筋肉行脚終了!
カシラを抱えて走るヒゲ達
「なぁ。」
「ん?」
「おれらも、鍛錬すればあんな風になれるのかな。」
「な!お前あのキザ男に憧れてるのか!?」
「う、うん。」
「だよな。」
見てしまった。一部始終。
結局ロイシンが聞きたかったことは残りの借金のことだった。ロイシンは1人で夜通し手伝い、残りのお金を払うつもりだったらしいのだが今回の件でヒステラへの借金はチャラになったらしい。
やはりロイシンはスマートだな、と思う一方で。
ロイシンってあんなに戦闘狂だったんだな…
「ロイシン、身内だけど普通に怖いわ。いつも爽やかなのに。」
つい独り言が出てしまう。
バレる前に早々にテントに戻る。
「ぐがぁぁぁぁあ」
アホみたいな寝たふりをかます。
ロイシンも隣で寝床に入ったみたいだな。
「ぐがぁぁぁぁあ」
寝るの早すぎだろ…
ーーーーーパッポーー翌朝ーパッポーーーーー
早朝ロイシンと私はダントツとヒステラに別れを告げて行商を後にした。チョメ婆は寝ていた。
もうすぐ海上都市だ。
森を抜けると海が広がっていた。空の青を薄めたような綺麗な青が目前に広がっている。その透明度は光を拒否せず、海底の珊瑚をあらわにしている。海上都市に渡るための橋周りはとても賑わっていた。沿道にバザーが並んでいる。
「まるで江ノ島みたいだな!」
「エノシマ?イシンの世界のものかい?」
「あー!そっかそっか!ごめんごめんここと似た土地があるんだよ。」
江ノ島の巨大化、そう言い表せそうな風体だ。
通行税はなくするりと入れた。人通りは多いのだが、それを裕に超えた幅の橋は混雑さを紛らわしている。
手に持った木製ダンベルがよく馴染む気温だ。良い汗が出てくる。
「わぉ!これ某ジ◯リ作品に出てくるような街並みだね!」
ロイシンは日本の文化に親しいみたいだ。
賑わいのある街を闊歩する。新鮮な緑の匂いがするフラワーショップに焼き魚の匂いが混じる。城に続く道に路面店がずらりと並んでいる。
「ここ、なんか良いなぁ」
思わず見惚れてしまう。右腕のダンベルが少し窮屈だ。
するとロイシンから衝撃的な発言を受けた。
「筋肉行脚終了!僕はここに住むよ!今まで騙してきてごめん!!」
手を合わせるロイシン
「は?」
ロイシンは申し訳なさそうに続ける
「本当はここの街に来ることが目的だったんだけど、なにぶん1人だと道中つまらなくてね…アハハ。」
久々の怒りに口を尖らす私
「アハハじゃねぇよ!!私がどれだけ筋肉行脚に期待してt…待てよ、確かに良いよねここ。」
そう、良いのだ。正直余生はフランスやイギリスでビザを取得し、このようなところで暮らしいたいと思っていた。
「そうなんだよ。それじゃあ、今までありがとうイシン!」
私たちの別れは、こうもあっさりと幕を閉じた。




