好きな人の花
あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おばあさんは、花が好きでした。
大きい家の大きい庭にはたくさんの花がありました。
パンジー、チューリップ、バラなどたくさんの色がありました。
お祖母さんは、花に、水をやり、肥料を与え、大事に育てました。
そんなある日。
おばあさんが亡くなりました。
残ったのは、大きな家と大きな庭とおじいさんでした。
おじいさんは、花を育てようとしましたが、一人では大変でした。
おじいさんは、家の前に看板をたてました。
「お花あげます」
次の日。
小さな女の子が訪ねてきました。
「お花ください」
女の子を庭に通すと、花を選び始めました。
女の子は、桃色のチューリップを選ぶと、笑って帰っていきました。
しばらくすると、女の子は、お母さんと一緒に来ました。
「よかったら、これを」
お母さんの手には黄色いバナナの房がありました。
それから、毎日お客さんが来て、花を持っていき、おみやげを置いていきました。
バラはビスケットに、パンジーは紅茶の葉っぱになりました。
そして、全ての花が庭からなくなりました。
かわりに、たくさんのおみやげが部屋に積まれました。
「これをどうしようか」
おじいさんは、考えて、孤児院に寄付しました。
孤児院の先生は、何度も頭を下げて、子供たちはたくさんのお菓子に喜びました。
おじいさんの家には、もう何もありません。
でも、おじいさんの家に、お客さんはきました。
「花が綺麗に育ちました」
「子供たちが絵を描きました」
おじいさんはその絵を部屋の壁に貼って、微笑みました。
そして、おじいさんも亡くなりました。
たくさんの人が葬式に来ました。
おじいさんの棺桶には、おばあさんの花とおじいさんの絵が入れられたそうです。