきじゃ。刃は儂が。」
「装飾諸々はあたしがやった。」
なんと、師匠達二人の合作とは。アウリエラも横で驚いている。
やはりこの一週間はこのために。
「素材はなんですか?」
アウリエラが質問する。
「刀にはラキエルの愛棒を、大太刀には星ノ玉鋼を使った。」
「ほ、ホシノタマハガネ……?」
アウリエラも知らないようだ。
「簡単に言うと、マナを込めて育てた、刀剣に最も向いとる金属じゃよ。」
「あとこれも渡しとくよ。」
桜さんが俺達に一つずつ腕輪をくれた。
「これは?」
アウリエラが聞いた。
「一回だけ命を守ってくれる星術を籠めた術具っていう道具さね。」
桜さんが説明してくれた。
「なるほど。」
「さぁ、説明はこのくらいにして、試験に移るよ。あんた達、ラヴァーを使いな。」
桜さんは指示と共に師匠とラヴァーの準備をし始めた。
「わかりました。アウリエラ。」
「えぇ。」
稽古のおかげか、マナが完全に一つになるまでの時間が大分短くなった。それでも師匠達の方が早いが……。
『アウリエラ、おそらく師匠達の速さからして、吹き飛ばされるか、地面に叩きつけられるかして隙を作ったら、終わる。』
『えぇ。わかってるわ。……勝つわよ。』
『おう!』
「準備できたかの。では、この石が池に落ちたら、試験を始める。」
師匠はそう言って足元の石を池に向かって投げた。
アウリエラと桜さんが大太刀を抜く。俺と師匠は居合の構えを取った。
少しの間の後……
ボシャッ
「「シュゥゥ!」」
『反一ノ型、抜天。』
アウリエラからの思考の共有。
右から彼女が大太刀を右下に振る。
一緒に俺も逆袈裟を――
ギィン!
師匠が刀で大太刀をいなした。
「フッ!」
右から大太刀の突き。
抜きかけの刀を納め半身で躱わす。
「っ!」
そこから薙ぎと師匠の横一閃。
『刀を!』
っ!
ギイィイィン!
アウリエラが大太刀を逸らし、俺と師匠の刀が衝突した。
ここまで二秒にも満たない。
俺達も師匠も一回後ろへ退く。
「次じゃ。一ノ型、抜天。」
フッ
消え、左上かっ……。
体を落とし刀でいなす。
右上から大太刀!
『俺が!』
「あぁぁ!」
鍔で止め、頭の上を通した。
『ラキエル!』
『あぁ、四ノ型、段車輪!』
二人で横に一回転。すかさず師匠達は退く。
『次は俺達が攻める。』
『えぇ。』
アウリエラと一緒に地面を蹴った。
「「二ノ型、崩盾一刺」」
俺が師匠の刀を弾き、アウリエラが後ろから突く。
「甘い!」
桜さんの大太刀が弾く。
その勢いで……
『『四ノ型、段車輪!』』
「ほほっ。」
なっ! 大太刀の上で体を捻って…そんなのありかよ。
『五ノ型、刃挟っ!』
刀と大太刀で師匠を挟む!
「「六ノ型 連衝砕」」
上から刀と大太刀の二連撃。刀が下に弾かれたっ。
まずい。地面に叩きつけられるっ。
『七ノ型、大噴刃!』
アウリエラが梃子を使い大太刀を上へ。
よし、刀を合わせて勢いよく、切り上げる!
キイィンッ
左足軸に回転っ。師匠達の体勢は崩れた。
『ここだ!』
『『六ノ型、連衝砕!』』
「まだじゃ!」
「「四七複合、段噴車輪!」」
なっ、刀と腰で縦に無理矢理回って
ガガキイィイィンッッ!
うまく軌道を逸らされたっ。
「「三ノ型、角刺!」」
師匠達の揃った突き。
「「あぁぁ!」」
腰を引き、なんとかいなす。
『行くぞアウリエラ!』
『えぇ!』
「モード パワー」
「身体強化付与、増幅!」
マナがごっそり減る。だが、これで決める!
斜めにした刀を引き、一気に刺す!
「「角刺ぃっっ!」」
「…ほっほ。」
「…ふん。」
ドオオッン!
師匠達は吹き飛んだ。一瞬ほっとしてたような……。
勢いよく木に叩きつけられたようだ。まさか死んでないだろうな。
「お師匠様!」
アウリエラが駆けて行った。
「師匠、大丈夫ですかー?」
俺も向かう。
「ほっほ。大丈夫じゃ。術具が守ってくれたでの。」
「でも、衝撃までは殺せないようだねぇ。全く……。」
どうやら無事なようだ。
「よ、よかっ……た…。」
「っ! 大丈夫か、アウリ…エ、ラ……。」
バタバタン。
俺達は気を失った。マナ切れだ。安心したからってのもあるだろう。
目が覚めると、ソラが超大粒の涙を流しながら俺とアウリエラに抱きついてきた。
外は暗かった。半日くらい寝てたのだろうか。
どうやら、俺達の剣戟の音は家まで届いていたようで、ソラはそれを聞くたびに心配を募らせたのだとか。
極め付けに、やっと帰ってきたと思ったら気を失っていて、死んだのかと誤解したらしい。
部屋の外で師匠達が撃沈されていた。何故ならソラに半日口をを聞いてもらえなかったから。
俺達がソラを説得もあって、師匠達はなんとか許してもらった。
気を取り直した俺達は今、晩飯を食っていた。
「いやぁ、本当に死んだかと思ったよ。心配したんだからね。」
「ありがとね。私達はこの通り無事よ。」
「ほっほ。すまなかったのぉ。儂らもつい熱くなってしもうた。」
「熱くなりすぎよ。」
ソラが冷たく言う。
「す、すまんのぅ。」
「おほんっ。」
桜さんが咳払いをする。
「おっと。そうじゃった。アウリエラ、ラキエル。試験の結果じゃが……もちろん合格じゃ。最後まで諦めなかったところが特によかった。その心、忘れるでないぞ。」
「「はいっ!」」
声を揃えて元気に返事をした。なかなかに嬉しいな。
「やったね。アウラ、ラキエル。」
「あぁ。」
「ありがとう、ソラちゃん。」
「ところでさ、二人はその…これからどうするの?」
何かを心配するようにソラが聞いてきた。
「……もちろん、旅を続けるわ。ソラちゃんには悪いけど…。」
「う、ううん。全然、私のことなんか気にしないで。」
言葉と表情が一致していない。ソラは良い意味でも悪い意味でも素直だ。
「いつ出るんだい?」
桜さんが聞いてきた。
「明日の朝に。それでいいわよね、ラキエル?」
「あぁ。」
それを聞いて、さらにソラの表情は暗くなった。
晩飯の片付けをし、お風呂から出て寝室に向かっている途中、アウリエラの部屋から静かな泣き声が聞こえた。
コンコン
「アウリエラ、入るぞ。」
「え、ラキエル? ちょっと待って………良いわよ。」
そっと部屋に入る。
「大丈夫か?」
「何が?」
そうは言うが、知らないふりなんてできない。わずかに彼女の目が腫れている。
俺はアウリエラに向かって歩き出す。
「な、何、何?」
バッ
「胸ならいくらでも貸してやる。俺の前では泣くの、我慢しなくていい。」
「……もうっ、グスッ…ずるいぃ。」
それから静かに泣いた後、そのままアウリエラは寝てしまった。
ベッドに運んで部屋から出ようとしたが、手を掴まれた。
……仕方ない。
さすがにベッドには入れないので、顔だけ乗っけて寝た。
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