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邪神サイド4

視点が変わっています。ご注意ください

また、この世界での為替レートを10進数から100進数に変更しました。ご注意ください。


「それで、話ってなんだ?」

「あなたに話というよりは集合といった方が正しいと思うわ」


 そう言っている日暮を俺は睨む。話があるから会議室に来てくれ、そう言われたからやってきたというのに実態はただの集合かよ。どうせなら最初っから言って欲しいと思うが……そういう意味を込めて睨んだ。


「あなた最近顔を全く出さないじゃない。だから悪いけど騙すようなことをしたわ」

「うるせぇ」

「今回は結構大事なことだから」

「そうですよ。橘もいないと話になりません」

「麻木……お前もう体大丈夫なのかよ」

「僕は平気です。桜花と比べるとそこまで傷を負っていませんでしたから」


 俺の後ろから声が聞こえてきたので譲ればそこにいたのは麻木。苦し紛れに皮肉を飛ばしたらそんな言葉が返ってきた。ちっ、相変わらず太々しいやつだ。丁寧語なのがさらにむかつく。だが、それを口に出す必要はない。気になる言葉だってあった。


「俺がいないと話にならないってどういうことだ?」

「言葉の通りですよ」

「朝日の言う通りだな」

「朝日、それに桜花……」


 部屋の中にはすでに桜花と朝日の二人と七草さえぐさの姿があった。なるほどね。確かあいつはエルフの里を探しに行っていたはずだが、この様子だとついに掴んだのかな。


「エルフの里関連か?」

「ええ、七草くんがついに見つけたみたい」

「それで俺に調査をして欲しいと」

「どちらかといえば七草くんの護衛ね」


 俺の疑問に日暮が答える。護衛って……ああそうか。ここにいるやつでまともに戦闘系の能力を持っているのは俺だけか。どうして揃いも揃って変な能力を手に入れたんだって話だ。


「話は早いわね。今、坂上さかがみくんが向かっているのだけど彼、任務のことを忘れることが多いから。それに七草くんの能力をしっかりと使うためには護衛が必要なのはわかっているでしょう?」

「そうだけどさ」

「よろしく、橘」

「ああ」


 改めてお願いをしてくる七草に投げやりな対応を取る。こいつの能力も聞いている。また特殊な能力を手に入れたものだろ思う。だが、それよりも、坂上が向かっているというのは少し気になるな。あいつは俺たちのなかで一番行動が、残虐だからな。


「まあそれもあるのよね」

「なんの話だ」

「あなたが想像した通りのことよ」

「ちっ」


 どうやら俺が考えていたことを読まれてしまった。相変わらず人の考えを読むのに長けているな。でも、こいつも思っているぐらい坂上の行動はやばいということなのだろうか。確かにあいつは地球にいた時も世良と一緒になって佐倉のことを虐めていたしな。そういえば佐倉はこの世界にやってきているのだろうか。


「なあ、このなかで湊以外のクラスメートを見たやつはいるか?」

「神崎兄妹と市ヶ谷さん、それから久留米は見たわね」

「いえ、見たことないですね」


 やっぱりあんまり接触したわけじゃないのか。しかし逆に考えれば湊のやつはかなりたくさんのクラスメートと出会っているということになる。あいつには何か特別な能力でも備わっているのだろうか。


「橘くん? どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」


 朝日に心配されてしまったが何もなかったと嘘をつく。これは俺だけが気をつけておけばいい話だ。それから、この際だ。日暮に気になっていることを聞いておこう。


「なあ、日暮」

「なにかしら?」

「この『憤怒』……どんな能力なんだ?」


 俺は会議室にある机の上にポケットから取り出した憤怒の宝玉を乗っける。言われるがままに奪ってきたものだけど、俺はこの宝玉に秘められた能力を一切知らない。


「ああ、それはね。いわゆるカウンターの能力よ」

「カウンター?」

「ええ、自分の受けたダメージを倍にして相手に返す。そういう能力よ……だからあなたと相性はかなりいいわね」


 俺の質問に対して日暮が答えてくれる。俺の能力は肉体強化……つまり肉体に与えられるダメージにはかなり強い。その分しっかりと相手にダメージを返すことができるというわけか。


「なるほど……それにしてもいつ調べた?」

「あなたが調査をしている時にちょっとね」


 ちっ、また俺は心の中で舌打ちをする。こいつは能力が能力なゆえに一部の任務を免除されている。俺たちに定期的に変装をかけるためだ。そうすることで俺たちはかなり楽に潜入捜査などができているわけだが。


「この世界の常識を知っておいてもいいと思うのよね。もう、あんなこと(・・・・・)は起こしたくないし」

「ま、そのおかげで吹っ切れたこともある……が。その言葉には同意する」


 日暮の言葉に桜花も同調する。こいつは……だから昌栄の街で奴隷たちに躊躇なく能力を使用することができたわけだが。


「さて、暗い話題は避けましょう。それよりも明るい話題は何かないですか?」

「ねえだろ」

「あ?」


 思わず暗くなってしまった。そんな雰囲気を破るように麻木が明るい声で俺たちに質問する。しかし、それを止める声があった。今まで一切話していなかった七草だ。


「お前ら情けないよ。湊にどれだけしてやられてるんだよ」

「一応言っておくが湊と一緒にいる奴隷、かなり強いぞ」

「まあ、あれは間違いなく吸血鬼、人間よりも遥かに強い身体能力を持っているでしょうね」


 俺はその言葉を聞いて驚いたように日暮の方を見る。かなり強いやつだと思っていたが、まさか人間じゃないとは思ってもみなかった。俺の視線を受けて日暮はさらに言葉を続ける。


「橘くんの言うようにあの少女はかなり強いわ。湊くんだけじゃない。気をつけないといけないわ」

「ついでに言えばあいつ、未来のことを知っているかの口ぶりだった……気をつけなよ七草」


 俺、日暮、それから桜花の言葉を受けて七草は少しだけひるんだみたいだ。まあ誰だって一度に多方面から反撃を受けたら怯むのは当然といえば当然だが、


「へえ、でも、湊自身には戦闘能力が皆無なんだろ? なのに負けるとか」

「自信満々だな」

「まあね。お前ら少しビビりすぎなんだよ。あんな甘っちょろいやつと俺たち比べたら俺たちの方が過酷な世界を生き抜いた。少し余計なことを考えてしまっているんじゃないか?」

「まあ桜花くんなんかは少し突っ掛かり気味だけど、それでも神崎くんを前にして平静でいられる?」

「冷静に殺す」

「はいはい」


 あくまでも自信満々な態度を崩さない七草を前にして日暮は少し諦めたように笑った。まあ俺だって白園を前にして平気でいられるかはわからない。結局、その時にならないとわからないんだけどな。てか、


「これ以上グダるのなら、俺は帰る」

「まあ今後の方針は決まったからね。七草くんと橘くんでエルフの里へ向かい宝玉を手に入れる。そして私は結華ちゃんの仕事の手伝いをするから二人で続けましょう。そして桜花くんと麻木くんは残りの宝玉と……いや、そうね。他のクラスメートの捜索をしましょうか」

「はいはい」


 最後に日暮が強引にまとめた。まあ俺もそれに対して特に反対する気はない。ただ、俺の気持ちを汲んだのか他のクラスメートのことを話題に出してくれたのだけは驚いたけどね。さて、それはそうと


「七草、湊に突っ掛かるのはいいが、殺すなよ? あいつは俺たち以上に宝玉探しが上手なんだから」

もしよければブクマ、評価よろしくお願いします

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