霊山にて相見える2
「ここが中腹です。少し休みましょう」
「あ、ありがとう」
しばらく歩いていると突然開けた場所に来た。サラちゃんがすぐに教えてくれた。ここが中腹か。結構歩いたけど、これでもまだ半分とか結構きついな。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「アカリ、大丈夫」
「なんとかね」
二人とも心配してくれるのは非常にありがたいことなのだけどなんで僕を最初に見るのかな。それはそれでショックなのだけど。
『でもあんたが一番消耗しているのは事実よ』
ユラムまで! いや、ユラムが言っているからそれはきっと真実なのだろう。でも休憩をしてくれるというのなら遠慮なく休むとするか。
「ルナ、先に警護をしてもらってもいい? 途中で変わるから」
「変わってもらわなくても平気です。それよりもご主人様がしっかりと休んでください」
「私とルナ、それからシンが見回るからあんたは休んでて」
「ねえそこまで言わなくてもよくない!?」
なんか僕の立ち位置がかなり低い気がするのだけどそれって間違っていないよね。みんなのために警護をしようとして断られるってなんか悲しい。ヒヨリが続けて言う。
「また倒れられたらたまったもんじゃないでしょ? あんたが神の力を使うたびに倒れられたら後々面倒なのよ」
「今は使ってないよ」
「さっき使っていたじゃない。それにあんたがここの気質の影響を受けないのも無自覚で神がなんかしてたとしたら倒れてしまうんじゃない?」
そんな考え方もあるのか。でもまあ多分大丈夫だろう。影響を受けないのは単に神の力ってだけだろうし。ただ、それでもできることなら戦いは避けたい。
「気をつけるよ。ありがとう」
「ま、それならいいのだけど」
素直に言葉を紡いでいく。心配してくれているのは間違いないのだし、ここは素直になるのが一番だ。でも休憩もこんな話題ばっかりだと息が詰まってしまうな。なにかいい話題はないのかな。
「そういえば、シンくん、エルフの里ってどんな感じなんだ?」
「どんな、ってどんな?」
「え? いや、よく知らないからさ」
「確かに少し気になるわね。人間と同じところとか違うところとかあるのかしら」
なにか話題がないかと苦し紛れにシンくんに質問したら質問で返されて焦ってしまった。でもユキがフォロー(本人は偶々だろうけど)してくれたのでなんとかなった。
「うーん、そもそも人間の生活ってやつを知らないからなんとも言えないよ」
「あ、そっか。なんか習慣とかある? 儀式とか」
「雨乞いの儀式ならよくやってるよ」
「へえ、そうなんだ」
『ま、そもそもこの世界を生きるもの同士、違いなんてあんまりないわよ』
いわゆる日本で地域によってその土地独自の風習があるみたいな感じなのかな。そう考えればこの話題は失敗したのかもしれないな。てかシンくん僕じゃなくてユキに全部話しかけているんだけど。まあ、地球でも女の子に話しかけてしまうよね。……あれ、これってセクハラになるのだろうか。
「皆さんの故郷ってどんなところなのですか?」
「うーん、それなりに人の多い都会って感じね」
「私のところも最近は発達しています」
今度はサラちゃんから僕たちに質問してきた。それに対してユキやカナデが答える。まあこの二人の故郷って確かに栄えているもんね。
「アカリ様の故郷はどうですか? なにか特別なこととかありませんか?」
「うーん、平和かな」
「平和?」
今度は僕の方に質問が飛んできた。そういえばカナデたちにも話していなかったかもしれない。だから僕は話すことにした。もちろんこの世界とは異なる世界からってことは隠しておくけど。
「そう、信じられないかもしれないけど、僕の故郷は平和なんだ。確かに殺人事件とかはあるけど基本的に命の心配をする必要がない。そんなところなんだ」
「……」
「誰かなんか言ってほしいのだけど」
「いや、予想外だったから……」
「まさかそんな場所があるなんて思ってもみなかったから」
なんか呆れられてない? 気のせいだと思うのだけど。でも、自分で言って信じられないんだよね。そんな平和な場所から、こんな死と隣り合わせの場所に来るなんて。それに、
「でも、桜花、だっけ? アカリのこと殺そうとしていなかった?」
「うん」
だから、戸惑っている。殺されるだけならまだしも、僕を殺そうとしているのがまさか同じ故郷の人間、クラスメートだなんて信じられない。桜花だけじゃない、麻木、世良、小沼山、みんな僕のことを殺そうとしていた。なんでこんなことになってしまったのだろうか。
『……そのことなんだけど』
「あなたたちは誰ですか?」
「ルナ?」
ユラムがなにかを言いかけた。でも、それは僕に届くことはなかった。ルナが突然立ち上がって、とある方向にそんなことを呼びかけた。僕たちの他にも誰か来たのかな。
「すみません、俺たちはただこの山を越えたく……て」
「なっ」
「? アカリの知り合い」
その人たちは気さくな感じでルナに話しかけようとして、そして止まった。ルナの隣にいる僕の姿を見たからだ。そして僕もまた、固まってしまっている。彼らが、僕がいま想像していた人物たちだったから。
「世良……それに小沼山」
「湊か、久しぶり、と再会を懐かしむつもりはないな」
「お前らもこの杖が狙いだったよな」
「ああ、そうだ。渡してもらおうか」
「この方々もご主人様の同郷なのでしょうか」
「ご主人様ぁ!?」
「あ、ははは」
ルナの言葉に反応する小沼山、世良のやつはあんまり反応がないのだけど。それがちょっと不気味だな。でも僕はそんな二人にただただ苦笑いをするしかない。でも、少し気になることがあった。
「なんでこの杖を狙うんだよ。桜花たちから話聞いていないのか?」
「桜花? なんであいつらの話が出て来るんだ?」
「は?」
ちょ、待って。どういうこと? こないだハヤテ……誰か知らないからそう呼ぶしかないけど、その人が僕から奪うのは一旦保留とか言っていたと思うのだけど。こいつらは知らないのか?
「悪いけど、俺はあいつのことなんて知らない……俺たちの組織にはいないからな」
「べ、別組織」
「ま、そういうことさ。湊、お前にとって不幸な話だが、俺たちはその杖をもらう。一応聞くがそれを渡す気は?」
「あると思うか?」
「いや、ないね。世良、頼む」
「あア」
「……?」
なんだろう。いまの世良の返し方、少しだけ違和感を感じる。それよりも情報が多すぎて整理できない。ユラム! どういうことなんだ? この杖を狙っている組織が二つあるってことなのか? なんで教えてくれなかったんだよ。
『まあ、あいつ関連のところと、魔王候補のところね。それから私はちゃんと伝えてたと思うけど』
そうなのか? そんなこと聞いた覚えは……ないと言い切れないのが辛い。もしかしたら寝起きの時とかにしれっと言われていたのかもしれないし。でも、それよりも。
「ルナ、頼む、手伝ってくれ」
「かしこまりました」
「ヒヨリ、みんなを頼む」
「ええ、ていうかアカリって本当に平和なところからきたの?」
「あ? もしかしてお前話していないのか?」
「お前らには……関係ないだろ! 『純潔』」
ヒヨリから出た当たり前の質問、それに対して小沼山が余計なことを言おうとしていたので、僕はそれを打ち消すために、そして彼らと戦うために、能力を使用した。




