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変化した体

 着替え(なのか?)が終わったあと、ルージュは疲れたとかいってアッシュの背中の上で眠ってしまった。実質的に1人になってしまった僕は何もすることがなく、ただ空を見上げていた。


「うわぁ!」


 空には雲一つない星空が広がっている。木々で閉ざされた森の中でも燦然と輝き続け、どこまでも広がり続ける。初めて夜の空を見たけど、こんなにもきれいなものだったんだ。


 このままアッシュとルージュが目覚めるまで夜空を眺めているつもりだったのだが、ふと下腹部に圧迫感のようなものが生じる。そしてそれは時間が経つごとにだんだんと強くなっていき、中にあるものが破裂して漏れ出しそうな感覚に襲われる。


「……トイレ」


 流石にこの場でするのは憚られる。だから適当な場所まで行ってすることにした。ただ、1つ困ったことがあった。


「……やり方分かんない」


 今までの男の体であれば棒で発射位置を調整して、立ったまますればよかった。しかし女の子の体ではどうすればいいのだろう。


 そうやってモタモタしているうちに限界が訪れた。下半身に温かな液体が流れ落ち、今まで苛まれていた下腹部の圧迫感はきれいさっぱりなくなった。


「なん……で……? 前はまだ我慢できたはずなのに……」


 男のときだったならば、まだ余裕があったはずだ。なのに、どうしてこんなにも早く限界がきてしまったのか。

 だけど今は原因を追求している場合ではない。服は大量の尿が染み込み、肌に張り付いて気持ちが悪い。さらにアンモニアの臭いまで漂わせている。早く何とかしなくては。


 15歳にもなってお漏らしをしてしまうなんて恥ずかしい黒歴史は、あの2匹に気づかれる前に証拠を隠滅しなくてはならない。


 幸いだったのは体を洗うことができる水場が近くにあったことだ。水道管が壊れたのか地面から水が湧き出し、ちょっとしたプールのようになっている場所があった。


 服を脱ぎ捨て水の中に入る。


 裸になったことで今まで意識しないようにしていた体の変化が嫌でも目に入る。決して大きいとは言えないが、それでも確かに存在を主張する淡く膨らんだ胸元。真ん中には小さな桜の花が一輪咲き誇っていた。

 男の象徴がなくなってしまった下腹部は、周辺を飾る森すらもない。

 全体的に丸みを帯びていて、女性的なシルエットになっている。


 そして水面に映る顔は男のときの面影が残る程度で、ほとんど原型を留めていない。

 まず目につくのは髪の毛だろう。元々黒かった髪は、何をどうしたらこうなってしまうのか、光沢のある白に変色していた。瞳も深い海のような青色になっている。


「これは……だれ……?」


 水面に映る姿が自分のものであるという実感がわかない。だってつい数時間前まで男だったんだよ。なのにどうしてこんな姿になってしまったのだろうか。

 別に男の姿に愛着があるわけではないし、いい思い出があるわけでもない。でも、だからといって急に変化を受け入れられるほど達観もしていない。


「あなたは誰なの……?」


 一応男のときから変わってない部分も存在はしている。10年前からあまり伸びなかった低い身長と、痩せすぎてガリガリの体、そして体中に残る虐待の傷跡。

 だからといってこれが自分……ユウリであるという自信を持てない。


「ユウリだよ」

「え……?!」


 いつの間にかルージュが肩に止まっていた。


「貴方は紛れもなくユウリだよ。それ以上でも以下でもない。誰が何と言おうとも、ユウリであることだけは間違いない。私が保証してあげる」


 ルージュがかけてくれた言葉は全て、僕が一番欲していたものだ。僕だけでは、自分が自分であることに自信が持てなかった。誰かに自分がユウリであることを認めてもらいたかった。


「僕はユウリ?」

「ええ、そうよ。さっきから言ってるじゃない」

「そっか……」

「? 変な子」


 涙腺が緩んで涙が溢れそうになる。

 あれ、おかしいな。今日は泣いてばかりだ。こんなに涙腺緩かったんだっけ。これも女の子になった弊害なのかな。


「それで気はすんだかしら、お漏らし娘のユウリちゃん」


 ルージュの口から出た言葉に僕は凍り付いた。


「え、や、どうして……」

「そんなにおしっこの臭いを体から漂わせてるのに、気づかないわけないじゃん」


 そういえば体を洗ってる途中だった。自分の体なんか眺めずにさっさと終わらせるべきだった。どうしてあんなことを考えてしまったのか。今は別の意味で涙が出そう。


「今度女の子のトイレの作法をみっちり教えてあげるからね」

「……ちょっと待って。どこから知ってるの?!」

「最初からよ。私って眠っててもある程度ならユウリのことが分かるのよね」

「……………………きらい」

「えっ!?」

「だいきらい!!」


 その後、必死にルージュが僕のご機嫌取りに終始していた。結局は濡れた服を魔法を使って乾かしてくれたので許すことにした。

 ただ1つ気になったのは、ルージュが血走った目で僕の着替えをガン見していたことかな。あれには少し背筋が凍った。


もしかして眠る前に着替えをさせようとしたのって……いや、深く考えないようにしよう。

低身長貧乳白髪碧眼美少女(虐待痕あり)ユウリちゃん


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