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遺跡での戦い6

今回は橘視点となっております

今日の夜に次話を投稿します。


「助かったです。橘くんが来てくれて、殲滅速度が大幅に上がりました」

「お前らでも充分戦えていただろ」

「そうですけど、私の能力には限界がありますから」

「そうかよ」


 俺は今、朝日とそれから桜花の二人とサングイネの地下遺跡に潜っている。目的はこの奥地にあるという宝玉。神崎たちがいるのは確認しているが幸か不幸か俺たちがいるところまで潜ってこない。相当弱いみたいだ。


「バカにしていると足元掬われますよ」

「それは嫌だな」


 ただ、さすがにあの吸血鬼の少女より強いなんてことはないだろうし油断さえしなければ間違いなく勝てるだろうな。それにしても、


「桜花、まだ見つからないのか?」

「んー、こいつも外れ。普通に知らないみたいだ」


 桜花が掴んでいた手を離すと、そこからゴブリンが崩れ落ちた。てか、あいつ止めさしてないのかよ。すぐにそのゴブリンの首を掴んで壁に叩きつける。ぐしゃりという音がして、ゴブリンは絶命した。


「もっと精度上げることができないのか?」

「無理だって、俺の能力はあくまでも洗脳だし、記憶をたぐるなんて無理だ……それでもギリギリなんとかしてるだけマシだと思えよ」

「わかってるよ」


 上の階層にいないことにいち早く気がつくことができたのも桜花の能力のおかげだしな。そしてこの階層にあるということも掴んでいる。あとは細かい位置を知ることができればいいのだけど。


『おい、上から人間が落ちてくるぞ……助けろ』


 あ? 人間一人ぐらい別に見殺しにしたっていいと思うけどな。でも、逆らうのも面倒だし従うとするか。でも、落ちてくるって言ったってここはそこそこ広い空間だから詳しい位置がわからないとどうにもできないぞ。それにこの広間から繋がっている通路の数も相当だし。それでも急に上を見上げた俺に対して、朝日たちは不思議そうに声をかけてきた。


「橘くん?」

「朝日、上から人が落ちてくる。助けるからサポートしてくれ」

「え? はい」

「人が落ちてくるのか?」


 桜花の言うこともよくわかる。俺だって最初はこの()の存在が言うことに対してかなり懐疑的だったからな。でも、その言葉は間違っていたことがないからな。実際に、今も、


「きゃああああああ」

「え? まじで!?」

「サポートに入ります。橘くん」

「おお」


 壁の方向に飛んで、そこから三角飛びの要領で壁をまた蹴る。そして落ちてきたやつを捕まえる。衝撃でバランスが崩れてしまうが、地面に激突する前に朝日が呼びだしてくれた白い人形がクッションになってくれて傷ひとつ負うことなく着地することができた。


「大丈夫ですか?」

「ああ、助かったよ。朝日……それで? お前は」

「あ? 湊と一緒にいたやつじゃねえか」

「いたたた……え? あなたは!」


 落ちてきた少女は桜花の姿を確認したらすぐに飛び起きて、俺たちから距離を取る。みたところ、かなりの美少女だ。だが、どこか見たことがある気がするのは気のせいだろうか。


「そこの人……桜花よね? あなたと一緒にいてかつ黒目黒髪……アカリの同郷の人?」

「湊くんの知り合いなの?」

「ああ、そうだな」


 やっと思い出した。昌栄の街で湊たちと一緒にいたやつじゃねえか。てことはこいつもまた厄介な能力を持っている可能性が高いな。


『こいつは未来を見る眼を持っている。少なくともそこの桜花よりかは頼りになるぞ……だから殺すな』

「へえ、未来を見る力か……お前の能力だったんだな」

「私の能力を知っているのね」

「ああ、そうだな」

「私を殺すの?」


 挑発的な物言いで俺たちに言ってくる。なかなか肝が座っている。嫌いじゃない。まあ、そうだな。


「殺してもいいが、取引しないか?」

「取引?」

「橘?」


 桜花が俺に対して疑うようなことを言ってくるが手を振って任せろと言外に伝える。お前の能力で洗脳もアリだが、洗脳すれば能力がかなり制限されてしまうからな。


「ああ、俺たちを宝玉のあるところに案内してくれよ。そうすればお前を安全に湊たちのところに返してやる」

「本当なの?」

「ああ、嘘をつく必要がないからな。どうだ? 悪くない取引だと思うがな」

「……」


 俺からの提案に対して目の前の少女は考え込んでいる。みたところ、かなり賢そうだし、頭のなかでメリットとデメリットを計算しているのだろうな。少しだけ悩んでいたが、すぐに顔を上げて俺たちの方を見た。


「わかったわ。案内してあげる。その代わり、ちゃんと送ってよね」

「ああ、それは保証する。桜花も、朝日もいいな?」

「わかったよ」

「橘くんが決めたのなら特に反対しません」

「というわけだ、さっさと案内しろ」

「私ができるのは罠があるかの確認とか、敵の奇襲を警戒するぐらいよ。まあ道の先に何かあるか少しは把握できるけど」


 そう言って少女は適当に歩き始めた。時々通路の先をじっと見つめていることを見るに、その先に何があるのかを確認しているのだろう。


「こっちからきたのよね?」

「ああ、そうだっけ?」

「合っていますよ。上から落ちてきたのによくわかりましたね」

「ここだけやけに敵の数が少ないからね。とりあえず、そことそこは行き止まり。それくらいしかわからないわ」

「なるほど」


 なんだ。この程度か。ちょっとだけ落胆するが、まあ少しでも選択肢が減ったと考えればそこまで悪くないのかもな。


「助かる……そこの道をいくぞ」

「すぐの曲がり角に気をつけてね。矢が飛んでくるから」

「先行させますね」


 朝日がまた白い人形を作り出して俺たちの先を歩かせる。言われていたように角を曲がった瞬間に矢が飛んできて、人形は倒れてしまった。


「へえ、未来予知は本当なんだな。助かる」

「そうね……でも意外、素直にお礼を言うなんて」

「こういう民族なんですよ。私たちは」

「そう、アカリもそうだけど、やっぱり別の世界の人間なのね」


 なんでお礼を言ったぐらいでそこまで言われなくちゃいけないんだよ。でも、ここだけは変わることがなかったな。日本で叩き込まれた何かしてもらったらお礼をいう、それをまさか指摘されるなんてね。


「そうなのね……ああ、どうする? 私の名前を伝えておいた方がいいかしら?」

「いえ、敵同士ですし、必要ないですよ……それに、知らない方がお互いにいいと思いますし」

「それもそうね……でも、ごめんなさい。私はあなたたちの名前を知っているの。桜花に橘、それから朝日さんでしょ?」

「湊から聞いたのか?」

「ええ、それにさっきの流れで確認したし」

「そうですか。ですが、あなたも名乗る必要はないですよ」

「なら、そうさせてもらうわね」


 それからしばらく歩いているとまたしても大きな広間にでた。どうやら当たりを引いたとみていいのかな?


「気をつけて! 何かくる」

『油断するな』

「!」


 あの少女と、それから謎の声から警告が聴こえてくる。それを聞いて俺たちが身構えた瞬間に、何かが襲ってきた。


「はっ」


 すぐにみんなの前にでてその影に向かって拳を叩き込む。俺の方が力が上だったようでそいつはバランスを崩して後ろの方に突き飛ばされた。


「これは……」

「スフィンクスによく似ていますね」

「ダンジョン系でお馴染みのボス的なやつかもな」

「なんでもいい……お前ら、下がっていろ。俺が相手する」


 どうせロクに戦えないだろうしな。俺はスフィンクスを前にして一人で立つ。さて、と。まあ、いい練習台、と思うことにしようかな。


「あぶない!」


 俺はスフィンクスの前に立ちふさがる。そうするとスフィンクスが俺めがけて突っ込んでくる。衝撃に備えて俺は自分の肉体を強化する。


「うぐっ」


 衝撃を受け止めることができずに吹き飛ばされてしまう。だが、これでいい。ダメージを受けた今がチャンスだ。


「『憤怒』」


 持っている赤い玉が輝いてスフィンクスへと向かう。そして俺が受けた衝撃の倍の威力の衝撃がスフィンクスを襲う。そしてそのまま今度はスフィンクスが吹き飛ばされる。


「はあああ」


 そのまま飛び上がって拳を握り、頭の部分に思いっきり殴る。今の俺ができる最大の強化をした拳で振り抜いたが、砕くことは叶わなかった。それでも少しだけひび割れた状態にすることができた。


「桜花! 少し手伝え」

「わかってるけど……こいつには俺の能力が効かないみたいだ。心がない」

「ちっ」


 まあこういう輩なら心がなくても仕方がないよな。石像だし。だから砕けるかと思ったんだけど、予想以上に硬かった。


「炎が飛んでくるわ」


 スフィンクスの口が開いて、そこから炎が飛び出してくる。あの女性のおかげで構えることができた。いや、どちらかといえば白い人形が俺たちの前にいて炎を防いでくれたのか。


「助かったぜ、朝日」

「防御は私に任せて、橘くんは攻撃に専念してください」

「ああ、わかってるよ」


 さっきの攻撃でひび割れさせることができた。だからもう一度飛び上がって、頭を叩き割る。スフィンクスは炎を吐いているのでこちらに対応することができない。しっかりと狙いをつけて同じところを攻撃したら、今度こそ、頭をかち割ることができた。


「これで、終わりか」

「お疲れ様でした」

「桜花、平気か?」

「大丈夫だ」

「……どうした?」


 朝日や桜花のことを気遣ったら少女から待てしても不思議そうな視線を向けられた、何かおかしなことでもあったか?


「いや、あんたも仲間を気遣ったりするんだってね」

「信じられるのがこいつらぐらいしかいないからな」

「あなたたちにもいろいろあったのね」

「勝手に俺たちのことを推測するんじゃねえ」

「……わかったわよ。それと、あなたが戦っているうちに進む道を見つけておいたわ。こっちよ」

「ちっ、最初から黙って俺たちを案内しておけばいいんだよ」


 そしてまたこの少女についていく。しばらく進んでいると向こうから謎のオーラというか、何かの気配を感じた。


『へえ、どうやら5つの宝玉があるみたいだ』

「この先に……いや、これは湊もいるか」


 ちっ、どうやら又しても先を越されてしまったみたいだ。案の定、開けたところに出たら、湊とそれからなぜか神崎の妹がいた。


「アカリ!」


 そして先を走っていたあの少女は湊の方にいって、抱きついている。はっ、あいつやっぱり女に現を抜かしてやがったのか。

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