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テディベアの心臓  作者: 烏籠
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第2話 毒舌小悪魔




「ほんっとにごめん!」


「だからもう怒ってないってば、N谷君」


「さらに距離がっ!」


「僕は心が広いから。ちょっと忘れられたくらいなんて事ないんだよN・N君」


「今度はイニシャル!」


「それにしてもいい天気ですねピーー君」


「ついに敬語キタ!つーか何?俺の名前ってもはや放送禁止用語なの!?」


あれからあきはずっとこんな調子だ。

相当怒ってるようだ。

それもそうだよな、仲良かった友達に忘れられたら俺だってショックだ。

にしても……。


「いい加減機嫌直せよ……悪かったって」


この間見たドラマでも同じ事言ってたな。

確かこのあとおもいっきりフラれるんだよな……。


「いいよ、もう。別にどうでも」


フラれてはない、よな?

でも付き合ってもない俺ら。

……っておい、落ち着け俺。


………あ。


「“大人になったら結婚しよう”」


ぴた。

俺のこの一言にあきが足を止める。

俺は言葉を続けた。


「約束、しただろ?」


あー思い出した。

子どもの頃の約束。

できると思ってたんだ。

お互いに好きだから、そんな理由で。

でもそれは友達の域で。

ましてや俺達は男同士。

なんて言うか、俺達はまだまだ子どもだったわけで。


「覚えてて、くれたの?」


「……ん」


あらら、めっちゃ嬉しそう。

おやー?


「なおちゃん……」


昇格。

機嫌直してくれれば何でもいいわい!とつい口走ったはいいが……。

しかしこの流れ、ちょっとマズくない?


「僕もずっと覚えててたよ。ずっと、ずっと……」


ヤバいヤバいヤバい。

なんだこのピンクい雰囲気は!

まさか、まさか……?


「僕、なおちゃんの事が―――」


「ぉおぉうおぉぉっ!?」


おいでませ、やまなしおちなしいみなしわーるどォォ!?


「許せねェーーー!」


ドゴォッ!


「うわおぅっ!?」


まさかの蹴りっ。

ずしゃあぁぁーーっ!と地面を滑る俺。


「いってー!ちょ、何すんだよ!仮にも将来を誓い合った仲なのにぃ!?」


「あー、大声でしゃべらないでくれる?ねぇママあれなにー?しっ、見るんじゃありません!とかになるから」


「ひどっ!昔はそんな事言う子じゃなかったのに……」


「時代は常に動いてるんだよ」


「くっ……自分ばっかり成長した気になって……!俺だって成長したぞ、身長なんかあきより頭一つ分高いんだぞっ!」


「人間としてのレベルは低いままだね、むしろ下がった?」


「どんだけ毒舌!?もういや誰か助けてーーっ!」


「ねぇママー、あのお兄ちゃんなにしてるのー?」


「シッ、見るんじゃありませんっ!」


ほんとに漫画みたいな事言われたよ……。




■□■□■



「お茶」


「どうぞ」


「お菓子」


「はい、ただいま」


「ジュース」


「少々お待ち下さい」


「汗」


「はーい………って、汗?」


いつの間にオペが始まってたんだ。

ちなみに俺は手術と上手く言えない。

だから一貫してオペと言い続ける事にしてる。

俺は絶賛パシリ中、あきの奴隷へともれなく降格してしまった。

まぁ放送禁止用語よりましか……。

にしても久々に家に上がり込んできたと思ったら、この傍若無人ぶり……。

何とかなりませんかね。


「次、肩揉んで」


「へーい……」


「いかがわしい本」


「イエス マイロード、…って何でやねーん!」


「あれ、無いの?つまんないなぁ」


やだこの子、ほんとにつまんなそうな顔して。


「仕方ないな……僕アイス食べたいんだけど」


「いやいや、仕方ないからなぜそうなる。どんなトリック?」


「ザリザリ君がいいなー」


「……いってきゃーす」


あき以上の仕方なさでアイスを買いに行った。

何か食べたら後味ザリザリする……と定評のあるアイスを買うのに、俺は三軒の店をハシゴした。

何か食べたら後味以下省略なところがなぜかクセになるらしく、そのうえこの暑さのせいかよく売れてるらしい。

迷惑な話だ。

しかしあの後味ザリザリは堪らん……。

俺も時代に踊らされたうちの一人さ。


「うーん、やっぱりこの後ザリはヤミツキだね」


「はは……そーっすね」


身も心もボロボロさ。

ほんとにこいつはいつからこんなわがまま放題になったんだ。

くそっ、おいしそうに食いやがって。

俺だってアイス食いたいのに!


「あげないよ」


にっこり笑顔つき。

なおさら意地が悪い。


「はぁ……。お前ほんっと意地悪くなったな。昔は何というか、こう……素直で可愛いかったというか」


「何それ」


「いや、別に変な意味じゃねぇよ?とにかくピュアな奴だったってこと」


「もう中学生なんだよ、変わって当たり前だと思うけど」


「それもそうか。でも懐かしいな、あきと話すの」


「うん」


「小さい頃は時間も忘れて夢中で遊んだよな」


「それでよく叱られた」


「でもよく考えたら俺達って幼稚園の間だけしか一緒にいなかったんだよな。でもなんつーか、十年分くらい遊んだ気がする」


「………ん」


短い間でも俺にとってあきは大事な友達に変わりない。

大人になってもずっと一緒にいよう。

そう思っていた。

でも、それは叶わなかった。


「直幸」


「ん?何だ」


「僕がこの町を引っ越した理由、わかる?」


あきは小学校に上がる少し前、幼稚園の時に引っ越して行った。

ある事情によって。

それは………


「覚えてる。おじさんとおばさんが……」


俺はその先の言葉を言うべきか、躊躇した。


あきの父親と母親は、その時期に亡くなってしまった。



いや、


殺されたんだ。

やっと過去の事件がちらりとご登場です。

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