T.Sと魔法海戦
属国グリセリを破壊してから1年が過ぎた。
やはり目立ちすぎた。
隣国の魔導魚人大国アバシアから宣戦布告を受けた。
彼らは魚人。海中戦を得意とする。
海上都市アリサ絶体絶命。
しかし、この国は宣戦布告を受け取った。
それはなぜか。
軍に余裕ができたからである。
国技の指定強化選手になっていた子供達は横に大きくなっており、ムキムキのリトルマッチョ軍団と化していた。
もちろん齢7歳の子供を戦に出すわけにはいかない。
しかし、彼らの家族は彼らリトルマッチョに守られている。
国内を気にしないで戦えるとなると話は別だ。
一気に全戦力をぶつけることができる。
開戦の日は明日。
水平線の彼方にはツノの生えた鯨を操る魚人族の大群が鎮座している。
こちらの動きを探っているようだ。
こちらには港前方に6人の影。
影が濃く、伸びていく。
朝日が昇る。
いま、戦の火蓋が切って落とされた。
先に仕掛けたのは魚人族。それもそう。ものすごいスピードで海中を泳ぎ、魔法を放つ。
アリサに向かって降り注ぐ雷魔法はギリギリのところで止められた。
コルトだ。
コルトがこの国にコアを生み出した。
コアから伸びる光がコルトの杖に集まり、霧散する。それが結界となり敵魔法を防いでいる。
港から1人の影が消える。
魚人族が魔法連撃の間隙が生まれた、その瞬間。
彼らの水中目前に、およそ約100名もの人影が泳いで向かってきているのを視認する。
魚人族を遥かに超えるスピードで向かってきたその100名はそのまま魚人族に突っ込む。まるで魚雷だ。
そこかしこで海中爆発する。
魚人族の軍団長は唖然としている。
「誰の仕業だ!!」
「私だよ。」
T.Sが立ち泳ぎをして彼の前に現れる。
「申し訳ない。ここより後ろには数多の将来有望な子供、その親が控えている。」
「ここから先に進むなら致し方ない。殺そう。」
軍団長が答える。
「殺そうだと?!お前は立場をよく理解してないんじゃないのかぁ?!」
囲まれるT.S
「ツインスプレー!!!!」
海に響き渡る雷の轟音。
大爆発が起こった。
煙が晴れた。
浮かんできたのは。
多くの魚の死体。
その上空中央には回転し、無尽蔵に増殖するT.S。
彼の見せる筋肉の幻影は実体を持ち、雷魔法のそれを上回った。爆散していく複数のT.S。
戦意を喪失する軍団長。
「オー、イッツオーバーダンマザファカ」
回転を止め、上空から敵死体を眺めるT.S。
残った軍団長と鯨は戦意を喪失。
いや喪失ではない。希望に満ちた目でT.Sを見ている。
彼らに憧れの対象が生まれた瞬間であった。
【T.S】
南アフリカ出身、スキンヘッド、穏やか、だがマッチョ。
パンプアップスキル: マッスルスプレー
筋肉中に閉じ込められた高温の熱気が彼自体の幻影を生み出し、触れ、爆発する。




