日々を繰り返す少女の憂鬱5
今回はあんまり話が進んでいないので1時間後の11時頃にもう1話分、投稿しようと思います。
「それで、アカリにというか神様に聞きたいことがあるんだけど」
「そういえば言っていたね」
話す条件というか話したら代わりに教えてくれって話だったもんね。それで、何が聞きたいのだろう。
「私が最後、意識を失ったのはどうして?」
『簡単な話よ。ヒヨリの脳が耐えきれなかったのよね』
「ヒヨリが限界だった?」
頭の中では『次の日』になっているはずなのに、現実では同じ日が繰り返していく。そこのズレに対して脳が処理しきれなくなっていく。だから限界を感じて全ての情報をシャットアウトしたというのが事の顛末らしい。
「だから自分自身を守るために強制的に能力の使用を終わらせたってことみたいだ」
「そんなことが……」
僕のというかユラムの説明を聞いてヒヨリは納得したみたいだ。てか、これを聞かされたらもうヒヨリに能力を使ってくれって言えなくなったんだけど。使うたびに精神だけではなく脳にダメージが蓄積していく。使えば使うほど命を削っている能力なんて酷すぎる。
「あと、私のせいで村が襲われたってどういうこと?」
『ちょっと複雑な話になるのよね……アカリ、またみんなに「純潔」を使用してちょうだい。あなたを介して説明してあげるわ』
「了解。みんな、ごめんね『純潔』」
「うっ」
短い時間に『純潔』を連続で受けたらそりゃ精神的にかなり厳しいよね。そしてみんなの頭を僕と接続する。さて、とユ……説明してもらえるかな?
『いいわよ。まあ、要はヒヨリの能力で死が回避されると、冥界に送られた魂が現世に戻ることになる。だから帳尻を合わせるために別の命を冥界は要求するの』
それって死ぬ人数を変えることができないってことなのか?
『そういうこと。ユキの時が私が全部塗り替えたから影響はないのだけど、普通はそんなことしない。そして、繰り返された数が多ければ多いほど、ちょっとした歯車の違いで死ぬ人の数がズレることがある。そうなったら冥界は大慌てよ』
ユラムの説明を聞いていて、ふと思ったのだけど冥界って言葉を簡単に受け入れているよね。この世界にはそんなものが存在しているんだ。地球にはあるのかな。個人的にはあると嬉しいのだけど。
『で、それを鎮めるために、冥界はたくさんの命を要求した。だから基点となったヒヨリの村の人々の命を奪うように死者が襲っているのよ』
これが、ヒヨリのせいで襲われるようになったという原因よ。ユラムはそう締めくくって終わらせた。そして次の瞬間には僕がかけた『純潔』は全て解除された。そういえば気になっていたけど、
「ルナ、僕の思考全部筒抜けだったりした?」
「いえ、よくわからない女性の声しか聞こえませんでした」
「あれってアカリが言っていた神様?」
「そうなるね」
よかった。一応気をつけていたけどユラムの名前を出していないみたいだ。色々と情報が出すぎたせいで混乱しているけど、そのうちしっかりと整理できるだろう。そしてユキからの質問に答える。そういえば何気にユラムの声を聞く機会なんてないんだよね。だから突然聞こえてきた声に動揺が隠せないのだろう。
「やっぱりお兄ちゃんは神様の使いだったんだね」
「あ、ははは」
これである意味僕の能力がユラムと話すものだってことを間接的に証明することができたってところなのかな。サラちゃんからの敬意の視線を受けながらそう思う。
「ねえ、私の村が襲われるのっていつまで?」
「え?」
「ヒヨリ? ヒヨリがそこまで気に病む必要なんてないわよ! さっきの村人も感じ悪いし」
「うん、わかってる。でも、私の原因なのは間違いないし」
ヒヨリは強く言い切るように僕たちに宣言する。まあ今まで一緒に旅をしていてヒヨリがかなり責任感の強い人間であることはわかっているわけだし、そうなるのも不自然じゃない、のかな。ただ、ユキが言うようにあの村人の態度を見て、ヒヨリがそこまで気にする必要があるのかっていう意見もわからなくもない。もう、自由になっていいと思うのに。
『クラスメートを気にするあんたがそれを言う? 囚われてるのはあなたも同じでしょ?』
「……」
ユラムからの言葉に何も言えない。なんていうか綺麗にブーメランで返された感じだ。クラスメートたちを殺してでも止めることができない僕に何もいう資格がない。
『ま、ヒヨリに教えてあげて、そこの森の中に冥界からの使いがいて、そいつをなんとかすれば終わるって』
僕はユラムに言われたことを全部ヒヨリに教えた。なんとなくだけど、ユラムはこの先の展開がある程度読めているのだろう。だから、こうして援助をしているそんな気がする。
『あんたのその謎の信頼のなさってなんなのかしらね』
だって明らかに怪しいし。ユラムがなんでもかんでも教えてくれる時って大抵ろくなことにならないし。そしてヒヨリは僕の言葉を聞いて、
「わかったわ」
「そこに行くんだよね? 案内はいる?」
「私でも可能ですよ……止めることはできませんが、ついていくことはできます」
「アカリ……カナデ、ありがとう」
「二人だけじゃないわ。私たちも当然一緒よ」
「ユキもありがとう」
ヒヨリは口々にみんなにお礼を言う。さてと、それじゃあどうせ今日はもう動くことができないし、明日に備えて眠ることにしようか。
「アカリとルナは疲れてるでしょ? 最初は私とヒヨリで見張りをするから」
「……わかったよ」
疲れたという意味ではヒヨリも同じなのだけど、ここでユキが提案したというのはつまり、二人っきりで少しだけ話しておきたいということなのだろうな。ヒヨリは言っていないけど両親が死んで村の人たちから疎まれて精神的にかなりきつかっただろう。それが今は、笑顔を浮かべるまでになっている。それはきっと、ユキと出会ったからに他ならないのだろうな。
ユキの言葉に甘えて僕は眠ることにした。明日はまた忙しくなるのだろうしね。ただ、運がいいことに夜の間に襲われるようなことにはならなかった。そして次の日に、
「おはようございます。ご主人様」
「おはよう、ルナ」
ルナに起こされて、僕は目を覚ました。あたりを見渡したらみんなもう起きているみたいだ。どうやら僕が一番遅かったみたいだ。
「アカリ全然起きなかったんだけど」
「正直あんなに能力を使うなんて思わなかったんだよ」
ユキの憎まれ口にたいしてこちらもちょっと言い訳じみたことを言う。まあ実際あんな使い方ができるだなんて知らなかったんだけどね。もしかして他の能力も僕の発想力があればもっとたくさんの使い方ができるのだろうか。
『ま、それはボチボチね』
「さてと、アカリが朝を食べたら出発しましょうか」
「そうだね」
そして僕たちは冥界の使いがいるというところに向かって進み始めた。




