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初戦闘

 正面に魔獣を見据える。どうやら僕が変化したことに対して警戒しているようで、少し離れた位置まで後退していた。


 だから僕は魔法少女となって向上した身体能力を用いて一気に距離を詰める。走った勢いのまま魔獣の鼻っ柱にパンチを叩きこむ。


 ――硬いッ。


 まるで鉄の塊を殴りつけたような感触が腕全体に伝わってきて、拳からビキビキと骨が砕ける音が響く。砕けた骨が肉を裂き、神経をズタズタに引き裂く激痛が腕から伝わってくる。


 お互いの息がぶつかり合うほどの近さで見る魔獣は、あまりにも巨大で、あまりにも力強かった。振るい立てた戦意がしぼみ、恐怖に心が支配されそうになる。


「うああああああ!」


 恐怖心を振り払うためにもう一撃加えようとした。だが魔獣もただ黙ってやられているだけではない。


 魔獣は着実に足を踏み鳴らして、突進のためのパワーを蓄えていた。だけど攻撃することに夢中になっていた僕は、そんな分かりやすい攻撃の前兆に気付くことができなかった。


「ぁが……ッ!?」


 巨大な金槌で殴られたような衝撃が全身を襲う。魔獣はかなりの速さで走っているようで、突き飛ばされることもなく鼻先に張りような状態になっている。そのまま何枚ものコンクリートの壁をぶち抜いていく。そして5枚くらい壁を壊してようやく魔獣は足を止めた。


 ボロ雑巾のようになった僕は、ボトリと地面に転がった。魔法少女の耐久力故か、あれだけの衝撃だったにも関わらず五体満足を保っている。しかし受け身を取ることもできず、正面から受け止めてしまった代償に体の至る所から激痛がしている。


 それでも立ち上がる。痛みには慣れているんだ。今さらこの程度のことで立ち止まってたまるものか。


「もう理不尽に屈しないって決めたんだッ!!」


 痛みを我慢して右手で拳を握りしめる。地面を足でしっかりと掴み、力が一切逃げないようにする。そして頭に自然と浮かんできた言葉を唱える。


「我は孤独、ゆえに触るな近寄るな。我が領域を犯すことを許さじ ≪黒き拒絶≫」


 傷口から白い靄のようなものがあふれ出る。直感的にこれが魔力と呼ばれるものであると分かった。魔力は籠手に纏わりつき、吸収され、黒い籠手の表面に赤い筋のようなものを浮かび上がらせた。


 正直なところ何が起きているのか全く理解していない。でも魔法が発動したことだけは分かった。だから何かしらの魔法がかかったであろう籠手で魔獣を殴りつける。


 魔獣は野生の勘で魔法を感じ取ったのか素早く後方へ飛び退っていた。そのため顔面を捉えるはずだった拳は大きく逸れて、魔獣の牙を殴りつけた。


「はあ?」


 その結果起きたことに僕は間抜けな声が出てしまった。だって鼻先よりも硬いはずの牙が、たった一撃でへし折れたのである。


「これが僕の魔法?」


 どういう効果でこの現象が起きているのかは分からない。だけどこの力でなら魔獣を倒すことができる。もしかしたら余裕で倒せてしまうかもしれない。


 そんな浮ついた心は一瞬で吹き飛ばされた。


「ブモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 イノシシの魔獣は怒り狂っていた。今まで獲物としか見ていなかった存在に、いきなり噛みつかれたようなものだ。しかもそれで手傷を負わされてしまった。これで怒らない理由はない。


 魔獣の攻撃がより一層激しくなった。先ほどまでのような様子見や侮りなどをなくした完全なる本気モード。完全にこちらを殺しに来ている。

 せっかく魔獣にダメージを与えられる手段が手に入ったというのに、とめどない突進の連続に回避に専念せねばならなくなった。


 地面を這いずるように避け続け、一瞬の隙を見つけては攻撃する。そんな小競り合いのような攻防が続いた。魔獣に着実にダメージを与えているのだが、倒しきるよりも先に僕の体力がなくなりそうである。


 息は完全に上がっており、酸素不足のせいで眩暈がする。≪黒き拒絶≫を発動させ続けているが、だんだんとそれもきつくなってくる。体力だけではなく魔力のほうも限界が近い。それに対して魔獣のほうはまだ余裕がありそうだ。


 次の一撃で勝負を付けなければ、僕に勝ち目はない。もう避けるのは、逃げるのは終わりだ。魔獣は必ず正面からしか突っ込んでこない。だから僕も正面から持てる力の全てを叩きこむ。


 全神経を拳に集中させる。フーっと息を吐き、精神を落ち着ける。そして拳を正眼に構えて、魔力を片方の手に集中させる。


「これで終わらせるッ!!」


 魔獣が突進してくるのに合わせて、全力の一撃を叩きこむ。ドシンと重々しい衝撃が拳に伝わってくる。だけど最初とは違い、その感触は柔らかなものであった。一瞬の膠着の後に魔獣の鼻が拉げ、吹き飛ばされた。


 地面に落下した魔獣は白目を向き、体中から血を垂れ流しながら、二度と立ち上がることはなかった。


「勝て……た……」


 魔獣を倒せたことを喜びたかったが、そんな余裕は残されていなかった。初めての魔獣との戦いは思っていた以上に、僕の精神を疲弊させていた。

ユウリの魔法を詳細に描写できなかった(´;ω;`) 思った通りのことを描写できるだけの表現技法が欲しい。とりあえず魔法については別途検証回を設けます・・・。


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