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ワールドゲート  作者: 一本の杉
プロローグ
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プロローグ 前編

 そこは、まだ名前の無かった平原。その平原には、王国と帝国、神聖国に魔導国の四つの国の国境があった。当時の四国は国境沿いに軍を配備し、互いに睨み合っている状況だった。そこにいた者たちは、このまま戦況が動かずただ時間が過ぎ去るだけだと思っていた。ソレが現れるまでは。


 四国境から少し離れた王国と帝国の国境線上、そこでも当たり前のように両軍が牽制し合っていた。しかし、ある日、朝日が昇ると共に突如として巨大な門のような建造物が国境のど真ん中に出現した。両国は互いにその建造物はお前らが作った、お前らの作った戦略兵器ではないのかと主張したが、それと同時にその主張の否定もしていた。このままでは埒が明かないと、両国の戦端が開かれようとしたが、そこに待ったがかかった。


 なんと、王国と帝国、さらには神聖国と魔導国の大将が現れたのだ。数少ない従者を伴って現れた神聖国と魔導国の大将に対し、その首を狙おうと王国と帝国の兵士らは動こうとしたが、それを大将が自軍の兵士らを静止させた。そう、大将らも四国境からこの門が見えていたのだ。大将らも互いに主張し合ったものの、どの国も我らのものではないと否定するだけだったため、一時停戦を持ちかけ、調査する必要があると判断したのだ。


 それから、各国から調査隊が派遣され、各国の大将の指揮の下で調査が行われた。調査隊は、戦場に送られることに戦々恐々としたものの、件の建造物を見た途端さっきまでの恐れは何処へやら、国の対立さえも忘れて調査に没頭した。しかし、結果として建造物について分かったことは、どの国にも人力かつ短期間で築き上げるような技術はなく、合同で行ったとしても到底不可能であること。建築様式がどの国にも当てはまらないこと。そして、これが門だとするならば、開いたとしても通り抜けることができるだけでなんの役にも立たないこと、といった結果が出た。ただ、大将らは引き続き調査をすべきだと言い、調査隊も未知な部分も多いため調査を継続したいと言ったため、そのまま調査は続行、戦争も一時停戦から休戦となった。




 調査が続行され、休戦してから数ヶ月が経った。あれから調査の権限が大将から調査隊へと移行し、様々な調査が行われてきたが、大きな進展は無かった。しかし、判明したことはいくつかあった。一つ目は、この門に使われている建材は石や鉄よりも遥かに硬いということ。二つ目は、門を開くことはどうやっても不可能だということ。そして三つ目は、この門は少なくともここ数年に建てられた物ではないということだった。


 まず一つ目は、調査隊の指示の下、各国の兵士総出でピッケルによる建材の調査を行った。門に使われている建材が石に見えることから行った調査だが、削るどころか傷ひとつつかず、逆にピッケルを消耗するだけとなった。しかし、それに我慢ならなかったのか一部の兵士が攻城兵器である投石機を持ち出してきたのだ。それを見た調査隊は、さすがに壊れてしまうだろうと思い、止めさせようとするもその制止を振り切り、さらには大将の命令さえも無視して投石機を起動させた。だが、その投石でさえ城壁を破壊するどころか、削ることさえもできなかったことに、投石機を持ち出した兵士はおろか、ことの顛末を見ていた兵士や調査隊、さらには大将でさえも驚いていた。しかしこれに感化されたのか、一部の調査隊がありとあらゆる攻城兵器を用意して欲しいと各国の大将に頼んだ。用意された兵器には、大型弩砲や大砲、破城槌があった。さらに魔導国からは、それだけで戦況を大きく変えるとされる魔導砲も持ち込まれた。再び調査隊の指示の下、用意された兵器を用いた調査が行われたが、いずれの兵器も傷一つ付かなかった。よって、調査隊はこの建材には未知の素材が使われているという結果を出した。


 二つ目に行った、門が開くかの調査は調査隊や兵士、大将でさえも協力して行われた。一つ目の調査で起こったことの顛末のおかげなのか蟠りなく、数ヶ月前までの領土争いが嘘だったかのように一丸となっていた。ある意味、あの事件のおかげでこうなったと言えるかもしれない。閑話休題、調査隊が指示した方法というのが、その場にいる全員で門を押すというものだった。もちろん外開きの可能性があれば、内開きの可能性もあったため、調査は二度行われた。しかし、びくともしない門に対し、大将の一人が破城槌を使うのはどうかと提案した。その提案に調査隊は少し考えたが、おそらく門本体も未知の素材が使われているのではないかと仮定し、いっそのこと一時保留していた門本体の建材調査も並行して行うこととして、破城槌による調査が行われた。行われたのだが、やはり門本体の建材も未知の素材でできており、さらには、開閉はしないと仮定していた調査隊の一人が門の裏側から手が触れる距離まで接近し直に確認したが、微動だにしていないという結果だった。このことから、調査隊は門の開閉は不可、兵士たちからは門が開いたとしても意味はなく、開いたとしても閉めるのに一苦労だとし、門の開閉に関する調査はこれで終了となった。


 三つ目に行われた調査は、一つ目や二つ目のように直接触れるなどのことはしていない。というのも、門の上部に蔦のようなものが見えたと調査隊のうちの数名が言った。この発言に他の調査隊が確認したところ、確かに蔦のようなものがあることが認められた。しかし、あまりの高さに現状ではその高さまで到達する手段がなく、遠目からしか確認できないためそれが本当に蔦なのか判断がつかないため、この調査は一時保留として扱われることとなった。だが、数名の調査隊が言うには、建造物に植物が這うのはかなりの月日を要するため少なくとも、1ヶ月もこの巨大な門を戦場のど真ん中に隠し続けるのは不可能であり、この巨大な門を建築するのも1、2年どころの話じゃ無理だとして、少なくともここ数年内に建てられたものではないといった結論を出した。


 行われた調査が他にもないわけではないが、未だ調査中のものがあれば他から止められたものもあるため、この門を誰が何のために作らせたのか、その手掛かりは未だ掴めずにいた。しかしそれからというもの、兵士らは調査隊の指示がなくとも率先して調査を手伝う者が増えた。かといって、手伝わない者は農村出身の者がリーダーとなり、寝泊り用の小屋の建築や周辺に出没する魔獣の狩りなどをしていた。そのおかげか、門の周辺が村のような規模へと変貌し、各々の国から支給された物資にあった酒で飲み交わすなどの光景が日常茶飯事になった。調査隊はもちろん兵士らも、また明日頑張ろうと内に秘めながら、日が過ぎていった。


 しかし、門が突然現れたのと同じように、異変もまた突然に起こった。


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