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God's Locus  作者: フリート
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第十三話 理屈じゃない

 日が登った。朝だ。今日からソラさんが参加するらしい。早く起きて準備をしなければ。

 着替えてリビングへ向かうと、すでに朝食ができていた。

 ちなみに言うと、最近はアウリエラが朝食を作っている。なんで急にそんなことをやり出したのかは不明だが、朝食を作っている時のアウリエラは楽しそうにしていて、味も美味しいので気にしないことにした。

 朝食を終え、片付けだなんだとやった後、それぞれが準備でき次第家の前に集合することになった。

「あれ、俺最後じゃない?」

「ソラちゃんがまだよ。」

 アウリエラの言葉のすぐ後に、扉ご開いてソラさんが出てきたが、

「おいそれマジか。」

「何が?」

 ソラはキョトンとしているが、俺だけでなくアウリエラも驚いている。何せ彼女の持ってる武器がとてつもなく恐ろしいのだ。

 その武器はソラの背よりも少し大きな紫色の鎌で、持ち手が湾曲している。なんというか、禍々しいのだ。刃に近い部分に蛇の飾りが巻かれてるし。

 ちなみに俺とアウリエラは師匠達の予備の刀を借りた。

「ほっほ。さぁ、行くぞい。」

 そう言って師匠達は歩き出した。俺とアウリエラもそれに着いていく。

 しばらくして師匠達が止まった。

 今日は随分遠くまできたようだ。

 さっきまでより少し木が少ない。それに近くには幅の広い川がゆっくりと流れている。どうやら下流のようだ。

「さぁ、始めるぞい。まずはラキエル、アウリエラ、ラヴァーを使うのじゃ。」

「い、いきなりですか?」

 アウリエラが問いかけた。

「形はこの一週間でかなり完成に近づけた。あとは実践で使えるようにするのと、ラヴァーを使わなくてもニ心一流を使えるようにするだけさね。」

「了解です。アウリエラ。」

「えぇ、いくわよ。」

 互いのマナがゆっくり溶け合って、やがて一つになる。

 やはり、この心地良さは癖になる。いつまでもこのままでいたいような……。

「も、漏れてるわよ。」

「あっ、すまない。」

 どうやら今の思考を伝えてしまったようだ。

「できたようじゃの。よいか? 無駄な思考は伝えず、自分の動きの感覚だけを伝えればよい。そうでなければお互い集中もできんじゃろうて。わかったかのぅ?」

「「はい!」」

「よろしい。お主らには今からソラと戦ってもらう。」

 師匠がいつになく真剣な表情だ。

「気を抜くでないぞ。何せあの子には儂ら二人ができる限りの全てを教えてきたからの。ソラ!」

 師匠達が下がり、ソラが大鎌を持って前へ出てきた。

「手加減はしないよ。ラキエル! アウラ!」

「望むところよ!」

 アウリエラは笑っている。

「あぁ、こっちも全力でいく。」

「両者構え!」

 桜さんが腕を上げた。

 俺は前、アウリエラが後ろにつく。

 ソラも大鎌を構える。

「……始めっ!」

 ドオォンッ

 桜さんが腕を振り下ろすと同時に、地面を蹴った。

「ぉりゃっ!」

 先に降り下ろされたのは鎌。

 間合いに入ったのを空間把握で感じ取ったが、速い。

「っ!」

 俺は刀を抜かずに鞘で受けた。

「重っ。」

「はあぁ!」

 後ろからアウリエラが切り込む。

「わっ。」

 避けられた。けど隙だ!

「ああぁぁ!」

 キイィンッ!

 金属音がうねる。

「うぉっとっと。」

 くそっ。鎌で防がれた。仕切りなお、いや、

「まだまだぁ!」

 アウリエラが大太刀を振り下ろす。

 まだ彼女の間合いだ。

「ふんっ!」

 ジリリリッ

 ソラが柄でいなす。

「シュッ」

 横に薙ぐ。が、当たるとは思ってない。

「っとぉ。」

 後ろに飛んだ。狙い通りだ、アウリエラ。

「「あぁぁぁぁ!」」

 二人での同時攻撃だ! これなら――

「甘いよ。」

「なっ!」

 ソラは鎌で俺達の刀を同時に巻き上げた。

「どぶぁっ。」

 か、顔が石の上を……。

「きゃあっ。」

「ぐへぇ!」

 今度は全身に、石が刺さって……。

「いでえぇ。」

「だ、大丈夫⁉︎」

 アウリエラが俺を心配する気持ちが伝わってくる。

「だ、大丈夫。なんとか。」

「そこまで!」

 桜さんが終了の合図を出す。負けたようだ。

 アウリエラの感情が伝わる。すごい悔しがっている。

「三人とも、お疲れ様じゃ。後で反省会をするからのう。今はとりあえず休んでなさい。」

「はーいっ。」

「わかりました。」

「……私、少し向こう行ってるわ。」

 アウリエラは暗い表情でその場を離れた。

 それから二分くらいすると、ラヴァーが切れる。いつでもラヴァーになれるとは言え、まだマナの合成が下手で、ラヴァーの時間は三分しかない。

 いつもは倒れるのだが、今日は大して戦ってないのでそうはならなかった。

 それより、アウリエラが心配だ。

「すいません、俺ちょっと外します。」

 俺はアウリエラの方へ向かった。


「大丈夫か? アウリエラ。」

「ラキエル……。えぇ大丈夫……って言っても、バレてるわよね。」

「まぁな。」

「ラキエル、私悔しいわ。」

「あぁ。」

「勝ちたがっだ。」

 アウリエラの目に涙が浮かぶ。

「あぁ、そうだな。」

「ゔゔっ。」

 彼女が抱きついてきたので、俺はそっと胸を貸すことにした。

 彼女はかなりの負けず嫌いなのだろう。

 だが、初めてで勝てるはずはない。何せ相手は俺達の師匠が全力を注いで育てた娘だ。

 それにもし勝ったとしても、そんな簡単な勝負じゃ、俺達は成長なんてできない。これは修行だ。

 でもまぁ、悔しいのは痛いほどわかるよ。

「アウリエラ、もう待つだけの人生はやめたんじゃなかったか?」

「ぐずっ。えぇ、そうよ。」

「なら戻ろう。俺も手伝うから、勝つための方法を一緒に考えよう。」

「……そうね。わかったわ。泣いていたって仕方ないものね。さぁ、ラキエル! 行くわよ! 私達の勝利を目指して!」

 付け加えよう。彼女はかなり立ち直りが早い。

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