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エルフとの邂逅 前編

長編の前の閑話のような、長編のプロローグのような。

これから更新ペースを1日1話に変更します。混乱させてしまい、すみません。


「きゃあああああああ」

「今の声どこから!?」


 昌栄の都市での暴動からしばらくして、僕たちはまたしても旅を続けていた。そして僕たちは誰一人欠けることなく旅を続けている。ルナが加わったことで僕たちに戦闘の選択肢がかなり増えた。おかげで山賊たちに絡まれたとしても大分処理が楽になってきた。そして山道を歩いていた時に突然さっきの叫び声が聞こえてきた。


「向こうからです」

「了解! ルナはここに残ってて。ヒヨリ、行こう」

「ええ、わかったわ」

「畏まりました」


 ルナが教えてくれた方向に向かって走り始める。もし、これが囮である可能性も考えてルナをカナデたちの所に残しておく。そして僕とヒヨリの二人で悲鳴があったところに向かう。


「大丈夫か!」

「あっ……た、助けてください」


 そこに向かえば男の子一人と女の子一人を10人くらいが囲っていた。そして男の子に助けを求められた。これって、盤面どうりに受け取っても大丈夫だよね?


「ほら! さっさとその宝をよこせ。そうすれば命だけは見逃してやる」

「嫌です! これは……私たちにとって大切なものです」

「なら、死ね!」

「危ない! 『忠義』」


 囲っている男たちのうち、一人が女の子めがけて刀を振り下ろそうとした。僕が慌てて結界を張ったから切られることはなく、また結界によって振り下ろされた刀は砕けた。


「なに!?」

「あなたは」

「助けに来ました」

「もう大丈夫よ」


 急に貼られた結界を見て慌てた隙に、僕とヒヨリは子供達に近寄る。そして僕は杖を前にして囲っている男たちを威嚇する。


「その杖……それにその宝玉」

「お兄ちゃん。神の使い?」

「え? あーまあそうかな」


 僕が前に出した杖を見て周りの男たち、そして子供達は反応した。まあ、何かあればユラムが伝えてくれるだろうから間違ってい無い。そして質問に対して肯定した僕に対して二人は何か考え込んでいる。


「兄ちゃん……もし、神の使いなら、これ使える?」

「それをよこせっ」


 そして懐から一つの玉を取り出す。そしてそれは緑の色をしていた。


「それって……」

『あら、「分別」の宝玉じゃない』


 『分別』……いや、それよりもこれって僕が求めていた力の一端で間違いないだろう。それがこんな簡単に見つけることができるとは、いや、これを奪い取るとかできないけどさ。


「これを貸してやるからさ、助けてくれよ」

「別にそんなことしなくても、助けるよ……でも、ちょっと使わせてもらうけどね」


 その言葉とともに男の子は僕に向かって宝玉を差し出してくる。でも、僕は男の子の頭を撫でる。うん、なんか、弟みたいだな。ここで宝玉をもらうことを断ったら格好いいのかもしれないけど、あいにく自分のことは自分が一番分かっているからね。そして僕が受け取った瞬間、その宝玉は輝き始める。まるでユラムに反応したように。


『「分別」、簡単に言えば自然現象を自由自在に扱うことができるようになるわ。よかったわね。これでかなり戦えるようになったわ』


 なるほどね。それは、助かる。男の子からもらった宝玉を神杖にセットしながら僕は囲んでいる男達を見る。うん、これはありがたいね。地球で習った自然現象の知識があればきっと、かなり立ち回れるようになるはずだ。


「おい、それをこっちによこせ」

「悪いけど、断る」

「はっ、じゃあ力づくで奪わせてもらうよ」

「はいはい」


 男達が僕にむかって向かってくる。うん、自然現象っていったらまずはこれをしてみたいよね。


「『落雷』」

「ぎゃああああああ」

「うわっ、本当だってあつっ」


 僕の目の前にいた人たちに向かって雷が落ちた。落ちたのはいいのだけどかなり近いからその熱量で燃えてしまいそうだ。慌てて結界を張ったからなんとかなったけど、これ使いどころ要注意だな。子供達を守っていた結果の範囲を僕とヒヨリにまで広げた感じだ。それはそうと、強い光のせいで視界が眩しくて開けていられない。


「こいつ、なにをした」

「雷が落ちたんだ……くそっ、眩しくて見えない」

「まだいたんだ……『暴風』」

「うわあああああああ」

「おい、大丈夫かってうわああああああ」


 しかし雷で全ての敵を倒すことができなかったみたいなので、今度は竜巻を発生させて男達を吹き飛ばす。これ側からみたらどんな感じになっているのだろう。雷が落ちて、そして少ししたら風が吹き荒れているのが見えるんだよね。


「す、すげえ」

「これが、宝玉の本来の力……」

「ふふっ、すごいでしょ。これがアカリの力なのよ」


 僕の発動した現象を見て子供達の簡単の声が聞こえて来る。でも、申し訳ないけどちょっと飛ばしすぎたかもしれない。いや、男達も充分飛ばしているんだけどペース配分的にも。


「あれ? アカリ大丈夫?」

「ははは……」

『まあ敵は全員飛ばしたからもう大丈夫よ』


 すぐにヒヨリが僕の心配をしてくれるけど苦笑いしかできない。急に能力を使いすぎたからか頭がふらふらする。幸い体が倒れるとかそんな感じはない。そしてユラムの情報はとてもありがたい。これ以上使うとなればちょっと苦しいからね。


『もう少しなら能力を使用できるわね』


 なるほどね。てか、僕の頭でイメージした自然現象を起こすことができるってかなりすごいことだよね。これ、かなりすごい能力じゃない? いや、やっとまともに戦える能力だからそんな風に感じているわけか。


『ま、テレビだっけ? それでイメージがしっかりと刻み込まれているから正しく発動したのよ……あの子達ならせいぜい風を起こすとかが精一杯よ』


 そんな背景があったんだね。ま、でもこれがいわゆる転移したことによる知識チートと呼ばれるやつなのかな。うん、子供達の視線が眩しいね。


「すごい! 兄ちゃん俺たちよりも自由に使いこなしている……これが神様の使いなのか」

「こら! お兄ちゃん、先にお礼を言わないとダメでしょう」

「あ、ああそうだな。えっと、お兄ちゃん、ありがとう」

「私も同じ気持ちです。ありがとうございます」

「いいよ。僕が好きでしたことだから」


 それにしても、しっかりとした妹さんだな。お兄ちゃんを叱る妹って……。まあ、でもこういう素直な賛辞ってなんか少しこそばゆいな。


「あ、この宝玉、返すよ。助かった。ありがとう」

「い、いえ……あの」

「ん?」


 そしてふと、宝玉のことを思い出す。そういえばこれってこの子達のものだから僕が持っておくわけにはいかないんだよね。そう思って返そうとしたら女の子の方が何かを言いたげな顔をしている。


「えっと、その……私たちを助けてくれますか?」

「助ける?」

「どういうことなの?」


 まったく文脈が読み取れないんだけど。あーもしかしてさっきの男達からってことなのかな? みた感じかなりこの宝玉に執着しているみたいだしまた襲ってくるかもしれないな。


「アカリー」

「あ、そうだ、ちょっと待ってね。ユキーこっちだよ」

「あ、いたいた」


 僕を呼ぶ声がしたのでユキ達をここに呼ぶ。どんな話を聞くことになるのかわからないけどやっぱりユキ達も一緒に聞かないとね。

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