浪で満ちた人間へ
当時高校3年生だった私は自信を持って1次試験会場へと向かった。
そこは感情が満ち溢れた試験会場。
自信に満ち溢れた者。
絶望を感じている者。
冷静に過ごす者。
興奮する者。
十人十色な人が集まる異世界。
そこには私もいる。
試験会場での出来事はよく話題になる。
しかし、正直試験は特に何も起きないただの試験だった。
時は少し経ち、面白いこともなく2次試験を終えた。
大学入試結果を発表する。
全ての試験に落ちた。
最悪の結果だ。
何も考えることはできなかった。
しかしながら選ばなければならない。
夢である製菓専門に行くか、予備校に通い来年改めて試験を受けるか。
18の高校生にはあまりにも重く、残酷な選択肢だった。
悩んだ結果、浪人になることにした。
これは私の人生における最大の選択の2つの内、1つ目。
もう1つは後日訪れることになる。
予備校生活を始めて数か月。
精神状態、学習状況も調子が良く、難なく力をつけているように思えた。
いろいろと辛い思いもしながら、翌年を迎えた。
先に1次試験の講評を伝える。
全体的に易しかった、らしい。
大体の人は1度しか受けないのに易しい、難しいなんて関係ないだろう。
大まかな判定は結局のところ大手予備校がやるのだから。
そんな難癖を付けているが、私はどうだったのか。
1次試験を受けに行ったその日は晴れていた。
うまくいく、そんな空想を浮かべながら受けた。
結果は、
散々、前年を下回る成績。
希望は全て潰えた。
旧帝大レベルの目標どころかその近くのレベルにも及ばぬ低成績。
さらには中堅レベルがC判定という絶望的な状況。
挑戦をしたい、それが去年であれば。
地獄の1年をもう一度過ごす破目になるのは精神的に難しい。
難しいでは足りない、恐らく生きることを諦めてしまうだろう。
ここが最大の選択の2つ目。
当時は死に物狂いだった。
志望先に向けて、2年もかけて試験対策をしてきた。
しかし、予定していない大学の試験対策をしなければならない。
試験傾向も大幅変化、一か月弱で準備しなければならなかった。
あの1か月の記憶は何もない。
それぐらいあまりにも早く過ぎた。
ついに合格発表当日を迎える。
時間が近づくにつれ、心拍数はただ高くなる。
もはや心臓は痛い。
受からなければ終わり。
すべてを失う。
自信もなにかもを。
「サクラサク」
結果は合格。
合格判定までは兎に角辛かった。
涙を浮かべながら親に伝えた。
受かった、と。
私は高校も失敗、大学も失敗した。
しかし、たった1つだけ掴んだ。
1年間を代償に得た成功。
隣の窓からは長く忘れていた希望の光が差し込んでいた。
-Fin-
ここまで読んでいただきありがとうございました。
良し悪しに関わらず評価いただければ嬉しいです。
私も似たような経験したよ、という方もいればレビューもしていただければ幸いです。
経験が無い方でももし自分も同じ局面に立たされた時、どのような行動を起こすだろうか考えてみるのも面白いかもしれません。
改めてありがとうございました。