第11話 火のないところに煙は立たないっていうけどね
「とうとう血迷っちまったたか、西谷」
月曜日。
教室に入った俺を待ち構えていたAの第一声がそれ。
「なんだよA、薮から棒に」
「うっわそれ俺の口から言わせる気か?」
大袈裟に身を反らせるA、もとい琴原。
何かムカつく。
「俺はちゃんとアドバイスしただろ、三國と話しろって。それを無視してお前という奴は……」
情けねえなぁ……とため息をつく。
さっぱり意味がわからない上に余計むかつく。
と、そこへ。
「おっはよダーリン(はぁと)」
まためんどくさい奴が声をかけてきやがったよ……。
ふざけた挨拶の主はやはりと言うべきか、外れて欲しい予想の通り篠枝だった。
「誰がダーリンか。てか語尾にハート付けるなよキモい」
「つっめたいなぁ、昨日あんなに愛し合った仲なのにゆっきゅんたらー」
ざわっ…!
あからさまに教室中がざわめく。
「何言ってんの!?ていうかお前らこっち見んなー!」
あっという間にみんなの注目の的。
女子が異常に盛り上がってる。怖い。
「ナオユキ……」
そしてそれ以上に怖い、恐怖の大王のお声が背後から。
「あああ秋桜クンどぉしたんだねそんなこわい顔しちゃったりなンかしてぇ〜」
ぎぎぎ、と音がしそうなほどぎこちなく、まるでロボットみたいな動きにで振り返る。
それにしても最近のロボットはすごいね。
動き滑らかだしやたら動きが複雑化してるし。
……下手な現実逃避も空しく、振り返った先には絵にも描けない(そりゃそうだ、そんな画力ねぇし)ほど恐ろしい奴が。
怖いよおかーさーん!
「西谷……お前まだ言い逃れするつもりか?諦めろ、そして洗いざらい言っちまえ」
「すんません俺がやりましたあああってナゼッ!?」
琴原がそんな事を言うものだから、ついノリで犯人発言してしまった。
その場のノリなんてろくなもんじゃない。
なぜならノリで買った物なんか家に帰ってきた頃には俺なんでこんなの買ったんだ…?って微妙に後悔するに決まってんだよ。
って話が逸れたわ!
「ちょっと待て、誤解だ!篠枝が何かろくでもないこと言い触らしてるっぽいが俺は無実だ。むしろ俺被害者だし襲われかけたし!」
俺のこの発言により女子のテンションさらに上昇。
「えっうそぉ西谷君が受け!?」
「私絶対西谷君攻めかと思ってたのに!」
「あたしは西谷君受け全然いけるよ」
「篠西って……やっば萌えるー!」
女子があらぬ妄想に花を咲かせてしまった。
これはいかん。
何とか弁解しなければと思っていた矢先、絶妙なタイミングでチャイムが鳴り、直ぐさま先生が教室に入って来てしまった。
■ □ ■ □
そして誤解が解けぬうちに、あっという間に放課後。
朝におっそろしい声で名前を呼ばれてから、俺とあきは今の今まで一切会話していない。
あきは俺の存在を視界から完全に消去しているのか、目も合わせてくれない。
俺はもちろん怖いから話し掛けたりなんかはしてない。
あきは黙々と帰り支度をしている。
そして俺はいつでも帰宅準備万端。
要するに一緒に帰ろうぜ、と言いたい。
そしてこのぎくしゃくした空気をどうにかしたい。
でないと家でもこのままって事になる。
そんなの耐えられねぇ、絶対。
「えーっと、あき、そろそろ帰るか?なーんて……」
「直幸」
「な、何だ」
心の中ではひゃひぃっ!なんて情けない悲鳴を上げてしまった。
「じゃ、バイバイ」
「へ…?いや、はい?」
「だから帰るんだろ、さっさと行けよ。僕は一人で帰る」
「そんな寂しい事言うなよ、一緒に帰ろうぜ!」
……なんて言えたらよかったのに。
チキンな俺にそんな勇気ありません。
「あ〜あフラれちゃった。そんなかわいそうなゆっきゅんはボクと一緒に帰ろーねー?」
「ぎゃああああっ!何をするーーー!」
目にも留まらぬ早業で俺を抱き上げ(所謂お姫様抱っこ)、教室から颯爽と立ち去る篠枝。
「止めんかい!お前これシャレになんないくらい誤解されるって!うちのクラスどころか学校中に噂されるよ!?もはや都市伝説にもなるから!」
「目指せ七不思議だよゆっきゅん!あっははは〜」
「あああああもうお終いだぁぁぁーーーっ!!」




