エルフの里6
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「大丈夫? アカリ。何があったの?」
「うん、エルフの宝玉を神杖から取り外せってさ」
「何それ」
何があったのかを説明したらヒヨリから拍子抜けしたような感想をもらった。まあ僕も何が来るのかと身構えていたらそんなものかと思ったからお互い様だよね。
「まあ、エルフたちにとっては大切なことみたいだね」
「そうなのね」
「あの、お兄ちゃんは」
「大丈夫。見た感じ、無事だったよ」
次にサラちゃんからシンくんの安否について聞かれたので無事だったことを伝える。無事にいたということを聞いたサラちゃんは少し安心したような顔をしている。そういえば、エルフの長ってあの中年のおじさんで合っているのか? さっきは勝手に断定したけどさ。
『ええ、今の長はあのおじさんエルフで合っているわよ』
今の……ね。その言葉で理解したよ。ついでにサラちゃんに聞くように促さないその理由も。おそらくだけど、すでにシンくんとサラちゃんのお祖父さんは死亡している可能性が非常に高い。もちろん生きていて監禁されているという可能性もなくはないけれど……どのみちいい状況とは絶対に思えないな。そう思っていたら、サラちゃんの方から聞いてきた。
「そういえば知っていたら、でいいのですけどお爺様のことは何か知っていますか?」
「……いや、知らないね。ごめん」
「そうですか……」
ごめん、僕は嘘をついてしまった。ここで本当のことを言わなくても後でわかる。だから先に伝えておいた方がいいのかもしれない。でも、ここまでの疲弊状況を鑑みるに、僕のエゴだけれどやめておいた方がいいと思う。
「アカリさん……ちょっといいですか?」
「ん? 何?」
「私もあるわ……多分同じ内容ね。ヒヨリ、サラちゃんをお願いね」
「ええ、わかったわ」
そんなことを思っていたらカナデとユキに話があるからと少し離れたところに連れてこられた。そしてさりげなくヒヨリがサラちゃんとの距離を最大限に広げた。まあさすがにわかるか。声もちょっと震えていた気がするし。
「それで? どうしたの?」
「その……知っていますよね?」
「……生死はわからない」
そして予想していた通りのことを聞いてくる。だから誤魔化そうとかそういう考え方は捨てて本当のことを伝えた。そして二人から僕が知らなかった情報が手に入った。
「明日私たちは処刑されるみたい……その前にあの子のお爺様と会うわ……話ができないけどね」
「つい、先日だそうです」
「そっか……」
ユキは未来を見て、そしてカナデは生き物たちから……ここは地下にあるが、全てを鉄とかで覆われているとかそんなことはなくて鉄格子の反対側は普通に土が見える。そこに生息している生き物に聞いたらしい。いわゆるミミズとか蟻とかかな。さらに言えば植物の根っこもあるからそこからでも聞くことができたみたいだ。汎用性高いな。
「さっきの言葉からして真実を伝えなかったのね」
「ああ、これ以上精神的に追い詰めるのはやめた方がいいと思ったから」
「それは正しいと思うわ。彼女には私とヒヨリで適切なタイミングで伝える……シンくんが来なかったら、の話だけど」
ユキの言っていることは正しい。女性のことは同じ女性に任せた方がいいに決まっている。ただ、シンくんのこともだけどもしかしたら何も知らされていない可能性もある。望み薄いけれど。
「それで、どうするの? 脱出しないと私たち明日で殺されちゃうわ」
「脱出は可能……ただ、二人のことが心配だ」
「策があるのね。じゃあそれは任せるわ。カナデ、二人の様子はわかるかしら」
「なんか……勧誘されています」
「え?」
カナデの話によると今、ルナは自分たちの仲間にならないかと勧誘を受けているらしい。エルフが吸血鬼を口説いているのが珍しいらしく、どんどん情報が入ってくるみたいだ。ただ、言葉を全て理解しているわけではないので、飛び飛びな情報しか入ってこないけど。
「そういえば、アカリどうするの? ルナがあっちにつきたいって言ったら」
「それがルナの決断なら尊重するよ。でも、できることなら一緒にいたいけどね」
「そう……アカリって本当奴隷に対しての扱いがおかしいわよね」
「ユキたちも同じだろ?」
「まあアカリの奴隷だしね」
「普通に友達です」
扱いがおかしい、か。それがいい意味でか悪い意味でかはまだ判断がつかないけれど、まあ日本人だから普通とは異なるっていうのはあると思う。でも、二人が特に何か思うことなくルナと接してくれているのはありがたい。できることなら、ルナには普通に過ごしてもらいたい。
「これからも、そんな感じでルナと接して欲しい」
「もちろんそのつもりよ……てかあの子優秀だし普通に欲しいもの」
「……ルナが望む以外は渡さないぞ」
「私が何を望むのですか?」
「うわあああああああ」
突然後ろから声がかかったので情けない声を上げてしまう。恐々と後ろを振り返ってみたらそこにルナがいた。いつの間にか戻ってきたらしい。そして鉄格子の向こうにはここまでルナを連れてきたであろうエルフがいた。
「お前たちに告げる。明日の朝、お前たちを処刑する」
「……それまでしっかりと見張っておけ」
そう言い残すと、連れてきた人はどこかに行ってしまった。シンくんはどうしたのだろうか。気になったのでルナの方を向いたら察してくれたのか話してくれた。サラちゃんみ気になっていたのかルナの方を向いている。……さっきの会話。一応声量に気をつけていたけど聞こえていないよね。
「シン様は別のところに監禁されています。長の直系として使いどころがある、といったところでしょうか。まだエルフの里は混乱しているようですし」
「……混乱? どういうことですか! ルナさん。やっぱり」
「……」
ルナがこちらの方を向いてくる。言っていいのか許可を求めている感じだ。ふう、でも、それは僕の役目だ。ルナに押し付けるなんてできない。
「サラちゃん、黙っていたわけじゃないんだけど」
「あなたのお爺様は……もう……」
「っっ!」
僕と、それからユキの言葉で全て察したのだろう。いや、もしかしたらなんとなく気がついていたのかもしれない。顔を両手で覆うと、そのまま泣き始めて地面に座り込んでしまった。僕はすぐに駆け寄ろうとしたけど、
「これは私とヒヨリに任せて……アカリは三人でこれからのことを決めておいて。あなたたちの能力の方が役に立つから」
「ごめん……頼む」
すぐにユキに止められた。そしてヒヨリと二人で何か話しかけている。
『少し残酷のようだけど。今の状況を打破するために、二人に任せましょう』
「わかってる……ルナ、カナデ、いいかな?」
「はい」
「もちろんです……あ、そういえば先ほどの言葉は」
「え? あ、ああ」
今聞くことなのかなと思ったけど聞かれたので僕は正直に答える。言われてみれば疑問点を残したままでいるよりはちゃんと答えておいた方がいいに決まっているしね。だから僕はさっきユキとカナデに話していたことを伝える。
「そうですか……一応言っておきますけど」
「うん」
「私がご主人様の元から離れることはない、と思います」
「そ、そう?」
「はい、ご主人様の性格は、よくわかっていますから……逆にご主人様は私を手放そうとは思わないのですか?」
「え? そんなこと思わないよ」
「なら、ずっと一緒です」
なんだか嬉しいな。ただ……いつまでも奴隷と雇い主の関係から抜け出しそうにないけどね。ここに来る前の坂上戦みたいにむこうも遠慮なく言ってくれるような関係を続けることができたならば、それが理想だろうな。
「うん、それじゃあ計画の話し合いを始めよっか」
さて、ひとまずの疑問点は全て解決したので、これからのことを話し始めるとしようか。とりあえず、駒は揃っていると信じよう。




