エルフの里9
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「人間が攻めてきただと」
「はあ? ……あ、僕らは何も知りませんからね!」
キングさんたちが僕らに訝しげな視線を向けてきたけど、本当に知りませんから。いや、何も知らないというのは違うな。僕は知っている。今、エルフの里の近くにいてこの里を襲おうとしている人たちがいることを知っている。
「ご主人様」
「多分、坂上たちだね」
ルナの言葉にうなづく。そしてヒヨリの方を見る。ヒヨリは僕の視線を受けて僕の言いたいことがわかったようだった。
「わかってるわ。ユキたちの護衛は任せて」
「ああ、頼む」
「キングさん」
「ん?」
話がまとまったので僕とルナはここから出て坂上たち……まだ確定していないけどね。ともかく今襲っている人たちに対抗しようとしたら、サラちゃんに止められた。サラちゃんは僕たちを見て、辛そうにしながらもみんなに語りかける。
「お爺様のことは……許せません。ですが、人間を許せないと憎み、それで宝玉を手に入れるためにお爺様を殺したこと……ですが、お爺様はきっと、自分の命一つでみんなが救われるのならそれも許されると思います」
「何が言いたいんだ?」
サラちゃんはみんなに言い聞かせるようにゆっくりと話し始める。やっぱり祖父のことが心に引っかかっていたんだな。改めて、会うことができなかったけどそのお爺様のことを考える。復讐の怒りに身を任せ宝玉の力を使って人間たちに戦争をしかけようとしたエルフたち。それを止めるために立ちはだかった。サラちゃんは続ける。
「結論を言います。宝玉を……返してください。いえ、アカリ様に渡してください」
「え?」
「は?」
あ、初めてエルフの人たちと意見があったかもしれない。それだけサラちゃんの言葉は意外だった。なんで僕に宝玉を渡すって考えに至ったんだろう。
「今この里を襲っている人たちはともかく、襲おうとしている人間の中に私たちでは絶対に勝てない人たちがいます……ですが」
「そこの少年なら可能だと。我らとて、この宝玉があれば」
「いいえ、アカリ様でなければ本来の力を使うことができません。そして……その本来の力は私たちの想像を超えています」
「そんなことが……」
サラちゃんから告げられる言葉にエルフの人たちは誰一人として言葉がでないようだった。そして、一人、また一人と僕が持っている神杖に視線が向かっていく。
「あの杖があれば」
「あれはアカリ様の……いいえ、神様の物。そしてそれは神の使いであるアカリ様にしか使えないのです」
「サラ様の言うとおりです。ご主人様でなければ、正しく使えない……吸血鬼もエルフも、ましてや奴隷も人間も、何も区別しないご主人様だからこそ、神の能力を使うことができるのです」
「ルナ……」
サラちゃんの、そして、ルナの言葉に思わず嬉しくなる。ルナは、そういう目で僕を見ていてくれたのか。ルナの方を見れば少し照れたように視線を逸らした。
「今までのご主人様の行いを見て思ったことです」
「わかりましたか? 私とルナさん、つまりエルフと吸血鬼といった他種族からの信頼を得ています。そして、ユキさんたちのことを見ればわかるように、人間からの信頼もあります」
「だからなんだというのだ?」
「アカリ様に賭けてみませんか? この宝玉を差し出す代わりに……私たちを守ってもらうのです」
「バカな! 宝玉を差し出すなどと」
「あれは本来お爺様が持っている物。そしてそれは孫である私たちに受け継がれてしかるべき。だからそれの使い道を私たちが決めてもいいはずです」
「シンはどう思っている?」
サラちゃんの意思は固いと踏んでシンくんの方にも聞き始めた。まあシンくんはサラちゃんの兄だしこれで意見が別れたら取り消すこともできるはずだよね。
「俺は託すとしたらルナさんかなー。でも、」
「私に託されたとして、結局はご主人様に代わります。私はあくまでもご主人様の奴隷ですので」
「ねえせめて仲間って言わない?」
その一言でほんと台無しなんですけど。まあ、でも、これではっきりしたね。結局のところ、シンくんも託すべき相手が僕であるという風に認識した。だから、
「その宝玉を、僕に渡してくれますか?」
「わかった。だが、約束として君は」
「はい、この里を全力で守ります」
強くうなづく。その言葉だけは絶対に守る。エルフ側も、少しはわかってくれたようで、僕に対して宝玉を差し出してきた。
「報告します! 敵の力は強大で……次々と倒されて行っています」
「なんだと!? それで、被害状況は」
「負傷者は多数ですが死者はいません」
「そうか……」
その時だった、家の扉が開き、エルフの一人が駆け込んできた。そして今の戦況報告を行う。
『変ね……攻めてきてから被害がでるまで早すぎる。なのに、被害自体は少なすぎる』
ユラムが言っていることは確かに気になる。でも、僕は信じることにする。それが、坂上たちに残っている日本人の優しさだと信じる。
『そうだといいのだけどねぇ』
「その宝玉を渡してください」
「わかった……サラが信じたお主を信じよう」
「ありがとうございます」
そして僕は宝玉を受けとる。そして、神杖にはめ込む。これで、また、宝玉は戻ってきた。
「ルナ! 行くよっ」
「はい」
ルナに声をかけて、今度こそ、僕はこの家を飛び出す。そして僕は外の様子を確認することができた。
「きゃああああああ」
「た、助けてくれえええ」
何者かが放ったのだろう。火の手があちこちから向かってきている。そして逃げ惑うエルフの人たちの声。さらにあちこちから悲鳴が聞こえて来る。
「くそっ、あいつらはどこに!?」
『向こうよ……いや、向こうから来たわね』
「やはり俺たちの前に立ちはだかるか、湊」
「坂上……」
僕たちの前に現れたのはやはりと言うべきか、坂上。つまりは僕のクラスメートたちが、ここを襲っているということになる。
「ご主人様!」
「ルナ?」
突然、ルナが僕たちの頭上に向けて風を放った。ルナが急にそんなことをするってことは……つまり誰かが来ているってことだよな。
「ちっ勘が鋭い」
「ハヤテ……」
「そんなに殺気を撒き散らしていれば当然です」
上からハヤテが降ってきた。こいついつもいつも上から落ちてくるな。最近流行っているのか? それともこういうスカイダイビングみたいなのをやってみたかったとかそういうことなのだろうか。
「なぜ俺を哀れむように見る」
「お前が誰かわからないけど、こういうのに憧れていたんだなって」
「勝手に俺をわかったような口を聞くな」
「じゃあお前が誰か教えてくれよ」
「断る」
そんなことを言い合いながらハヤテはゆっくりと坂上の方へと近づいていく。戦闘系の能力者が二人か。でも、それだとやっぱり不思議だ。こいつらは殺しを躊躇わない。なのに、こんなにも被害が少ないのはおかしい。
「これは一体」
「お、エルフもきたみたいだね」
「キングさん? それに……七草?」
その時だった。僕とルナの後ろからキングさんが、そして向こうの奥から七草がやってきた。
「さてと、湊がここに来たってことは俺たちを止めにきたんだよね?」
「ああ、そうだ」
七草に尋ねれられるが、それはそうだ。僕は止めるために、ここにいる。
「じゃあさ、少し待っててよ」
「ん?」
そして七草は手を前に差し出した。そこには白い人の形をした紙が握られている。そしてキングさんに話しかける。
「さてと、あなたがエルフの代表者として話をします」
「な、なんの話だ」
「単純です。あなた方が持っている宝玉をこちらに渡してください。そうしなければ……どれだけのエルフが死ぬのでしょうね」
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