遺跡での戦い2
ブクマありがとうございます。
「白園さん? なんで神崎の部屋に?」
白園深雪、僕たちのクラスの委員長。その名前のように白い肌が特徴的な美少女だ。冷静な性格の持ち主でとても頼りになる存在。そんな人がどうして神崎の部屋にいるんだ? もしかして二人は付き合っているとかそういうことなのかな。なら邪魔したら悪いからさっさと帰るとするか。そう思って踵を返そうとしたら白園さんに答えをもらった。
「さっきまでここで話し合いをしていたからよ。その片付けをしていたら遅れちゃっただけよ」
「そうだったのか」
「悪いな、白園」
「構わないわよ。おかげさまで湊くんと話せるし悪くないわね」
「話せるって、何か用事でもあったのか?」
「ええ、少しね。それよりも、後ろにいるのは湊くんの連れ? 入ってきてもらいましょうよ。ベッドにでも座ったら」
「ああ、助かるよ」
「失礼します」
白園さんの言葉に少しだけ不安に思ったけれど、確かにルナたちを立ちっぱなしでいさせるのはさすがによくないよね。僕と、ルナと、それからサラちゃんの三人で一つのベッドに座る。神崎と白園さんはもう一つのベッドだ。
「さて、と。さっそく湊くんに聞きたいのだけど、旅の途中に他のクラスメートと出会ったことある?」
「ん? ああ、あるよ」
どうしてそんなことを聞いてきたのかわからないが、これも隠す必要がないので答える。てか橘しかり白園さんしかりなんでみんなクラスメートがいるか聞いてくるんだろう。
「それは誰?」
「え? 橘に小沼山、世良、桜花に七草、それから麻木に坂上だったかな」
「それだけ?」
「うん」
ツクヨミって人はなんとなくクラスメートな気がしたけど、まだ確定したわけじゃないし黙っておこうか。でも、並べてみれば結構な人数と出会っているんだな。
「なるほどね」
「なんで気になるんだ?」
「あくまで可能性の話なのだけど、この世界にもし、私たちのクラスの人間が全員来ていたとしたら……その人たちがどうしているのか気になってね。そして今、湊くんの話を聞いてまだ全員かどうかはわからないけど、その可能性が高いと思ったわ」
「なるほどね」
これは伝えた方がいいのかわからないけどうちのクラスメートは全員この世界にやってきています。てか、それを自分たちだけで気がつくことができたのか……僕はユラムに聞いただけだけどね。
「それで、湊くんが出会った人たちは何をしているの?」
「……何をしているのか具体的にはわからない。でも、言えるとしたら僕たちの敵になるということだ」
「魔王と関わりがあるということであってる?」
「まあ、そうだね」
でも、魔王候補として召喚されているのって小沼山と世良だけだよね? ただ、邪神教のことを教えたとしてどこまで理解できるか……これは言わぬが花ってやつだな。
「そっか……できることならクラスメイトとは戦いたくないんだけど、それは厳しいかな」
「覚悟はしておいた方がいいわね。神崎くん、これはみんなに伝えましょう」
「みんなってことは……ここに全員来ているのか?」
「ええ、そうね。さて、質問に答えてくれたお礼に教えてあげるわ」
そう言って白園さんは王宮のクラスメートたちのことを教えてくれた。神崎たちは今も魔王と戦うために日々訓練に励んでいると。ただ、もう王宮での戦闘訓練はあんまり意味がないということでこうして地下遺跡に来て実戦の訓練を行っているらしい。
「地下遺跡ってどうなっているんだ?」
「ダンジョンって言ったらわかりやすいかな。俺たちは基本的に奥までいかずに浅いところでひたすら弱い魔物を狩っているからそこまでわからないんだ……どうしてそんなことを聞くんだ? まさかお前も来るのか?」
「ああ、そのつもりだけど……問題があるかな?」
こうして神崎たちが来ているということは当然地下遺跡も入場制限が設けられている可能性が非常に高い。それに宿はともかく地下遺跡の方は万一僕がなにかお宝を取ってしまったらって考えるときついよな。てか実際に宝玉を狙っているし。てか宝玉を取ったら地下遺跡は消滅するとかそんな展開あるのかな?
『それは一切ないわね。宝玉の方が後から置かれたんだし』
それならよかった。よく聞く話だからね。そして神崎は僕の言葉を聞いてかなり悩んでいる。いや、スパッとダメですって言ってくれていいんだからね? 黙って取りに行くから。
「まあ、普通に冒険者の人たちがいるから入ることは問題ないんだけどよ、なんのために入るんだ? 正直戦いの訓練なんていらないだろ」
「欲しいものが地下遺跡の奥にある」
「もしかして、その宝玉か?」
「ああ」
もしかしてあの奥地に宝玉があることはわかっていない感じか? なら今回は橘たちと出会うことがなくて済むのかな? そうなってくれると気持ち的にものすごく楽なんだけどね。
「そっか……わかった」
「いいの?」
「その代わり条件がある」
「なんだ?」
「栞を攻略まででいい。一緒に連れて行ってほしい」
「え?」
条件があるっていうからどんなことを言われるかと思ったらなんだかちょっと意外なところがきたんだけど。てかどうして栞を? 神崎じゃなくて? いや、神崎もどうして一緒に来たいのかわからないけどさ。
「ちょっとな」
「お兄ちゃんも大変ねぇ」
「まあ、栞がいてくれると助かるけどさ。ただサラちゃんと役割が被るが……いや、回復できる人が多い方がいいし問題ないか」
「お兄ちゃん、栞って誰?」
「僕のクラスメートの一人でここにいる神崎の妹なんだ」
「そうなんだ。お兄ちゃんの故郷の人ってみんな黒目黒髪なんだね」
「まあ、そういう世界から来ているからね」
そういえば、ここにはサラちゃんとルナがいるんだよな。彼女たちを一切無視して話してしまったけどさすがにそろそろ話した方がいいよな。……ん? 白園さんがかなり不思議そうに僕の方を見てくるんだけど。
「その子、湊くんのことをお兄ちゃんって呼んでるけど」
「まあ、いろいろあって一緒に旅をすることにしたんだ」
「ふーん、いいけど、その子とそれからもう一人、二人とも人間じゃないわよね?」
「あー」
白園さんの指摘に二人にほとんど変装させることを忘れていた。いや、忘れていたっていうか気にしてなかったという方が正しい。
「はい、あなたのご指摘通り私はいわゆる吸血鬼と呼ばれる存在です」
「そう、それにしてもよく集めたわね」
「色々あったんだよ」
「お前ってどんな旅をしてきたんだ?」
「ははは」
神崎からの呆れたような言葉にはただただ笑って返すしかない。ユラムがいるからなのか、言われてみればたくさんの人と出会ってきたんだよな。
「私は白園深雪、そこの湊くんの同郷の人間よ……そういえば私たちの世界のことは伝えているのよね?」
「お兄ちゃんが別の世界の人間だっていうことでしょ? やっぱり本当だったんだ」
「そうよ。よろしくね……えっとサラちゃん?」
「うん、サラだよ。それからこっちはルナお姉ちゃん」
「よろしくお願いします」
「後カナデさんとヒヨリさん、それからユキさんだっけ? がいるんだよ」
「見事に女子ばっかりね」
「一時は男子もいたんだけどね。それからヒヨリはいまは故郷に帰ってるんだ」
「え? そうなのか」
「そうだよ。だから今はいないけど気にしないでくれ……それで、他に聞きたいことってあるのか?」
白園さんが他に聞きたそうにしているから聴いてみることにした。さりげなくヒヨリのことを伝えることができたのは結構良かったのではないだろうか。市ヶ谷さんの方もユキがうまいこと言ってくれているだろうし。そして案の定、別の質問が来た。
「ええ、これは無理に言う必要がないのだけど、あなたたちの能力を教えてもらえるってことはできるかしら?」




