ハードゲイナー
一言で言う。僕は恋をしてしまった。その筋肉に。あんな重い柱を軽々と持ち上げてしまうその筋力。素敵だ。
「すみません!!はぁはぁ、教えてください。その筋肉をつける方法を!!」
「おや、僕と同じ言語を話すなんて、君はもしかして異世界から来たのかな?見るからに日本人ってところかな?」
なんだこの人、僕の聞きたいことを全部聞いてくれる。なんてスマート。
「は、はい!!私は日本人です!」
「そうかい、僕は台湾からここに来たんだよ。どうやら同じ世界は言語が統一されるみたいだね。」
「君はコルトと知り合いなのかい?」
「コルト?」
「さっきの死にそうだった少年だよ。」
「はい、先ほど大木村で助けてもらいました。」
「そうかい、運命の引き合わせってものはあるのかもしれないね。僕もついさっき遠出から戻ってきたんだ。」
「そしたらこの有様さ。」
そっか、この人もあの少年と知り合いなのか。
「あの少年の師匠ってもしかして…?」
「あぁ、まだこの子は言ってたのか。ぼくがロイシン。彼からはロイ様って言われてるんだよ。」
なるほど、彼が憧れる理由もわかる。
「あの、そういえば先ほどはありがとうございました。僕1人じゃなかったら助けられませんでした。」
「何を言っているんだい。君が隙間を開けていたから彼は命を繋ぎ止めた。君がいなかったら僕が来る前に彼は死んでいたよ。」
なんてかっこいいんだこの人。照れ恥ずかしくて顔を隠す。
「あのぉ」
そして本題に切り込む。
「もし良かったら、その、僕も筋肉をつけたいんですけど…」
「そうか!!君も筋肉が好きか!!!いいねいいねぇ〜!良いよね筋肉!素晴らしいよね!人を守る筋肉、人のための筋肉、鑑賞用としての筋肉、どれも素敵だよね〜!!…でも君、筋肉ないんじゃない?ハードゲイナーかな?」
「ハードゲイナー?」
「そう、ハードゲイナーはあまり筋トレには向かないんだ。君を見た感じそう思ったんだけど、それでもやる覚悟はあるのかい?」
だからか、中学生の頃からいくら筋トレしても部活をしても筋肉が育たず、そこから僕は勉強の方に歩みを進めた。ただ原因がわかった今、彼の語り草から努力でどうにかなることも知った。目の前であんな奇跡を目の当たりにしたら憧れないわけがない。
「はい。努力します。」
「そうかい、それなら嬉しいよ。僕は的確なアドバイスはできないけど、まずは
「食べろ!!」死ぬほど食べろ!1日6食、いや7食は食べろ!!それもしっかりとした定食をだ!!」
「?!」
筋トレじゃないの?!そう思った矢先
「きみは消費カロリーが多いのだ!だから食べよう!今日は僕がご馳走するよ!」
そして彼と一緒にご飯を食べにきた。