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日々を繰り返す少女の憂鬱7

今日はこの時間にも更新します

また、いつも通り、10時も更新予定です


「アカリ! 私に合わせて左の方から攻撃して」

「了解」


 ヒヨリから指示が飛んでくる。ただ、非常に申し訳ないがこれ以上の戦闘は正直かなり厳しい。でも、それをケルベロスには隠さないといけないな。僕はヒヨリの指示にうなづいて左の方からケルベロスに攻撃を仕掛ける。走りながらヒヨリの様子を確認する。


「我の頭が三つあることを忘れていないか」

「それでも、体は一つしかないでしょ?」


 一度に複数のことを同時にしようとしたら混乱してしまうのは当たり前のことだ。できる限り後ろの方からケルベロスに向かっていく。視線を向けようとしたらどうあがいても引っかかってどちらかの攻撃を受けてしまう。まあ、それに、


「私を忘れないでください」


 なぜか近くの木を伐採していて、その木を風で操っているルナがいる。そしてそれをケルベロスに向かってぶん投げた。


「陽動のつもりか!」


 真ん中の頭が反応して木に向かって炎を吐いた。燃え盛る炎に押されて木はケルベロスに届くことなく落下してしまう。ルナは何がしたかったんだ? 木は雨に打たれながらも燃えている。


「はっ」

「とりゃあああ」


 それと同時に僕とヒヨリが左右からケルベロスに斬りかかる。狙いは目。犬だから嗅覚が優れているとはいえ視覚を奪ってしまえばかなり楽になる。


「舐めるな」


 斬りかかる瞬間、ケルベロスはその体を回転させた。とっさの行動に僕もヒヨリも受け身を取ることができずに吹き飛ばされてしまう。


「くそっ」


 そのまま地面を転がっていく。そのときに雨の影響でぐちゃぐちゃになった土が体について気持ち悪い。なんでまたこんな天候にしてしまったんだろう。戻したいけど……無駄なエネルギーを使いたくない。


「ご主人様!」

「ヒヨリの方は?」


 ルナから心配そうな言葉が飛んでくるが、それでも体を起き上がらせてあたりの様子を伺う。追撃が来てしまえば色々とまずいからね。しかしケルベロスは僕の方に向かってくることがなかった。


「ヒヨリ!」


 僕の方ではなく、ヒヨリの方に向かっていった。そしてそのままヒヨリに突っ込む。回転で飛ばされたばかりで不安定な体勢の時に突っ込まれてしまい、防御姿勢をとることができずに後ろの木々に激突してしまう。


「ううっ」

「ふざけんな」


 さらにケルベロスはヒヨリに追撃を加えようとしている。今から向かおうにもこのままでは間に合わない。ルナが地面からの攻撃をするか?


「吸血鬼よ、お前の邪魔はさせん」


 左の頭がルナの方を向いて、ルナに向かって電撃を放出している。ルナはそれを避ける必要があるので動けない。だから僕がなんとかしなければいけないのだけど、


「『落雷』」

「おのれ……神の使いよ」

「ヒヨリは任せて!」


 いつの間にかヒヨリのそばに近づいていたユキがヒヨリを安全な場所に移動させてくれる。僕が巻き起こした雷に打たれたケルベロスは少しだけ動きを止めた。どうやらうまい具合に体が痺れたみたいだ。


「ご主人様」

「ん?」

「ご主人様の能力で噴火を起こすことはできますでしょうか?」

「あーできる、と思う。一応自然現象だし」


 そして僕のそばに近づいてきたルナにそんな提案をされる。噴火、火山などが突然マグマなどを放出する自然現象。本来なら火山で発生するものだけどまあ、ユラムの力を使っているしきっといけるだろう。


「わかりました……私だけでなんとかしようと思いましたが……ご主人様、あの犬の真下に噴火を発生させてください。その後に衝撃に備えてください」

「衝撃?」

『あー、これ全員に結界を貼った方がいいわよ』


 二人が何を言っているのかよくわからないが、あーもしかして僕の噴火のエネルギーが大きすぎてみんなも巻き込んでしまうとかそういうことなのかな? 確かに降らせた雨を未だに止めることができないでいるし。僕の能力はどちらかといえば雨雲を引き寄せるって感じなのかな。


「よくわからないけど……いくよ!『噴火』そして『忠義』!」

「何をするつもりだ……?」


 一応威力には気をつけて気持ち控えめに能力を使用する。ケルベロスの足元の地面がめり上がってそしてそこから灼熱のマグマが噴き上がる。その勢いでケルベロスを空中に押し上げる。


「この程度の力で……!」


 そして降っている雨とマグマが接触する。雨が水が主成分なのでマグマと当たったことで、気化して水蒸気へと変化する。もともと少しだけ雨が地面に染み込んでいたのだろう。空中からだけでなく地中からでも水蒸気の煙が巻き起こっているのが見える。


 液体から気体へと変化したことにより、水が急激に気化、膨張していく。そしてそれが彼方此方で発生する。急激に体積が膨張し、それが一つの巨大な爆発となった。


「うわああああ」

「きゃあああああ」


 ユラムに言われたように結界を貼っていなかったらみんなこの爆発に巻き込まれてしまっただろう。衝撃波で結界ごと吹き飛ばされることはあったけれども、体にダメージを負うことだけはなかった。


「みんな……大丈夫か? ぐふっ」

「アカリさんが一番やばいじゃないですか」


 衝撃が収まったのでみんなの安全を確認する。結界がきちんと発動したから多分大丈夫だろうけどちゃんと声を聞くまでは安心できない。しかし、みんなの安否を確認する前に僕の口から血が出てくる。


「カナデ……無事か」

「はい、大丈夫ですよ! サラちゃん! アカリさんに回復を」

「はい。任せてください」


 カナデとそれからサラちゃんも無事なようだ。それはそうと、意識を失うことはないけれども自分の口から湧き出る血を見て思う。僕、これいつか死ぬんじゃないか?


『……』


 その沈黙が非常に怖いのですけど。まあ……クラスメートを止めて、助けることができるのなら、それでもいいか。


「うまくいってよかったです」

「ルナ……ぐふっ。これは……なんだ?」

「水蒸気爆発と呼ばれる現象です」

『ま、簡単に言えば気化することによって急激に体積が膨張してそれがそのまま爆発になるってことよ』

「そ、そうなんだ」


 説明でなんとなくはわかった。それに、聞いたことのある現象だし、原理は知らなかったけれど納得はできる。そしてケルベロスの方はといえば……


「まだ、生きているのかよ」

「我は不老の存在だ……この程度、すぐに回復する」


 かなり近い距離で爆発を受けたためか犬の毛の一部が燃えている。しかし、それでも致命的なダメージを与えることはできなかった。そういえばさっきヒヨリが突き刺した右の頭の目も回復し始めている。


「さて、と」

「!、まっ」


 そして犬はどこかに飛びかかっていった。どうしたのだろうと思ったらそこにはヒヨリの姿があった。衝撃で動けなくなっているところを狙ったみたいだ。


「きゃああああああああ」


 ユキの悲鳴が聞こえて来る。なんとかふらつく体に鞭を打ちながら、僕は立ち上がりヒヨリたちの方に向かう。なんとか向かった僕たちが見たものは、


「ヒヨリ……腕が」

「平気よ」

「グルルルル」


 腕を頭の一つに食われた状態のヒヨリの姿があった。幸いにも噛みちぎられているわけではなさそうだけどそれでも、食われているところから血が流れている。

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