筋肉行脚
あれから3ヶ月
僕はだいぶ太った。
しかし太ったというのは体重の増加を意味するだけだ。も少し具合的にいうと。
「三角筋!」
「僧帽筋!」
「上腕二頭筋!!!」
僕の筋肉を見てロイシンが騒いでいる。
「いいねいいねぇ!!!よく発達してるねぇ!!3ヶ月でここまで来るとは!ハードゲイナーなのによくここまで駆け上がってきたよ!!3ヶ月は早いよ!いいねいいねぇ!
とても興奮しているみたいだ。何を隠そう、僕も興奮している。毎日毎日コツコツと筋トレをした。もちろんめげそうになった日もあった。そんな時は少しだけの筋トレに収めれば良い。そうやって細く細く筋トレを紡いできた。そしていま僕の体が、いや、私の体が進化した…!!
???
そう、進化したのだ。
この世界では一定程度筋トレを積み重ね、筋肉の経験値を上げてレベルアップすることで一気に一回り大きくなるみたいだ。
「これは現世よりも目に見えてやりがいがあるぞ…!」
筋トレにハマってしまった。中毒だ。
その様子を見ていたロイシンが忠告を出す。
「イシン君、君は確かに結果が出た。しかし君はハードゲイナーだ。小さな筋トレでも続けないとすぐに戻ってしまう。どんなことでも筋トレと結びつけるよう意識した方がいい。」
「忠告ありがとうございます!ロイシン様!
「あと一つ教えておく。僕は君より年下だ。確かに今までの君はやる気がなく、自信がなかった。しかし今の君は違うだろう?もう遠慮しなくて良い。その自信をしっかり表現してくれ。ロイシンでいい。」
「ありがとう…ロイシン!!」
そう、筋トレを続けてきてわかった。自分に自信がついたのだ。今までは何を出しても結果が出なかった。しかし筋トレのおかげで継続が形になることを学ぶ。このことが自信につながる。大抵の人に腕力で勝てるという野生さの増大も自信のそれにつながっているのは間違いない。
ロイシンが口走る。
「そこでだ、僕もまだまだトレーニングが必要だ。もっと体を鍛えたい。しかし、周りにはトレーニーがいない。」
…
「どうだい?よければ僕と共に筋トレ行脚をしないかい?」
私は二つ返事で返した。
「しよう!!全世界を巡り!全世界のあらゆる重量を持ち上げ!その全てを我らが筋肉の糧としよう!!」
自信がつき過ぎてしまったようだ。自分からは出ないはずの言葉が出てしまった。しかし迷いなどない。
ロイシンと固い握手を交わした。
何か忘れているような…




