邪神サイド3
今回も視点が変わります
「これで、全部片付いたか?」
「もうすぐで終わりです。ありがとうございます、橘くん」
「気にすんな。上の指示だ」
俺が話しかけたのは朝日結華。俺の元クラスメートで俺と同じく邪神教に召喚された少女だ。そもそも桜花がこの街の奴隷を洗脳して暴動を起こさせたのも彼女のためだ。
「しっかし、本当に処刑するとはね」
「おかげさまで、次の駒がたくさん手に入りましたね」
朝日が手に持っている鏡。それに向かって白い塊……朝日曰く人間の魂がどんどんと入り込んでいる。出処はこの都市の頭上、ここで処刑されていった奴隷たちの魂だ。それを見ながら俺は手持ち無沙汰になったので話しかける。
「ああ、それにしても桜花たちが湊を殺そうとしていた時は焦ったな」
「緊急の通達でしたからね。それで桜花くんたちは今どこに?」
「日暮が拠点まで連れて帰ったはずだ。麻木は大丈夫だが、桜花がかなり傷を負ってしまっている」
あいつは戦闘系の能力者じゃないからどうしようもなかったのだろうな。湊もカナデもそれから話を聞いた限りではあいつと一緒にいた女のうち、茶髪のやつと金髪のやつも戦闘系じゃない。しかしあの銀髪赤目のやつ。あいつは間違いなく戦闘系の能力を持っている。それに……悔しいがこの世界に来てから一番脅威を感じた。あの時戦っていたら俺でさえ無事でいられたかわからない。宝玉を全て奪うといったがあの女がいる以上簡単ではないのかもしれない。
「まあその時はこっちだって相応の準備をするけどな」
「どうかしたのですか?」
「ああ、湊との最終決戦の話だよ」
「湊くん……できることなら殺したくないですね」
「甘いな、朝日は」
「わかっています」
諦めたように朝日は笑う。まあ、そうだよな。俺はまあ、湊を殺すことに躊躇いはないけれど、こいつは優しい。俺たちの中で一番優しいんじゃないか? こいつが一番誰かを殺すことに躊躇いを持っていたし。
「ですが、湊くんは、間違いなく私たちのクラスメートなはずです」
「俺は別にそこで躊躇しないがな」
「誰でも、ですか?」
「ああ」
「白園さんでも?」
「なんであいつなんだよ」
「だって橘くん、よく話していたじゃないですか」
「役職的に、だ」
白園……今一番殺したいクラスメートが誰かって言ったら、それは湊だけど、この世界に来て、一番に殺したかったのは白園だ。あいつは俺たちのクラスの委員長としてクラスをまとめていた。そして俺は副委員長としてあいつのサポートなどを行っていた。だが、俺は本来委員長になりたかった。だが、あいつに負けて副委員長として甘んじていたんだよ。だが、それをこいつに話すわけにはいかない。こういうことは胸の内に秘めておくべきことだから。
「確かに委員会とか一緒になると話すこと多いですよね」
「ああ、それだけだ。まあ今なら命乞いをしてきたらそれを聞くかもしれないがな」
さすがに俺だって鬼になりきれなかった部分がある。今回もそうだが、なんだかんだで桜花たちの助けに向かったのもきっとそれが原因だ。あいつらが負けるのは明らかだったから手助けなんてする必要はなかったのに。おまけに甘っちょろい湊のことだ。殺すはずがない。
「それで充分だと思いますよ。この世界は油断したら自分が死ぬ世界です」
「ああ……わかってる」
多分、俺も朝日も同じ人物を頭に描いている。俺たちがこの道を歩むことを決めた人物の姿が、だ。あの時のことを思い出すと怒りが出てくる。そして上層部にも苛立ちが起きるが、ここで反乱なんて起こしたって無駄なことはわかっている。あれは、俺たちみんなが甘かった。それを痛感させられた。
「さて、完全に終わりました。ここでの仕事はもうないはずです。どうしますか?」
「一旦帰るぞ」
朝日の用事が済んだのなら、もうここにいる必要はない。桜花を助けるためにあんな飛び降りとかするんじゃなかった。俺の能力が戦闘系のしかも肉体強化じゃなかったら間違いなく骨折れてた。そのことでストレスが溜まっているんだよ。サガハタの時見たく、誰かを殺していいわけじゃ無いし。いや、一人ぐらいなら殺してもいいか?
「何考えているのですか?」
「ストレスをどう発散しようか」
「娼婦にでも言ってきたらどうでしょうか? 男の人ってそうやって発散していると本で読みました」
「……そんな気分じゃねえよ」
「そうですか」
こいつもこいつで狂っているんだよな。普通クラスメートにそんなこと提案するか? まあ、もう誰一人としてまともなやつは残ってい無いってことなんだけどな。改めて思う。
「日本って平和だったな」
「そう……ですね」
どうしてそんなことを思ったのかわからない。いや、理由なんて明白か。湊と……そして神崎たちと、俺と同じ時期以外にやってきた、クラスメートと出会ってしまったからだ。特に湊、あいつは……なんどもなんども俺の前に現れやがる。
「しばらくは見逃すと言った以上、手を出す気は無いけど、いつから必ず殺してやる」
「……」
朝日が俺になにか言いたげだったけれど、俺はその視線を無視して歩き始める。ちっ、最近苛立つことばっかり起きるぜ。
次回より長編(予定)です




