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シリーズ日常会話。

なんてことない日常会話。10

作者: かすみづき

「えーんちゃーん!」


「おはようロッキー。今日も元気に高血糖だね」


「おはよー、ってまだ糖尿病にはなってねーよ!?」


「まだってことは、将来的にはなる予定なんだね。あのねロッキー、別に成人病にならなくても成人にはなれるんだよ?」


「知っているさ、そんなことはな! ってそうじゃなくて。あのねえんちゃん、今の『まだ』は言葉のアヤってやつで、俺が言いたかったメインは俺は糖尿病ではないはずだってことなんだけれども」


「『筈』でいいんだ」


「言葉のアヤ第二弾ってやつだよ! あと未来の俺の体にまで責任持てない」


「そこは持とうよ。今の延長線上に未来があるんだよ?」


「それはそうだが、俺はまだ、今のことだけ考えていたいのさっ」


「うわあ」


「やめて引かないで。ちょっと小粋なジョークを言ってみたかっただけなんだ」


「ごめんロッキー」


「おぅ突然の謝罪。本気で謝られるとそれはそれでツラいんだけど」


「間違えた。高血糖じゃなくて高血圧って言いたかったんだった」


「その話題もう終わってたでしょっていうか、高血圧でもないはずだもん!」


「やっぱり『筈』なんだ」


「そりゃあ未来の俺の体に以下略」


「会話を以下略しないでよ」


「えんちゃんはループがお望みかな? お望みとあらば付き合うのもやぶさかではござらんが」


「武士かよ」


「はっはっはっ、それがし生粋の庶民でござる!」


「武士じゃん」


「それがしのげんを信じぬとはこの無礼者! 手討ちにしてくれる!」


「やっぱり武士じゃん。しかも庶民になりきろうとして失敗してる武士じゃん」


「はっはっは、何を申すか。拙者は武士でござる」


「認めたね」


「しまった口が滑り申した! 今のはおふれこというやつにてお頼み申す」


「ロッキーさあ」


「何かなえんちゃん?」


「それで何で古文の成績悪いの?」


「それは俺も知りたい」


「苦手意識が強いのか、単に興味が持てないだけか」


「どっちかというと後者かなー。竹取りの翁の名前とかどーでもいいよとは思ってるね!」


「『さぬきのみやつこ』さんね」


「そもそもまず名前っぽくないじゃん? ご近所から『さぬきのみやつこじーさん』とか呼ばれてんの? 長くね?」


「噛む人続出しそうだね」


「『しゃにゅ、さにゅきの、さぬきのみゃっ、言いにくいんだよジジイ!』とかキレられてそう。ほら、最近の若者はすぐ切れるって言うし」


「ロッキー、僕らの方が最近の若者だからね? これ昔の年寄りの話だからね?」


「知ってる」


「だよね」


「しゃーない、略そう。もう略して『さぬきのじいさん』……いや、もっと略して『さぬきじじい』でどーよ」


「なんか子泣き爺の親戚っぽい」


「さぬきじじい。遭遇したらうどんを食えー、と襲ってくる妖怪」


「食わせろー、じゃないんだ」


「あ、なるほど。さぬきじじい。遭遇したらうどんを食わせろと迫ってくる妖怪。うまいうどんを食わせると満足して去っていく」


「まずいうどんを食わせると?」


「こんなものはうどんではないっ、本物のうどんというやつを味わわせてやろう! って、めっちゃうまい讃岐うどん食わせてくれる」


「害がないね」


「むしろ遭遇したい。まずいうどん食わせてキレられたい」


「かわいそうに、本人はおいしいうどんを食べたいんだろうに」


「味にこだわりがあるばっかりにっ」


「これ、何の話だっけ?」


「最強のうどん決定戦じゃなかった?」


「各地の地元うどんスキーが黙ってない話題だね」


「さぬきじじい、めっちゃうまい伊勢うどん出されてもキレるんだろーか」


「それは実際にさぬきじじいに伊勢うどんを食べてみてもらわないことにはなんとも」


「伊勢うどんの用意があるときにさぬきじじいに遭遇する確率って、限りなくゼロじゃね?」


「そもそもさぬきじじいが存在する確率がゼロだからね」


「分かんねーよ? もしかしたら俺達の無意識下にうんたらかんたらした結果の今の会話かもよ?」


「屁理屈を考えることすら放棄しながら言われても」


「えー、じゃあ、さぬきじじい居るもん! ホントだもん!」


「いるかいないかって話ではなかった気がする」


「えんちゃんたら、今の俺の発言でツッコむところはそこなの? もっと他になかった?」


「うーん、語尾にもんって付ける男子高校生はちょっと?」


「そこにツッコむならもうちょっと前にツッコんでもらいたかったかな!」


「ロッキーって芸人志望だっけ?」


「いや違うけど。でも一度振ったボケは誰かに回収してもらえるまで、隙あらば繰り出し続けるべきかなとは思ってる」


「そんな芸人以外には不要な覚悟を持たなくても」


「えんちゃん、それは違う。芸人に必要なのは拾ってもらえないボケをくり返す覚悟じゃない、拾ってもらえなかったボケを己自身で面白おかしく回収するスキルだよ!」


「ロッキーって芸人志望だっけ?」


「いや違うけど。ループをお望み?」


「どっちかというと天丼かな」


「うまいよな」


「……僕は天丼ならエビフライはやっぱり外せないと思うんだけど、轟木は?」


「……花形だもんなー。俺はかき揚げかなー」


「あ、それも良いね」


「だろう。枝豆が入ってると尚良しだし、枝豆が入ってると思って嬉々として食べたのに実はグリーンピースだったらギルティですな!」


「僕の台詞まで」


「前にした会話ですからね! 俺が覚えてなかったらどーする気だったの」


「素知らぬ顔である程度会話を再現したのち、ロッキーの記憶力の減退をいじる」


「鬼! 鬼だわこの子! かっわいい美少女フェイスでとんだ鬼芸人よ!」


「僕は芸人ではないし、ロッキーと違って特に目指す予定もないよ」


「しれっと俺を芸人志望にしないでくれる? ていうか会話を再現するなら、俺の協力は不可欠では?」


「そうだね」


「つまり俺の返し能力を信じてくれた、と。よっしゃ二人でテッペン取ろうぜ!」


「だからならないって」

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