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日々を繰り返す少女の憂鬱2

ブクマありがとうございます

また、前の話で30万字を超えていました。また次の目標に向けて頑張っていこうと思います。


『やばくなったら伝えるけど基本的には自分で考えてね』

「了解」


 全方位死角なしの最強になれるけど、それじゃああんまり意味がないからユラムの援護がない方が僕がしっかりと成長をすることができる。複数の敵と相対する時にどんな風に動いたらいいとかね。


「後ろに……二匹と」


 横から棒が振り抜かれて向かってくる。僕は今避けるためにしゃがんでいるから思うよう動けない。素早く周囲を見渡してどの方向に転がれば敵がいないのかを把握する。今の状態だと左の方向にいけばいいな。そのまま右足に力を込めて地面を転がっていく。


「いたっ」


 ここって普通の地面だった。てか普通の地面って何? とにかく転がったのはいいけれど、状態がかなり悪くて全身が痛い。おまけにちょっと砂とかが顔に当たって気持ちが悪い。


『なにしてるの?』


 そんなこと言われても。すぐに立ち上がると目の前に今にも攻撃してきそうなスケルトンの姿が見える。慌てて杖を構えて受け止める。衝撃が来るけれどそれで態勢を崩さないように気をつける。しかし、同時に攻撃してきたのだろうが、横からも攻撃されているのを見逃してしまって、一撃横腹に受けてしまう。


「くそっ」


 相手の動きがそこまで早くないのが救いだな。神杖を振り回して攻撃してきたスケルトンに一撃入れ返す。またしても小気味良い音が響いていく。骨ってこんなに硬いっけ? カルシウム成分たっぷりだな。


「ご主人様! すぐに離れてください」

「え? あー『突風』」


 ルナから警告の言葉が聞こえて来る。離れろって言われたから全力で風を吹かせて僕自身を吹き飛ばす。……ん? 粉塵爆発って風が強すぎたら失敗するんだっけ?


「その程度なら大丈夫です」


 僕が離れた瞬間にスケルトンの群れを覆うように大地がめりあがって、そのまま釜みたいな感じになる。


『これ、上だけ空いているのね』

「え?」


 次の瞬間に頭上から雷が落ちる。そしてなにやらまた音が聞こえてすぐになにも聞こえなくなった。えっと……これ、一体どういうこと?


『今、上の隙間が閉められたわ。そして中ではさっきの雷のおかげでちょっとだけ燃えているわ』


 えっと、燃えているならむしろ空気がいるんじゃないのか? 酸素が必要だったと思うけど。


『あら、アカリは知らないの?』

「ん?」


 ルナは何を狙っているんだ? 疑問に思いながらもルナの方に近づいていく。


「ルナ、どうする」

「今です」

「?」


 今ですって言われても何が今なんだろうな。僕がそう思ったら、またちょっとだけ音がして……そして、土の釜が爆発した。


『バックドラフト現象……密室空間で物を燃やした時にその空間の酸素が尽きてこれ以上燃えなくなった時、一気に酸素を注入されると今度は逆に爆発的に燃え盛り、爆発する。ルナが引き起こしたのはそういう現象よ』


 なんつーことしてるんだよ。確かにこれなら少ない火でもかなりの爆発を引き起こすことができるけど……改めてルナの底力に驚かされる。


「す、すげえ」

「まだです」


 風が吹いて釜を中心にして風が吹いて炎が広がらないように……いや、炎を止めるようにしている。そして少し時間が経って……炎が消えた。残っているのは完全に燃え尽きてしまったいくばくかの灰のみ。


「これ、僕が囮になる必要あった?」

「ご主人様のおかげで安全に能力を使用できました」

『……練習ができた、と思うことにしましょう』


 ユラムでも庇いきれないくらい、今回僕は何もしていないみたいだ。ルナは立場上カバーしてくれたけど僕に視線を合わせてくれないし、ルナ一人でもなんとかなったのだろう。


「も、もどろっか」

「そうですね」


 やや、気まずいけれど戻ることにするか。なんだろう、人として最悪な考えだけどルナが僕の奴隷でよかったと思ったかもしれない。だって辛くなるような言葉を言ってこないもんね……ん? どうせなら言ってくれた方がいいのか?


 そんなよくわからない思いを抱えながら僕とルナはユキたちの元へと戻っていく。とにかく、スケルトンたちを倒したってあの男の人に伝えないといけないよねってあれ?


「なんか揉めてる?」

「見たいですね……何事でしょうか?」

「お、お兄ちゃん」


 近づいた時にサラちゃんが僕の元に駆け寄って抱きついてきた。うん、なんか空気が重たいもんね。でも、なんで僕じゃなくてルナの方に抱きついているのかなー。あ、同性だからか。


『頼りないからでしょ』


 せっかくオブラートに包もうとしていたのにぶった切らないでくれよ。まあ今は何が起こっていたのか聞く方が先決だな。


「どうしたんだ?」

「あーなんだかあの人がヒヨリの故郷の人らしくてね。ヒヨリの姿を目にした瞬間急にヒヨリに食ってかかってきたの」

「どういうことですか」


 ユキの簡単な説明を聞いて当事者からさらに聞こうと男の人に聞いてみた。男の人は見る限りヒヨリの事を嫌っているみたいだけど……てか故郷の人間ならもう少し嬉しいとかそんな感情を抱かないのか?


「こいつの顔なんてみたくない……こいつは村の人間を大勢殺した疫病神だ」

「どこにいく?」

「村に戻るんだよ。疫病神が戻ってきたって知らせるためにな」


 男はそう吐き捨ててどこかに向かおうとしたので引き止めたらそう返ってきた。村に戻るっていうのなら別に止める必要は全くないな。


「そっか……その、気をつけてな」

「」


 ただまあ、それでも帰り道の安全を願うのも袖すり合うも他生の縁っていうし、そこまでおかしくないから言葉をかけたけど、スルーされてしまった。ヒヨリの仲間からの言葉を聞きたくないって感じなのかな。


「何あの人。感じ悪いわね」

「いいよ……私のせいだから」

「ヒヨリ」


 ヒヨリが悲しそうに言葉を話しだしている。そして僕たちをみて、ゆっくりと後ろを向いた。


「どこに行こうとするんだ?」

「別に? もうすぐ日もくれるし、きっとあの村にお世話になるわよね。そこで私がいたらきっとアカリたちも冷たくされる。そんなのは嫌よ」

「……」


 なるほどね。自分がいるから冷たくされる、と。僕は一つ、ため息をついてそのままヒヨリの方に近づいていく。さっきの挙動不振の態度は自分の故郷に近いということに気がついたということね。だから不安定になっていたと。


「ヒヨリ」

「何かしら?」

「今日は野宿するか」

「は?」

「ユキとルナ手頃な場所を見つけてきてもらえる? カナデとサラちゃんは少し早いけど食事の準備を」

「ちょっ」


 ヒヨリがまた何か言いかけるが、僕はそれを制する。僕の仲間たちは僕が話し始める前にすでに行動に移し始めていた。だからヒヨリがこちらに振り返った時にはもう、僕以外誰も近くにいなかった。


「どうして」

「別に一晩くらい平気だろ? そんなヤワじゃないし。そもそも最近牢屋で一晩過ごしたこともあるんだし……気にすんな」

「私」

「まあまあ、ゆっくり休みなよ。そうすれば気も少しは紛れるんじゃない?」

「聞かないの?」

「まあ、僕も隠し事があるからね」

「まだあったの?」


 ヒヨリから呆れられた声が聞こえてくるけど、ここで、きちんと話しておかないといけないな。ユキとルナにはすでに話していることだけどね。


「今日の夕飯の時に話すよ……もちろんヒヨリは別に話さなくていいからね」

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