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捏造の王国

捏造の王国 その25 秋の不祥事大収穫祭? 失態は別の不祥事で隠すのだ!

作者: 天城冴

台風被害の復旧に水をさす増税に加え、政財界では汚職、失言、失態などが次々に暴かれ不祥事のてんこもり。呑気にかまえるガース長官にいら立つニシニシムラ副長官は同僚のシモシモダ副長官に愚痴交じりに訴えるが、シモシモダ副長官の答えは…

台風被害もようやく復旧の兆しがみえたものの、その甚大な被害に頭を抱える被災者を更なる地獄に突き落とす消費税増税も実施されたばかりの今日この頃、ここ官邸でもガース長官が憂鬱な気分で本日のお茶を選んでいた。

「はあ、ずっとドクダミ茶ばかりだったな。しかもそれも満足に飲めない日々が続いた。少し華やかに中国の花のお茶にしようか、それとも鬱によいというセントジョーンズワートでも飲んでみようか」

と、差し入れの茶の袋を眺めながらつぶやいている。

 その様子をみながら、不安そうに話かけるニシニシムラ副長官。

「長官、そのう、例の件で記者会見のお時間が迫っておりますが」

「ああ、例の件、原発ムラのタカマツダ町の役人だかが、カンデンデンに金を配った件か?」

ニシニシムラ副長官は首を振って否定した。

「そ、それはもう“政府としても厳しく追及と”、前の会見でおっしゃったのですが」

「では、返り咲いた総務大臣がまたINUHKに文句を言った件かね?保険不正、まあ確かにあれは詐欺犯罪と言えなくもないが、あんなに詳細に番組で取り上げなくてもいいじゃないか、いわば身内なんだし」

ニシニシムラ副長官はまたもや首を横に振る

「それは問題ないで通されました、いまだくすぶっておりますが」

「では、オオイズミ環境大臣のポエムだのセクシィだのかね?まあ、彼はまだ若いし、というか次期総理候補として私が後見になるつもりで入閣させたのだが。経験不足は否めないと思うが、その大臣の息子の4世だし」

ニシニシムラ副長官はハアっとため息をついた。

「それもスルーされました。大臣は“発言より政策について知識も教養も信念もない無為無策の能無しパンダとバレバレだ、アベノ総理より悪い”と揶揄され続けてますが」

ガース長官はニシニシムラ副長官の哀しそうな様子などお構いなしに続ける。

「それではトンコレラの対策が後手に回った件か?あれはワクチンが足りんからもっと作れとか」

「そ、それも違います!確かにトンコレラについては野生の猪の感染が確認されたことから、発生した県だけでなく、全国でワクチン接種を国が促すべきといわれていますが」

コレも違う、アレも違う。否定され続けて頭にきたのか、ガース長官は声を荒げた。

「では、なんだ!汚染水がすでにいっぱいなうえ、処理が実はほとんどされておらず、放射能が世界一、二を争うほど危険なレベルなことか!芸術祭を中止に追い込んだ犯罪すれすれのトンデモクレームをいれたのが我がジコウ党の党員だったことか!消費税増税の真の目的の一つが実はインボイス導入で、韓国の制度を参考にしたものなのがバレたことか!」

ニシニシムラ副長官は頭を抱えた。

「それらも大問題ですし、いずれ会見をひらくべきではありますが。次の記者会見はアメリカとの貿易交渉がこの次どうなるかです。あと消費税のインボイス制関連が韓国の制度を参考にしたことは一部サヨクの新聞、機関紙が取り上げておりますが、ネットではまだ騒ぎになっておりません」

ガース長官はうろたえた様子で

「そ、それか。し、しかし、次の記者会見もある。あ、あまり突っ込まれずにすむようになんとかしなければ、まあアノことやアノことよりは何とか言い抜けできるか」

と、茶の袋をしまい、大急ぎで関連書類を探し始めた。

 その様子を半ばあきれつつ見ながらニシニシムラ副長官は

「その、僕はシモシモダ副長官とタニタニダ副長官を呼び、準備にかかりますので」

一礼して退出した。


「そりゃ、長官も頭が痛いよ」

先ほどの様子を立ったままで一気に話終えたニシニシムラ副長官に、シモシモダ副長官は苦笑いしながら答えた。

「このところ、閣僚の口利き、不当な介入だの、汚職だの、原発事故の汚染水がほぼ未処理だとバレたとか、ユウセイの保険詐欺とか、不祥事がてんこもりだからな」

ニシニシムラ副長官はふくれっ面で

「それは僕だってわかってるよ。だって僕らが会見の準備をしたり、メディアの情報も集めてるんだから。だけど、長官がそれに対して投げやりな感じだからさ、なんていうか」

「まあ、くだらないことばかりでヤル気がでないよな。しかも、追及するマンゲツ記者たちの方が正しいかもしれんとなると」

シモシモダ副長官は頭の後ろで腕を組んで伸びをした。人間工学を駆使して開発された椅子に座っているのだが、やはり長時間座っているのは苦痛らしい。

「そうなんだよね。高額の金銭の授受なんて不味いに決まってるじゃないか。それなのに本人も財界のお偉方もなんでもないように言うし」

「庶民感覚とズレどころか、もう法治国家じゃないって言われてるからな。最高裁もアベノ総理の肝いり、しかもカケカケ学園問題の弁護人だから、利害関係ありまくり、三権分立じゃないって噂されているし」

ニシニシムラ副長官はうなずいて

「それは僕も驚いたよ。あんまりにもあからさますぎるし。そりゃアベノ総理がオトモダチで周りを固めたいのはわかるけど、今度の内閣改造もそうだし」

「ま、そのせいで問題噴出ってのもあるけどな、オオイズミ大臣の件にしろさ」

「とにかく、不祥事が山盛りで、こっちもいろいろ大変なんだよね。おまけに消費税増税がはじまったし」

と言って、ニシニシムラ副長官は椅子に深々と腰掛けた。

「それで思い出したが、タニタニダ君は、財務省にかかりっきりになってるよ。なにしろ消費税増税でいろいろ混乱がおきて、問い合わせなどが殺到だそうだ。駅とかコンビニとかでシステム障害も起こっているようだし」

「あれ?シモシモダ君、君も前に手伝ったんじゃないの?消費税増税対策用ソフトの“万能経理ソフトなんでもお答え相談室“を開設した時担当じゃなかった?」

ニシニシムラ副長官が尋ねると、シモシモダ副長官は拒否するように手を振って

「だから、今回は固持したんだよ。プレの対策ソフトの相談室でさえ、すごい騒ぎだったからな。こっちも勉強不足だが、問い合わせるほうはさらにわかってない。もう両方で何言ってるんだか、わからなくなって、滅茶苦茶だ。しまいにゃ、レッドフラッグをひっぱりだして引用する奴だの、消費税大反対の元内閣参与に問い合わせしようとする奴まででてきた。まあサヨクとリベラルのほうが増税の危険性、意味をわかっているし詳細に解説はしてるんだが、とにかくトンデモナイ騒ぎになった。あれを体験したら、どんなに時給がよくても二度とやる気にはならんだろうよ。ある意味グローバル通販の倉庫バイト並みにキツイ。座れるだけマシだが、マジでトイレいけず救急車も呼べないかもしれん。なにしろ政府の相談室は適切に運営されているという建前を死んでも亡霊になっても押し通すって感じだったしな。息も絶え絶えでハアハアだろうが、喉カラカラ掠れ声だろうが、問い合わせの電話には穏やか丁寧に答えねばならないって医者も弁護士も真っ青の文言がマニュアルにあったんだよ」

「そ、それは大変だったね。でも、それならタニタニダ君はなんでそんなところに行ったのかな?」

「まあ、少しは改善されているとおもうよ。それにタニタニダ君はアトウダ副総理に取り入ってるから、財務省も嫌がる役割を引き受けたんだろう。今頃後悔しているかもしれないが」

「そうか、タニタニダ君はそっちで忙しいんだね。じゃあ僕たちだけで準備か。にしても本当にこのごろ多いよね、不祥事というか」

「ああ、そうだな」

シモシモダ副長官はそう言って目を閉じた。

「シモシモダ君?疲れてるの?」

「いや、ちょっと考えたんだが、ひょっとして、このごろ不祥事が次々バレてるのはわざとじゃないかなって」

「は?わざとって?」

「つまり隠そうと思えば隠せたことを、故意にリークしている、いや脇を甘くしてバレやすくしてるっていうか」

「は?つまり長官やハギュウダンさんとかが、わざとマスコミやサヨクサイドに情報流してるとか?」

「流すとまではいかないけど、隠す努力をしなくなったものもあるのかも」

「な、なんでそんなこと!」

シモシモダ副長官の言葉に驚きを隠せないニシニシムラ副長官。

「いや、もう他に隠しようがないことを誤魔化すため、かな」

「隠しようがないって例えば?」

「日米貿易交渉でドランプ大統領に車も農水産物もほとんどすべて押し切られてボロ負け状態とか」

「あれはこっちが詳しく報道しなくても、アメリカサイドのホームページで内容がわかっちゃったしね」

「隣国たたきをしすぎて、隣国の観光客が激減。あちこちの観光業が疲弊して災害レベル、アベノ災害だの言われているとか」

「首都近郊以外、かなりの被害いや損害って言われてるね、災害認定した県もあったし」

「アベノ総理の桜を愛でる会の予算が2倍以上になったとか、ハギュウダンさんが例の学園で浪人中雇ってもらってたとか、政府が気に入らない芸術祭にケチをつけて決定してた予算やらないというダブルスタンダートやったとか」

「予算とかは国会でわかっちゃうからね、結局」

「アベノ総理の国連演説はガラ空きで、寄ってくる人もほとんどいないとか」

「そんなのは外国の報道みればわかることだしねえ」

「まあ、ジエータイの宇宙部門創設とか、突っ込みどころ満載だしな」

「そういわれてみれば、国民に説明しなければいけないけど説明しにくいことって本当に多くなったよね」

ニシニシムラ副長官はウンウンとうなずく。シモシモダ副長官は少し真面目な顔をして

「だけど、あんまり多すぎれば前のことを忘れてしまうだろう。現にチバン県の台風被害は覚えていても、その前の被害、去年の被害は覚えてないんじゃないか、当事者じゃなければ」

「本当だ、すっかり忘れてたよ。去年の被災者でまだブルーシートを張って暮らしている人いるんだよね」

「家に帰れない人もな。まだ復旧は続いているんだが、記事にされず報道されないと忘れてしまう、それと同じで新しい不祥事を毎日のように報道していれば、前のことは記憶にうずもれてしまうんだ」

「そうだね、毎日別のことを言われたら、情報についていくのが精一杯になって、一週間前のことも思い出せないってことはあるかもね」

「国会が開かれても、野党も的を絞り切れないってこともあるだろうし、長官の宿敵マンゲツ記者だって大変だろうよ、彼女がモデルの映画まだ上映中らしいけど」

「確かに、何を追及すべきか、よく考えないといけないけど、こうも沢山あると順位付けするのだって一苦労だろうね。質問を考えるのも大変になるよね」

「野党やリベラルの奴等に考えるスキを与えないって作戦かもしれないが」

「それってこっちも大変になるんだよね。いちいち記者会見とか開いて答えるのもさ」

ニシニシムラ副長官が憂鬱そうに言うと、シモシモダ副長官は苦い顔で

「そうなんだよ、しかも不祥事満載の政府、国家だと内外にバレバレ。はっきり言って法治国家どころか中世にも劣るって揶揄されるし」

「閣僚のほとんどが脛に傷っていうか、つっこまれるんだよね。いちいち言い訳考えるの大変なんだよね」

「もう言い訳の体をなしてないぞ。ガース長官が問題ないって押し通しているが、ネットでも批判の嵐。お仲間の記者に寿司やら焼き肉やら食わせて誤魔化し続けるのも限界に近い。だいたい、いくら軽減税率対象とはいえ、新聞を定期購読なんて余程意識高い連中しかしなくなるだろうし」

「フジサンサンケイ新聞とか結構危ないかもね。そしたら記者のリストラとかあるのかな」

「新聞販売店への押し紙も、もう無理だしな。これ以上やったら販売店そのものが無くなる。そうなったら新聞社が潰れかねないんだが、どうも当事者の記者たちもわかってないようだ」

「それで海外のメディアがニホンに本格進出とかした不味いよね」

「もう海外の報道しかみないっていう奴もいるしな、海外メディアが入り込むのは時間の問題だろう。そうなったら今までみたいに御用記者たちを集めて決まった質問しかしないというお約束がなくなるんだ。こっちも相当準備しなければならない、かなり厳しくなるぞ」

「そうなると毎日徹夜になるのか、長官も今以上にお茶を楽しめなくなるかもしれないのに」

「とはいえ、アベノ総理はじめ閣僚方の不祥事、失態、ミスを誤魔化すためのよりよい方法なんて思いつかないな」

とシモシモダ副長官はお手上げだ、というように手を広げて両腕を上に伸ばす。

「そもそも国民に対して誠実に真摯に政権を運営すればいいんだけどね」

ニシニシムラ副長官が窓の外を見ながら言うと、シモシモダ副長官は沈んだ声で

「アベノ総理とオトモダチじゃ無理だろう、それはガース長官もわかってるんじゃないかな」

と言って黙り込んだ。

 当のガース長官は

「狙ってやった部分があるとはいえ、この不祥事の山、はっきり言って鬱になりそうだ。やはりセントジョーンズワートを毎朝、毎昼、毎晩飲むしかないのか」

というハーブティーを飲みすぎて身体を悪くしそうなことをつぶやいていた。


本編のニホン国のごとく、どこぞの国では不祥事が毎日のように明らかになっているようですが、それに慣れてしまわず、つねに批判的な目でチェックし、不正なんぞ当たり前という堕落した国家にならないように注意していきたいものです。

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