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霊山にて相見える8

評価ありがとうございます

これからも頑張ります。


「この村に寄るのか」

「嫌味ったらしく言わないの」

「だって……」

「ありがと、サラちゃん。でも遅れた原因が僕なのは間違いないから……」


 あれから少しだけルナとユキと話をした。ひとまず僕がこの世界の住人ではないということは隠す方向という感じで落ち着いた。そして僕たちは再度山を登った。何回か霊山に住んでいるモノに襲われたりしたが全部ルナが倒してくれた。おかげさまでルナの株がかなり高まっている。それとは対照的に僕のは下がっているんだよね。特にシンくん。今も僕のわがままでこの村に寄ることになったから。


「それで……アカリ、どうするの?」

「え? うーんと」

『とりあえず村人と話をしなさい。その杖を見せればわかってくれるから』

「村人を探すよ」


 ユラムがどうすればいいのかを教えてくれる。とりあえず村人を探すのだが、霊山の麓だからなのか霧がかなり濃い。まともに進もうにもかなり視界が悪くなっている。


「視界が悪いですね」

「……そんなこともできるのか。ありがとう」


 ルナが呟くと、風が吹いてそのままあたりの霧を全て吹き飛ばした。おかげさまで村の様子をしっかりと見ることができた。自然が豊かなのか藁などで組まれた家が建っている。そしてちらほらとここに住んでいる人の姿が見える。ただ、みんな驚いたような表情をしている。やっぱり急に霧が晴れたからなのかな。


「あの、すみません」

「は、はい……ってその杖は!」


 近くにいた人に話しかけるとユラムが言っていたように僕の杖に反応した。僕の杖を見て信じられないという表情をしている。


「そ、創造神様の御杖……しかも宝玉は清く輝いている……あなたは創造神様の御遣いですか?」

「まあ、そのようなものです」

「……ようこそいらっしゃいました。そちらの方はあなた様のお連れでしょうか?」

「そうです。すみませんが今晩一夜の宿を貸していただけないでしょうか? もちろん対価は支払います」

「いえいえそんな。対価など結構です」


 とんとん拍子で話が進んでいく。てか気になるのはこの宝玉が輝いていることを気にしていたことだな。それを見て僕がユラムの使いであることを確認したよね。


『ああ、邪神教の人間……とまではいかなくともアカリ以外の人間が持つとそこまで輝きはしないわ』


 なるほどね。ハヤテだっけ? あいつが持っていた時は黒く輝いていたしシンくんから受け取った時にも僕が持った瞬間に輝き始めたしね。


「兄ちゃんって本当に神様の使いなんだな」

「信じてなかったのですか?」

「だって山を越える時情けなかったし」

「ははは」


 後ろでエルフの二人が何か言っているようだけど気にしてはいられない。さて、と。ここに来た目的をさっさと終わらせたほうがよさそうだな。ユラムと会うのに時間制限とかあったら酷だし。


「あの、もしよかったら村長様にお会いしていただくことはできますでしょうか?」

「構いませんよ……ですがさすがにこの人数では迷惑でしょうし……ルナ、行こう」

「かしこまりました」

「では、他の人は先に宿へと案内しておきますね」

「ユキ、みんなをお願い」

「ええ、わかったわ」


 そして僕は最初に話しかけた村人に言われてこの村の村長のところへと向かう。さすがに大人数になってしまったので僕とルナだけだ。ユキの方がいいのかと思ったけれど残す側にユキを置いておいた方がいいと思ったので残すことにした。うまい具合に交渉とかしておいてくれるだろうし。


「そういえば先ほどの霧払いは神の力でしょうか」

「いえ」

「はい、ご主人様の力によるものです」

「やっぱりなのですね」


 さっきの霧払いのことを聞かれたから正直に答えようとしたらそれより先にルナが答えてしまった。チラッとルナの方を向けば素知らぬ顔をしている。まあ結果的にさらに村人からの信頼を得ることができたからよかったけれどちょっと釈然としないよね。


「さて、着きました……村長様、お客様、想像神様のお使いです」

「……入りなさい」

「失礼します」


 村長の家といっても他の家と他に特に大差ない家のところにやってきた。そして声がけをすると向こうから村長らしき人の声が聞こえてきた。多分大丈夫だと思うけど僕が行くところ行くところの長ってなんか感じ悪いからな……まあたまたまだと信じよう。


「よくいらっしゃいました」

「いえ、急な訪問をお許しください」

「いえいえ構いませんとも。それでご用件は?」


 中に入ったらそこにいたのは老婆だった。僕の偏見かもだけどこういう長とかって男性のイメージだったけれどまあ最近はこういうのも女性進出が進んでいるよね。で、ご用件を聞かれたわけだけど、なんて答えるのは正解なのだろうか。


「えっと、ここに行けば神…様と話ができると聞いたのですが、何かご存知ないですか?」

「創造神様と!?」

「ほ、本当ですか!」

「え、えぇ。どこに行けばいいかわかりますか?」


 すっかり忘れていたけれどユラムと会話できるって実はかなりすごいことなんだよね。当たり前すぎるとついその恩恵を忘れてしまっているけど気をつけないといけないな。


「それでしたらこの奥にある滝の近くの洞窟ではないでしょうか? そこにはあなた様が持っているのと同じ宝玉が一つ保管されています。おそらくあそこが創造神様に最も近いところだと思われます」

「わかりました。ありがとうございます」


 僕は村長にお礼を言う。ついでに宝玉の存在を知ることもできたのも非常にありがたい。あ、そのことをちゃんと話しておいた方がいいのかもしれない。


「あの、その宝玉ですが、僕にお譲りしていただくことはできますか?」

「宝玉を……ですか。それが創造神様のお言葉でしたら結構です」

『構わないわよ』


 それ本人に直接言ってくれないかな。これ、僕が私利私欲のために持ち出そうとしたら許さないって顔をしているんだけど。ま、でもそれでも、僕は進むけどさ。


「それは大丈夫です。許可は得てますので」

「そうですか……わかりました。ではご案内を」

『私が案内するからいいわ』

「あーすみません。大丈夫です。ルナ、ユキたちと合流しておいてもらえる?」

「ですが、ご主人様を一人にするわけには……」

「あーわかった。じゃあ一緒に来てもらえる? でも、神様との会話は僕だけで行うから」

「はい」

「では、失礼します」


 そして僕は立ち上がって一礼する。そしてユラムの指示に従って……ってまあ滝とか洞窟とかそういった情報を与えられているからそこまで迷うことはないだろうけど。


「ここが、滝か」

『そしてその裏に洞窟があるわね』

「ルナ、ここで待っていてくれる?」

「かしこまりました」


 僕とルナは滝のところにたどり着いた。そして、ルナをその場に待機させて、僕は滝のところに進んでいく。安全な場所がないのでかなりずぶ濡れになってしまうけど……


「『忠義』」

『その方がいいわね……滝の勢いもすごいし』


 ユラムに言われるまでもなくあの勢いに直接突っ込むのもかなり躊躇われる。でもまあこうして結界に守られていると安心できる。そして僕は洞窟内へと足を進めた。


「あんがい普通だな」

『まあ、どこにでもある洞窟だからね』


 とんでもないことを言っているんだけど。それって村の人が聞いたら卒倒してしまうんじゃないのかな。まあとにかく僕は道を進んでいく。洞窟内には分かれ道とかなくて一本道なので迷う心配は全くない。そしてゆっくりと進んでいくにつれて洞窟内が青い光に包まれだした。そして再奥までたどり着くと、そこには青色の宝玉が祀られた簡単な祭壇があった。


『さて、と。どこにでもある洞窟だけど、ここが信仰心の厚い村であるということは事実よ……さあ、杖を祭壇に掲げてくれるかしら』

「わかったよ」


 僕は言われるがままに神杖を祭壇に掲げて、そして祈る。日本人特有の都合のいい時にだけ神様に祈るやつだ。でも、それで充分だったらしい。


『さあ、あなたを私の領域まで連れて行くわ』


 杖についている三つの宝玉とそして祀られている宝玉の合計四つの宝玉が光り輝いて、そして目がくらむまでの光に包まれた時……僕はまた、あの(・・)白い空間にいた。

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