〜筋肉転生〜
一マッスル
????
二マッスル
????
三マッスル
????
四マッスル
????
五マッスル
????
六マッスル
????
僕は日本の小さな企業に勤める磯路威真、31歳。マーケティング、プロモーション、セールス全てを経験し、プレゼンのスキル、上司とのコミュニケーション、人脈作り、色々なものに手を出してきた。でも全部が結果につながらない。正直、自分には社会を生き抜く才能がないんだと思う。
そう思っていた。
バタン
目の前が一転する。体から力が抜けていく。地面に溶けていくようだ。あぁ、横になるなんて久しぶりだ。
せっかくだし、とりあえず落ち着くまで安静にしよう…ーーー
「脈がありません」
(「そうですか。」)
産業医の言葉に同僚がざわついている。僕は自分のキャパ以上に活動していたらしい。僕の言葉が医者に伝わっていない。どうやら聴覚だけが機能しているようだ。ただ不思議と嫌な気持ちはしない。なにか、よくわからないしがらみから解放された、そんなような気がする。願わくば、もう少し自信を持って胸を張って生きてみたかったな。
!?
死んでない?
眠っていただけ?
いや違う!
ー目を開けるー
どこだここ!
僕は見たことのない遺跡のような場所に横たわっている。狭い一室だが周りは石の壁だ。おぼつかない足を使って室内を後にする。室内を出ると円形の広間につながっていた。その広間は自分がいた部屋と似た部屋合わせて6室とつながっていた。それ以外だと、外への出口が一つある。出口から見える大草原は今まで見たことのない優雅さ綺麗さを誇っている。
「なんだここ、スイスの山奥か?」
不思議と高鳴る期待を胸に、外へ出てみる。
風が心地良い。振り返ると青い空を背景に讃え、小さな遺跡がそこに立っていた。
「これは、異世界転生かな。」
妙に納得してしまった。こんな綺麗な景色見たことない。そう思ったのも束の間、背後に凍えるような威圧を感じた。
先程までいた遺跡の背後から大きな大きな機械仕掛けのドラゴンが出てきた!音なんてなかったのに!
幸い気付かれていないようで、すぐさま下山を試みる。
「良かった…ハァハァ」
正直、もう死んたはずの体なのに、まだ生き延びようとしている自分自身の生命本能に生を感じた。
しばらく下山を続けると麓に着いた。麓には小さな町があった。宿場町だろう。割と賑わっている。
「ここってもしかして観光地なのか?」
そう思っていると周りからたくさんの視線を感じる。そうか、流石にこの服は目立つよな。異世界ではスーツが目立つ。とりあえず服屋に行ってこのスーツ、物々交換の交渉してみるか。
「$£^%<?€£」
何言ってるかわからない…そうだ…ここ異世界じゃん…言葉がわからなくて当然だ…
仕方なしにスーツのままでいることにした。
「こういう異世界って、冒険者ギルドとか酒場とか、そういうのがあるんだろ?そんな相場だよな。」
そう思って探してみた。
いかにもな場所があったので中に入ろうとすると、若い女性が慌てたように話しかけてきた。
「¥&@@^%<>€+!」
相変わらず何を話してるのかわからないがとても焦っているらしい。右手に持った布を渡してきた。
「お!服?じゃん!ありがとうございます!」
なんと服をくれたのだ!なんて優しい人なんだろう!異世界も捨てたもんじゃない。早速店の裏側で着替える。
「おおおおおお!異世界っぽくなってきたな!」
某RPGで見た初期装備のような服装だ!
そう興奮しながらギルド内を見て回る。やはりここは異世界なのだろう、魔法を使うための杖やそれに適した格好、はたまた戦士タイプと思えるガタイのいい人、機械仕掛けの鎧や武器など魅力的な要素がひしめいている。
「はぇぇぇ、俺こんなかで冒険者始めるのイヤだなぁ。」
モンスターとかいるのかな、いたとしたら討伐とかは絶対やめておこう、自分にできるはずがない。そう思っていた矢先、目前の掲示板に張り出されたボロボロの紙に目が留まる。草の絵が描かれている。ご丁寧に地図まで書かれてある。地図はギルドの裏から伸びている道の右側に×と示してある。大木が目印らしい。
「これならできるじゃん!」
まずはこういうゲームは金策が大事だからな!現世でやっていたゲームの知識が今役に立つのかぁ。ギルドへの報告とか加入は後からでもいいだろう。そんな思いを抱えながら、とりあえず紙を引きちぎって薬草?の採取に向かうーーー
「もう何時間歩いたぁ?」
数分である。
自分の体力の無さと独り言のヘタレさに少し笑ってしまう。
やっと着いた…ここで採取すれば良いのか。地図に似た薬草は幸いそこら中に生えており、隅々まで引きちぎっていくーー
「大量だ大量だウハハハ、こんだけあれば流石に報酬出るよなぁ」
独り言が進む。
あらかた採り終えた頃に異変は起こった。背後に感じる鋭い痛み。矢で射抜かれた。