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God's Locus  作者: フリート
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第十話 アウリエラの修行

 ラキエル達が行って数分後、私は森の中を、お師匠様である桜様と一緒に走った。彼女はいくつですかってくらいの速さで走っていたから、着いて行くのは一苦労だったわ。すごい疲れた。

「よく着いてきた。初めてにしちゃあ上出来だね。ほら、水をお飲み。」

「ハァ、ハァ、ありがとう、ございます。」

 あぁ、水が気持ちいい。体の奥まで染み渡る感じがする。辺りを見回すと、さっきの森より濃い緑が広がっていて、滝の音もする。音の方を見ると木の間から滝が見えた。

「さぁ、ストレッチするよ。」

「は、はい!」

 草の上で私はお師匠様の動きを真似してみる。けど、全っ然伸ばせないわっ。私硬すぎ。

「あんた、硬いねぇ。」

 お師匠様が苦笑いしてるっ。絶対柔らかくなって見せるんだから!

 三十分ほど念入りにストレッチをやったら、お師匠様がさっきの大きな刀を持ってきた。

「この剣を知ってるかい?」

「ええと、刀……ですか? それにしては長いようですけど。」

 刃一郎様がお使いになってたのが刀よね。本で見たわ。

「あぁ、刀じゃあないよ。けど似たようなもんさ。大太刀って言ってね、こいつの特徴は見ての通り、その長さだ。」

 お師匠様がいきなり説明し始めた。知識は必要だものね。

「そいつを活かして、あたしらは刀を使う奴らの横か後ろからこいつを振るう。」

 なるほど。背後から隙を突いて攻撃するための長さってことね。

「ただし! 刀使いと大太刀使いでは、一撃の重みも、それに込める意味も全く違う。二心一流において、大太刀使いは刀使いとは比較にならないほど大きな責任を負う。」

「どう言うことですか?」

「自分で考えてみな。」

 そう言われたから、私なりに精一杯考えてみた。

「……ええと、私達が失敗すると攻撃されるのは刀使いだから、ですか?」

「その通りだ。」

 やったわ。

「二心一流は基本的に、攻撃を弾く役とその後に攻撃する役に別れる。けどどちらにせよ、相手に近い刀使いから切られるのは当然のことさね。いいかい? あたしらは刀使いの命を背負ってるんだ。あの坊やを死なせたくなかったら、死ぬ気でやりな。」

「はい! 師匠!」

「よし、じゃあまずは大太刀に慣れるところから始めるよ。そこの木刀を持ってきな。」

 近くの木の下に大太刀の木刀が置いてあったから、持って行こうとしたけど、

「っ!」

 なにこれ。思っていたよりずっと重いわ。

「んんしょ!」

 でもこのくらいこなさないと、あの人の横には立てない!

「準備はいいかい?」

「は、はい!」

「まずあたしの真似をしな。」

 お師匠様が大太刀を振るう横で、私は見様見真似で必死に木刀を振った。途中、あれがダメこれがダメと、色々指摘されながらだったけど、こんなに長時間誰かに教わることってなかったから少し嬉しかったわ。

 休憩を挟みながら稽古をきて、気づいたら夕方。

「今日のところはこれで終わりだ。よく頑張ったね。」

「は、はいぃ。」

 私はその場に倒れ込んだ。疲れた。体が重いや。

「帰れるかい?」

「はい、何とか。」

「帰りはゆっくり歩くよ。」

 ――お師匠様達の家へ帰ってきた。さっきからいい匂いがしてきて、お腹ぺこぺこ。早くなんか食べたいわ。でもそれより先に、体洗わないと。

「お師匠様。」

「ん、なんだい?」

「水浴びをしたいのですけど……。」

「あぁ、そうさね。ソラァ!」

 うっ。お師匠様、声ですぎよ。

 ドタドタ バタン!

「何! 敵?」

 扉を勢いよく開けて、大きな紫の鎌を持ったソラさんが出てきた。

「違うよっ。そんなことより風呂は?」

 え?

「風呂? 沸いてるけど。」

「お、お風呂があるんですか⁉︎」

 びっくりして聞いちゃった。

「あぁ、あるよ。」

 お師匠様のその言葉に思わず、やったあぁぁぁぁぁ! と私は思いっきり心の中で叫んでしまった。それが体にも出てしまってたようで、気づくと私は大の字で万歳していたわ。

「っ! は、入っても?」

 恥ずかしいぃ。

「もちろんさ。しっかり洗ってきな。」

「はい!」

 威勢よく返事をした途端、体が倒れた。意識はあるのよ。多分、安心して疲れが出てきちゃったのね。

「はぁ。仕方ないねぇ。ほぉらっ。行くよ。」

「よ、よろしくお願いします。」

 肩を担がれて、私達は浴室へ向かった。その時のお風呂は、人生で一番気持ちよかったわ。お風呂から出て体を拭いていると、

 バアァン!

「お風、ろ……。え?」

「き……キャャャァァァァァァァ!」

 バチィィッン!

 ラキエルが入ってきたから思わず殴り飛ばしちゃった。別にいいわよね。悪いのは向こうだし。でも、ラキエルに裸、見られちゃったぁ。すると、音を聞きつけてお師匠様が来てくれた。でも廊下で気絶してるラキエルを見ると、無言で連れ去ってしまったわ。ご愁傷様、ラキエル。たっぷり地獄を見るといいわ。

 髪を乾かしてリビングに戻ると、ソラさんしかいなかった。多分今説教中ね。帰ってくる前にご飯の準備しとかないと。

 ご飯の準備をしていると、一時間くらいで皆んなが戻ってきた。そしたらラキエルがいきなり土下座をしてきて、

「すみませんでした。俺の不注意でした。もうしません。」

「え、あ、あぁ。まぁ、お師匠様にたっぷり説教受けたみたいだし。許してあげるわ。」

「ありがとうございます。」

「さ、早く食べましょ。ね。」

 準備してる時から美味しそうな匂いがしてて、待ちきれなかった私はラキエルにそう言った。

「あ、アウリエラァ〜。」

 どうやら相当の地獄を見たようね。お師匠様恐ろしい。

 その日は疲れてたからか、皆んなでご飯を食べた後はすぐに眠ってしまった。

 翌朝は筋肉痛が酷かったので、歩いて稽古場まで行った。それでもかなりきつかったけど。稽古も昨日ほどきついものでははなかったわ。そこらへん、ちゃんと考えてくれててちょっと嬉しかった。

 それから三週間、家、稽古、風呂、睡眠のループが続いて、気がつくと自分でも驚くくらい上達していた。マナだけを閉じ込める特殊な結界術も教わって、間合いの中の空間の把握もできるようになった。

 お師匠にも褒められわ。誰かに成果を褒めてもらうのは、いつぶりかしら。

 この後は、いよいよラキエルと一緒に稽古をするらしい。ラキエル、うまくなった私に、驚いてくれるといいけど。

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