吸血鬼の少女11
本日二話目の投稿になります
「さあ……死ね!」
桜花が叫ぶと同時に僕に向かって指を鳴らしてくる。少しだけ、風が吹いた気がしたがそれと同時に頭が少しだけクラクラする。
「くっ」
「さあ、そこに落ちている刀で自殺しろ」
「ふざけんなっ」
杖をしっかりとついて立ち上がる。今の命令した感じでわかる。こいつが洗脳の能力者だ。つまり、奴隷たちを操っていたのはこいつということになる。
「お前が、奴隷たちで襲わせていたのか、桜花!」
「な、なんで湊には効かないんだ」
「桜花、さがっていてください。僕が戦います」
「あんたの相手は私よ」
ヒヨリが麻木に向かってナイフを投げる。それに怯んだのか麻木は桜花に接近することができなかった。よし、これで分断することができた。
『精神系の能力者ならばまず勝てる』
ユラムが以前そう言っていたように精神系の能力者である桜花にはかなり分があるみたいだ。そのまま神杖を持って桜花に殴りかかる。一方でヒヨリも麻木に向かって突っ込んでいた。
「はっ」
「ちっ、麻木! あいつらの能力はなんだ」
「……わかりません」
「はあ? つーことは、特殊系か」
なぜ僕たちの能力が特殊系だとわかったのかは知らないけど、麻木の方も僕たちに有効打がないみたいだ。なら、ここで、捕まえてみせる。神杖を桜花の肩に向かって振り下ろす。向こうは武器を持っていなくて僕は持っている。だから僕の方が精神的にもかなり優位だ。
「くそっ」
「もう一発」
脇腹に向けて一撃入れることができた。そのまま追撃をいれようと振り回したが、桜花は体を捻ることで回避する。そのままこちらに向かって蹴りをしかけてくる。
「くっ」
「素手でも戦えるんだよ」
僕と同じくある程度の戦闘ができるみたいだ。杖でうまい具合に防御する。でも衝撃までも受けきることができなかったので僕と桜花の間に距離が開いてしまった。
「ご主人様、もう一歩離れてください」
「え? うん」
ルナから声がかかったのでもう一歩離れる。僕が離れたのと同時に桜花の足元の土が桜花に向かっていった。ちょっとした針山みたいになっている。桜花は避けることができずにいくつか攻撃を受けてしまった。かなり鋭いみたいでいくつか血が出ている。
「ちっ」
「桜花!」
「よそ見をしない!」
桜花の方を向いてしまった麻木はヒヨリが放った蹴りを避けることができずに吹き飛ばされてしまう。今、この状況において、こちらがかなり優位に進めている。
『相手も純粋な戦闘系の人間じゃないのが救いね』
「ルナ、殺さないで済みそうか?」
「ここまで戦力差が離れていれば可能ですが、それをするのですか?」
「ああ、あいつらは同郷の人間だからね」
もう一撃入れてしまったけどもルナに殺さないように釘をさす。なぜ殺さないのかと聞かれたけど同郷以外に理由なんてないよね。
「これで終わらせる『純潔』」
「くそっ麻木、俺の能力を発動させろ!」
「わかっていますよ」
何かしたのか? いや、考えてみれば当たり前か。『純潔』の力で桜花の幻術を弾くことができたのだからそれと同じように桜花の能力でこちらの『純潔』を防ぐことだって可能だ。
「防がれた……ぐふっ」
「アカリ!」
「はぁ……はぁ……大丈夫」
限界が来てしまったらしい。口から血を吐いてしまった。ユキが心配して近寄ろうとしたので大丈夫だと声を掛ける。それに今僕は戦っているわけだし、ユキたちも巻き込まれるわけにはいかない。
「ちっ、桜花、わるいけど、解放します」
「ああ、頼む」
「ん?」
麻木が意味深な言葉を発する。解放って能力の? まあ、それでもこちらが優位だろうし、ルナが桜花に対応してくれている間に呼吸を整えないと。
「え?」
「これで、ナイフを封じました。それにっ」
「うぐっ」
あれ? 少し目を離した瞬間にヒヨリがかなり不利になっていた。麻木の攻撃がかなり強くなっているみたいだ。そしてその力でナイフを飛ばしたみたいだ。そしてガラ空きになったヒヨリに向けて拳を振るう。
「ヒヨリ! ……『忠義』」
ヒヨリが地面に倒れてしまったので、慌ててヒヨリの周囲に結界を張る。そうすることで麻木からの追撃を完全に防ぐことができた。
「結界が……」
「げほっ、なめんな」
「いい目をしますね。仲間を殺させないその姿勢、立派です」
血を吐きながらも麻木の方をしっかりと睨みつける。ヒヨリの方を見てみれば動くことができないみたいだ。ならば僕が戦うしかない。倒れそうになる体をなんとかして立ち上がらせると麻木の方に向けて歩く。
「今度は湊ですか……丁度いい。殺してあげますよ」
「私を忘れないでください」
僕と麻木の間に風が吹く。吹いてきた方向を見てみれば、そこにはルナがいて、そして、意識を失っているのか、倒れている桜花の姿があった。かすかに動いているのをみるに、殺さないでいてくれたみたいだ。
「あなたが戦うのですか」
「ええ、私しか戦えないから」
「まっ」
「アカリは休んでおきなさい」
それでもなお、麻木に近づこうとしたら、後ろからユキに掴まれて強制的に麻木から遠ざけられる。そして僕と麻木の間にルナが入り込む。
「なぜ急に強くなったのかは知りませんが、まだ私の方が強い」
「自信満々ですねっ……!」
またしても地面が針山みたいになって麻木を襲う。さっきからとんでもなくやばい能力を発動させている気がするのだけど、本当にルナの能力は何なのだろうか。そしてそれをよく売ってくれたなあの奴隷商。
『まあ、ある程度使い慣れていれば誤魔化すことも可能だしね。それで自分を小さく見せていたのでしょう。あの子の能力ならそれが可能だし』
なるほどね。そしてルナは今度は氷の塊を生み出すと麻木に向けて飛ばしていく。そしてそれを麻木がギリギリながらも避けていく。いや、あの攻撃をよく避けることができるな。
「くそっ、お前の能力はなんなんだよ」
「教える義理はない」
絞り出すように出された質問に対してもルナは冷淡に答えていく。いや、答えていないけどさ。でも、強くなった麻木でもルナには勝てないみたいだった。もう決着がついた。誰もがそう思った時、
「……!」
「ルナ?」
ルナが突然麻木から距離をとった。どうしたのか不思議に思ったら、突然影が生まれて……
「え?」
「きゃああああ」
誰かが上から落ちてきた。土煙が激しくたったので相手を視界に収めることができない。
「お前らが苦戦しているかと思ったらやっぱり湊たちだったか」
「私たちが来て正解だったわねハヤテ」
「ハヤテ?」
聞き覚えがある名前に驚いてしまう。そして土煙が晴れた時に、ルナと麻木の間にいたのは、見たことのある男性と見たことのない女性だった。
「ハヤテ……やっぱり転移者だったのか」
「まあ、そうだな。麻木、大丈夫か?」
「すみません」
「いい、気にするな。それに、これで良かったんだ」
ハヤテは麻木のことを気にかけている。でも、こいつは誰だ? 僕の記憶にある限り、そんなやつ僕のクラスメートにいた記憶がないのだけど。でも、気になる言葉が聞こえてきた。
「良かった?」
「上からの伝令だ。湊朱莉はしばらくの間、殺害リストから外す」
「なぜですか?」
「俺たちよりも優れたレーダーを持っているからだ。あいつに宝玉を探させて最後に全てもらう」
「!」
宝玉を探すレーダー。それってつまりユラムのことか。まさか僕の能力のことが気付かれた? いや、そんなことはあり得ない。普通に考えたら僕の能力は想像することができないはずだ。
「最後にもらうって……あいつが全てを集めたら」
「それはない……」
麻木がハヤテの言葉に食ってかかるが、ハヤテはそれを受け流して、ポッケに手を突っ込み、それを麻木に見せつけた。ハヤテが持っているのは、僕の神杖に埋め込まれているのと同じような赤色の玉だった。
「それはっ」
「『憤怒』の玉だ。これがこちらにある限り、湊の杖は完成されることはない」
「な、なるほど」
そして次にハヤテはこちらに向き直る。
「さて、湊、せいぜいその命、大事にしておけよ? そして俺たちのために宝玉を集めてくれ」
「断る」
「はっ、そう言っていられるのも今のうちだぜ。麻木程度に勝てないお前が俺に勝てるとは思えないがな」
「うるせえよ」
「さて、それじゃあ帰るか。ツクヨミ」
「ええ」
「待てよ……ぐふっ」
そしてツクヨミと呼ばれた女性が指を鳴らした瞬間、僕たちがいるところ周辺に白煙がたかれる。そしてそれは全て消えた時、ハヤテたちの姿はなかった。追いすがろうとしたが、血を吐いてしまい、追うことができない。結局僕たちは、この奴隷たちの襲撃を行った者たちを一切捉えることができなかった。
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