突然の雨
チャイムが鳴り、授業が終了する。疲れたが、今日の授業はすべておわった。間もなくして、帰りの挨拶が行われ、放課後となった。部活動に所属してない俺はそのまま帰路に着く。
──と、ぽつぽつと雨が降ってきたかと思うと、いきなりどしゃぁ、とバケツをひっくり返したかのような豪雨に変わる。
「……!」
仕方なく持っていたカバンを傘代わりにしてバス停までの道のりを走った。幸いなことにバス停は近かったが、傘を持っていなかったのでびしょびしょになってしまった。
一分か二分でバス停に着いた。俺はベンチに座るとカバンにしまってあったタオルを取り出した。何かと便利なタオルを、俺はいつもカバンに入れている。おかげで助かった。とりあえず濡れた体を拭こうとした時だった。
「ひゃぁ〜」
という声が、遠くから聞こえてきた。その人物の声は大きくなってきて、すぐに見えるようになった。
「……あ」
俺が見ていたらその人と目があってしまった。
「………………突然の雨でしたね」
気まずくなったのか、その女性はそんなことを言った。
「……確かに、天気予報だと晴れでしたもんね」
俺も少し気まずくなり、彼女に続く。
この時間このバス停に来るのは生徒だと思っていたが、よく見るとスーツだった。OLだろうか。
とりあえず俺は、ベンチの端に座った。もちろん、女性の座る場所を開けるためだ。決してベンチが広い訳では無いが、詰めれば何人かは座れるベンチだ。このまま立たせ続ける訳にもいけない。
女性は俺の意図を悟ったのか、おずおずとベンチの反対に座った。
「…………あの、良ければタオル、貸してくれませんか? 何も持ってなくて」
女性は俺が持っていたタオルを指さして言った。
「……えっ…………! は、はい!」
さっきよりもっとよく見てみると、女性は服の下、下着が透けて見えていたのだ。危うくガン見してしまうところだったが、全力で目を逸らしタオルを渡す。
「すみません、ありがとうございます」
しばらくの間、タオルと服が擦れる音が聞こえていた。もっとも雨の音が大きく、大して聞こえていなかったのだが。
「……これ、洗って返しますね」
女性が拭き終わると、そんなことを言う。続けて、
「そうだ。私、ゆみって言います」
自己紹介をした。
「……あの、君のなま……」
不自然に会話が途切れる。何事かと思い見ると、「へっくち」と可愛らしいくしゃみをしたところだった。
「………………見ました?」
「…………うち近いんで、お風呂貸しましょうか?」
話をそらそうとした結果、一番ダメな答えを出してしまった気がする。が、
「…………すみません、借りたいです」
と、流れで女性、ゆみさんにお風呂を貸すこととなったのだった。
数年後、仲良くなって付き合い始めたのは、言うまでもない。