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日々を繰り返す少女の憂鬱3

ブクマありがとうございます。

これからも頑張ります。


「この世界の人間じゃない!? アカリが?」

「話してなかったね」


 夕飯の時に、みんなで火を囲みながら、カナデ、ヒヨリ、サラちゃんの三人に僕が今まで話していなかったことを伝えている。神妙な感じで語り始めた僕に対してルナとユキは感付いたようだけど特に止めようとしなかった。僕がこれを機にヒヨリの過去を探ろうとしているとでも思ったのだろうか。


「そういえば……出会った当初ちょっと不思議な感じがしましたね」

「あー確かに常識を知らなすぎた気はしたんだよね」


 カナデとヒヨリがそれぞれ僕と出会った当初のことを思い出しながら感想を言う。そしてサラちゃんと言えば少し不思議そうにしていたけど、ユキやルナが特に動揺していないのを見てさらに不思議そうに尋ねていた。


「ユキさんとルナさんは知っていたのですか?」

「え?」

「はい、以前ご主人様に確認したところ教えていただきました」

「まあ、気になっていたからね」

「教えてくれてもよかったじゃないですか」


 二人が知っていたけれど自分は知らなかった。その事実が少しだけ釈然としなかったようでカナデはちょっと不機嫌そうに僕に向かって責めるように絡んでくる。


「普通なら、信じられないことですし、ご主人様の判断は妥当だと思われます」

「ま、私たちは知識として知っていたから確認したってところなのよね」

「それは、そうですけど」


 ユキたちがフォローしてくれているが、それでもカナデは釈然としていない。まあ自分だけ知られていない隠し事があったとしたら気分が良いとは言えないもんね。ね? ユラム。


『あら? 私に隠し事なんてないわよ。人間ごときが知る必要のない知識だけよ』


 はい、そうですね。できれば7つ目の宝玉のありかとかも教えておいてもらえたら嬉しかったのだけどね。でも今は会話に集中しよう。


「いつか話さないといけないと思っていたんだけどなかなかタイミングがなくて」

「それで私の過去について話す流れになったから伝えたってこと?」

「そうだね。まあ、無理して話す必要なんてないんだけどね」


 ヒヨリからの呆れたような物言いに僕は正直に答える。ここで隠し事なんてしたくないからね。それにもう、何もないし。


「えっと、もしかして、私たちの里を襲った人たちもお兄ちゃんと同じ」

「うん、この世界とは異なる世界の住民だよ」


 サラちゃんが思い出したかのように発言する。そう、橘たちは僕と同じ地球からやってきた人間だ。


「でも、不思議ですね……アカリさんは私を助けてくれたのにその、橘さん? は私を利用しようとしていただなんて」

「神崎って人たちもそこまで嫌な感じしなかったわね」

「ああ、どこ(・・)で召喚されたかっていうのがかなり問題なのだろうね」

「どういうことでしょうか?」


 ルナだけでなく……みんな不思議そうにしているので僕は僕たちをこの世界に喚んだのは複数いることを伝える。僕のいる王宮グループ、それから小沼山たち魔王の候補として喚ばれたグループ、最後に橘たち邪心教に喚ばれたグループ。


 言いながら僕は、少しだけ気になったことがある。橘も小沼山も、みんなこの世界の人間に対して殺すことに躊躇いがない。いくら召喚されたところがところとはいえ、あんな簡単に人殺しができるようになるのだろうか。僕だって一度山賊を殺したけどそれも偶然が生んだ産物だったし。それ以外では未だに生き物でさえ、殺していないんだよね。


『そこは気にしたらダメよ……って言えたらいいのだけどあなたの目的上気にする内容よね。でも覚悟しておいて、いかなる事情があったとしても人を殺しているのは彼らなのよ』


 わかってるよ。はっきり言って、エルフの里の前に橘を捕えることはできた。ついでに言えば今までだって僕は何度もクラスメートを見逃している。そのせいで何人もの人が殺されているということになる。


「アカリ? どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」


 ユキが心配そうに聞いてきたけど僕はごまかす。これは、さすがにユキたちには関係のないことだ。部屋に巻き込むようなことはしなくてもいい。これは、僕は背負うべき罪だ。


「さて、アカリが話したけど……私のも話したほうがいい?」

「無理する必要はないわ……アカリが今話したのはあくまでもアカリなりの誠意のつもりよ」

「全部言わなくてもいいって」


 全部悟られているのなかなかに恥ずかしいのだけど。僕が何も話さないのにヒヨリには話せっていうのはさすがに横暴が過ぎるからね。僕としての精一杯の誠意だ。僕たちがしばらくヒヨリを見つめていると、ヒヨリは観念したかのようにため息をついた。


「わかったわよ。話すわ。私も……そろそろ向き合わないといけないし、それに今はアカリがいるのなら聞くことができることもあるし」

『良いわ。特別大サービスで教えてあげる』

「おい、何を教えるって?」

『先に話を聞きなさい』

「ヒヨリ、どういうことだ?」

「神様は教えてくれるのよね?」

「う、うん」


 何のことか全くわからないのだけど、ユラムとそれからヒヨリがわかっているのならそれでいいのかな? 僕がうなづいたのことを見て、ヒヨリは話し始める。


「私の能力のことは知っているわよね」

「ごめんなさい……私知らないです」

「そっか、サラちゃんと……それからルナに話していなかったわよね。私の能力は『1日をやり直せる』能力なの」

「すごい」

「特殊系の能力者だったのですね」


 ヒヨリの告白に驚きをあらわにしている。というか……二人とも僕の告白よりも驚いているように見えるのはちょっと不思議でならない。そしてサラちゃんは少し興奮したようにヒヨリに言っている。


「だったら、最強じゃないですか。気に入らないことがあったら全部やり直せるじゃないですか」

「ええ、私もそう思っていたわ。でも、知らなかったの」

「何が?」

「この能力のデメリットよ。アカリは少し気がついているみたいだけど……」

「うん、誰かの死の未来を回避したら、別の誰かが死んでしまうって聞いているよ」

「……」


 僕が話している内容を聞いてサラちゃんが絶句している。今まででも少し話したことがあったし他の人はそこまでって感じだ。


「これからみんなに聞いて欲しいのは、私が初めて能力を使ったときのこと、そして、今も後悔している出来事があるのよ」


 そして、ヒヨリは僕たちに話し始めた。……正確には話し始めようとした。


『ちょうど良いわ。ヒヨリが望むのなら、みんなにその映像を見せることができるわよ』

「ん?」

「アカリ?」

『ヒヨリに「純潔」を使いなさい』

「えっと、ヒヨリ、『純潔』を使っても良い? どうやらそれで記憶を見せることができるみたいなんだけど……」

「あーー、その方が良いわね。言葉だけじゃ伝わらないこともあるし、お願い」

「了解。みんな準備はいいね? 『純潔』」


 僕はヒヨリに対して、そしてここにいるみんなに対して能力を発動させる。すると、僕の頭の中に一つのイメージ映像が流れ込んできた。さすがにこの流れならどんな映像なのかなんてわかりきっている。


「それじゃあ、今度こそ話すわね。私が過去に犯してしまった大きな大きな罪のことを」

ブクマ、評価していただけるととても嬉しいです。

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