エルフの里3
ブクマありがとうございます。
これからも頑張ります。
「やっ……ってないね」
「フラグを言い終えるまで待ってやっても良かったのによ。クラスメートの好だ」
「それを言うくらいならもう戦うのやめにしないか?」
「嫌だね」
雷を落としたけれども坂上は特に傷ついた様子はない。いや、確か直撃したよな。人間って雷が直撃したとしても無事でいられるのか?
『あなたが少し手加減しているのよ、多分無意識だけど』
無意識に、か。確かに殺さないように考えてしまっているのかもしれない。でも、そんな考えはできる限りやめよう。さっきのユラムの言葉を信じるって決めたじゃないか。僕が全力で頑張れば誰も死なないって。
「ルナ、援護をお願い」
「かしこまりました」
「おっと……そっちから来てくれるのならありがたい」
接近しないと話にならないからね。ルナに援護を頼んで突っ込んでいく。でも、まだ相手の具体的な能力についてわかっていない。とりあえず防御優先でいこうか。
「おらよっ」
「『忠義』」
さっきよりも本気で力を込めて坂上の拳を受ける。今回は無事に受け止めることができた。受け止めるついでに相手の手の様子を確認する。坂上の手は信じられないくらい真っ黒になっていた。まるで墨汁につけていたかのように。
「その手」
「俺の心配をしてる余裕があるのか?」
「……ないね『落雷』」
「くっ」
今度はもう無意識の手加減をしない。自分ごと焼き払うつもりで雷を落とす。運がいいことにさっきの雷の攻撃を僕の全力だと勘違いしてくれていたみたいで、坂上はかなりダメージを受けたみたいだ。
「このやろっ」
予想外の攻撃で坂上はひるんだ。さらに追撃のように地面から針のように砂が突き出てくる。一応殺さないようにを守ろうとしてくれているのかそれとも単に相手の機動力を奪いたかったからなのかわからないが、足を狙ってくれたみたいだ。
「自然使い……またレアな能力を手に入れてんじゃねえか。だが、俺には効かないがな」
「なぜ貫けない……」
ルナの攻撃はしかしながら不発に終わった。坂上の体を貫くことができなかった。
「俺は油断なんてしないからな……常に体全部を変化させているからな」
「変化?」
「はっ、知らなくてもいいんだよ」
「ぐっ」
思いっきり結界ごと蹴られてしまう。そのまま勢いを防ぐことができないので飛ばされてしまう。
「ご主人様! っ!」
「お前も他人のことを見てる暇なんてないよなぁ」
「私をご主人様やそこのエルフたちと同じと思わないでください」
「……みたいだな」
坂上は僕に追撃をすることをせずにルナの方に向かった。それを読んでいたのかルナは風を起こして坂上の接近を阻害する。動きが止まっているのならチャンスだ。
「ルナ! 僕がもう少し動きを止めるから合わせて『純潔』」
「!……この程度の精神攻撃で」
「いえ、十分です」
さっきも見たけれど坂上は精神攻撃の影響をほとんど受けていないようだった。ただ、それでもさすがは神の能力というべきか、少しは手応えがあった。そして坂上が少し怯んだ隙にルナがあたりの風を一点に集約させてそのまま坂上にぶつけた。かまいたちみたいな感じだな。そして、その効果で坂上の着ていた服の一部が切り刻まれてそして素肌が明らかになった。
「なっ」
「ちっ、少し距離取るか」
坂上の腕は手と同じように真っ黒になっていた。さっきのは見間違いかと思っていたけれどそんなことは全くなかったらしい。
「それが硬化している場所、ですか」
「ああ、そうだな。ちょっと痛いデメリットってやつだ。どこが硬化しているのかバレバレだからな」
「それが、お前の能力か」
「ま、そんなところさ」
なろほどね。だから人間の腕を切ることが……できるのか? あ、でもかなり硬い石とかを使えば切ることができるしそんなものなのかな。それよりもこうして坂上の能力を知ることができたのは大きい。よく教えてくれたな。
「さて、俺の能力を教えたのは……お前たちを生かしておけないってことなんだけどいいよな?」
「くっ」
「いや、俺の質問に答えてもらおう」
「ああ?」
僕の疑問に答えるように淡々と告げる坂上。そして僕とルナの方向にゆっくりと進んでこようとしたその瞬間に、また別の声が聞こえてきた。いや、これは聞き覚えのある声だ。
「ハヤテ」
「ん? お前まだそんな格好をしているのか」
そこにいたのはハヤテだった。またハヤテの後ろに一人いるのだけどそいつはフードを被っていて顔がわから無い。そして今の坂上の言葉からしておそらくだけど坂上とハヤテは同じ組織に召喚されたとみて間違い無いだろう。そしてハヤテは今のこの状況をみて、坂上に告げる。
「坂上、悪いが俺の本名は言うなよ……さて湊。お前に聞きたいことがある」
「宝玉のありかか?」
「いや、それはどうでもいい」
「?」
坂上の次に僕の方を向いて聞いてきたので反射的に答えたけれどそれとは違うみたいだ。でも、他に聞かれるようなことは思い当たる節が無い。あ、僕たちの能力かな? 坂上の能力を聞いたのだからそっちも教えろよ的な。
「この世界にお前のクラスメートはどれだけ転移してきているんだ?」
「は?」
「お前と一緒に転移してきたやつはどれだけいる?」
「そ、それが聞きたいこと?」
しかしハヤテの口から飛び出してきた言葉は僕の予想をはるかに超えていた。なんでここでわざわざ僕のクラスメートたちのことを知りたいのだろうか。でも、特に教えたところで何も問題が無いよね。
「全員だよ」
「何?」
「全員。僕たちはみんなこの世界にきている」
「なるほどな……」
僕の言葉を聞いてハヤテは考え込むようにしている。どこで引っかかることがあったのだろうか。てか、王宮も魔王候補も邪神教も全部まとめてしまったけど別に細かい話なんてする必要は無いよね。
「なぜそんなことが知りたかったんだ?」
「別にいいだろ。それより坂上」
「なんだ?」
「帰るぞ」
「は?」
続けて語られたハヤテの言葉に坂上はかなり本気で驚いている。まあ坂上の立場になって考えてみればいきなり僕を襲うなって言われたようなことだからね。
「なんで湊を見逃す必要があるんだよ」
「こいつはもう少し泳がす。上からの通達だ。それに少し騒ぎを起こしすぎだ。もうじきここにエルフたちがやってくる」
「だが俺は」
「相手の情報を知らずに突っ込んで思わぬ苦戦、そして見苦しく我儘、滑稽だね」
「七草ぁ」
「七草も来ているのか」
「やあ、湊。久しぶり、とだけ言っておこうか」
ハヤテの後ろにいたのは七草だった。僕たち以外のクラスメートは全て敵組織にいると言われているとはいえやっぱりこう一度に何人もと会うのは少し苦しいな。
「さて、坂上、帰るよ」
「……ちっわかったよ」
「まっ」
「またね、湊。あ、そういえば市ヶ谷さんがどこにいるか知っているかい?」
「え? 多分王宮で神崎たちと一緒だと思うぞ? 今はわからないけど」
「そっか、了解」
そしてハヤテたちは踵を返すと僕たちから離れていった。いや、さすがに見逃すとかできるはずが無いんだけど。
「まっ」
「ご主人様、ここは押さえてください」
『それもそうね。もう少し自分の体のことを理科しなさいね』
「ぐっ」
ユラムに言われなくても、僕の体が限界を迎えつつあることぐらいわかっている。少し杖の能力を使い過ぎてしまったかもしれ無い。僕は結局、去っていくハヤテたちの後ろ姿を眺めることしかできなかった。
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