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吸血鬼の少女7


「奴隷が解放された!?」

「それって、どういうことなの?」


 ルナからもたらされた情報に僕もユキも興奮してしまった。そして、詰め寄りかけたが朝のことを思い出してぐっとこらえる。


「え、えっと……」

「あ、ごめん。それで、詳しい話を説明してくれないかしら」

「は、はい。私も詳しい話は知らないのですが、ここから遠くの、ヒワンと呼ばれる街で大規模の奴隷解放が行われたと聞いています」

「そうなのか」


 僕が知らない街っていうことは王宮から遠いところなのかな。まあ普通に通り過ぎている可能性もあるわけだけど。でも、ルナからの情報だけだと小沼山たちだと確定したわけでもないしまた逆に小沼山たちでないこともわからないのか。ユラムに聞いても……教えてくれないだろうな。


「ちょっと不穏な感じになってきたわね」

「ああ、街から出たらカナデは殺されていた……この街で何が起きようとしているのだろうか」


 ユキと情報の整理を兼ねて話し合う。選択肢によっては死人が出ていたことを踏まえると慎重に行動した方がよさそうだ。問題は僕たちに何ができるのかってところなのだけど。


「でも、下手に動かない方がいいわ。こんだけの奴隷を買うことができるのだもの、相手の大きさを考えると何もしないという選択肢もあるわ」

「それは……そうだけどさ」


 まあ、そもそもここで何が起きるかもわからないのだしね。杞憂に終わる可能性も高いわけだし、もしかしたら気のいいお金持ちが豪遊として奴隷を買い漁った可能性も考えられるし。何かが起きても対処できるように心がけておくぐらいでいいのかもしれない。


「ま、結局は後手後手に回るだけだな」

「ご主人様はそこまでの強さを持っているのですか?」

「え? あー、まあわからない」


 改めてルナに聞かれてしまったけど、僕の実力ってどれくらいなんだ?


『え? 相性の問題だからなんとも言えないわ。精神系の能力者にならまず勝てるけど戦闘系の能力者になら……根比ね』


 なるほどね。ま、最初の状況から比べたらかなりよくなっているんじゃないか?  僕自身が強くなったというよりは杖で強制的に強くなったみたいな感じだけどね。


「そうなのですね」

「だからまあ、ルナも一緒に戦ってくれるとありがたいんだよね」

「わかりました、それがご主人様の望みならば」

「う、うん」


 やっぱり返事が固いんだよな。もう少し優しく会話をかわせるようになりたいけどそれをするためには信頼度が足りないな。


「ま、暗い話はこれくらいにして今は観光を楽しみましょ!」

「ああ、そうだな。ルナ、お前行きたいところとかあるか?」

「この街に何があるのか知らないのでありません」

「それは僕も同じだし……ま、もう少し歩こうか。ユキもそれでいい?」

「いいよ! しっかりと楽しもう!」


 雰囲気を振り払うように明るい口調でユキは声を上げる。それに対して僕が考えたプランというのは結局ないに等しいけれどそれでも笑顔で対応してくれる。こんな風に言ってくれると本当に助かるな。


『あなた……ユキが無自覚の好意を持っていることを忘れてないかしら』


 ……そ、そんなことないですよ。え? そうなの? 女子って好きな人の提案なら笑顔で返してくれるの? あ、いや、個人差はあるだろうけど僕だって自分の好きな人が僕のために提案してくれたらそれは嬉しくて大体のことでもうなづいてしまいそうだな。


「そうだ! 私ヒヨリに何か衣装をプレゼントしたいのだけどいいかしら?」

「いいけど……自分のいらないの?」

「別にいいわよ。お父様がかなり買ってきてくれていたしもう充分」

「そう……あ、それならついでにルナのもどうかな?」

「あ、そういえばそうね。ルナ! あなたどんな服が欲しいの?」

「私は今の服で問題ありません」


 とは言っても、今ルナが着ているのは白いシャツみたいなものだ。今更だけどその格好で過ごさせていたのはさすがにまずいな。うん、確かにこの格好だとすぐにルナが奴隷ですって言いふらしているようなものだからね。


「華美なものを着てもらう気はないんだよ。僕の格好みたいな」

「用はしっかりと編まれた服とかよね。うんうん私一度誰かの服を見繕ってみたかったんだ。ルナ、お願い」

「わかりました……そこまで言うのなら」


 というわけで僕たちは服屋に向かう。見つかるか少し不安だったけれどもなんとか見つけることができた。うん、都会だからそれなりに品揃えがあるな。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか」

「えっと、この子に合う服を探しているのですが」

「はい……あー銀髪ですか。かなり珍しいですね。わかりました。少々お待ちください」


 店に入ったら女の人の店員さんがいて僕たちに対応してくれる。ルナの銀髪を見て一瞬怯んだけどそれでも何事もなかったかのように店の奥に消えていった。うん、やっぱりユキの提案でそこそこ高級なお店を選んでよかったな。


「それで、ヒヨリには何を渡すの?」

「うーん、そこのイヤリングとかどうかなって。ヒヨリ全然お洒落とかしないからちょっといいかなって」

「んーでもヒヨリってどちらかといえばこっちの簪の方が似合うんじゃないかな?」

「それもそうね」


 そんなことを言い合いながらヒヨリに合いそうなものを探していく。ヒヨリの髪の毛は確か明るい茶色。それに似合う色って考えたら……


「この黄緑のとかどうだろう」

「え? この赤色じゃない?」


 おっと、まさか選んだ色が違うとはね。僕も別に色彩感覚に自信があるわけじゃないし、それにヒヨリと長くいたのはユキの方だ。そのユキが選んだ方が正しいのだろうな。


「ちなみにルナはどっちだと思う? 私とアカリで」

「……ユキ様ですね。ヒヨリ様の雰囲気的には赤が似合いそうです」

「そうよね!」


 2対1、これなら確実にユキの方が合っているのだろうな。そして、ユキよ、こちらをドヤ顔で見てこないでください。まあ、それでも美少女だから様になっているのがちょっといらってくるけどね。じゃあこれも買うとして、ちょうどいい時間に戻ってきた店員さんの持って来た服を見るとしようか。


「こういう服とかはどうでしょうか? 銀に合わせて白めの服を用意したのですが」

「あっ、ありがとうございます」

「アカリー私が見るから一つ一つルナの前に掲げて」


 ユキの指示で服を一着一着合わせていく。それを見て、ユキはこれは合うとか、もう少し特徴があった方が、とかそんなことをブツブツ言っている。あの、僕の意見は全く聞く気はないのでしょうか。


「よし、二つまで絞ったわ。アカリやルナはどっちがいい?」

『あんた知らないだろうから教えるけど、右がワンピースね』


 そ、それぐらい……知りませんでした。名前はもちろん聞いたことがあるけれど、これがワンピースなんだね。そして左の方がフリルのついた感じの服だな。うーん、そうだなぁ。


「ご主人様はどちらがお好みですか?」

「え? 僕は、こっちのワンピースの方が好きだな」

「わかりました。では、こちらでお願いします」

「それでいいの!?」


 僕の意思で決めちゃって大丈夫なのだろうか。僕の好みに合わせたくて……っていう感じじゃないし、いや、それもあるのだろうけど僕がいった方に合わせた方が無難だと思ったからだろうね。


「これでお願いします」

「う、うん」

「わかったわ。すみません、この二つをください」

「はい、かしこまりました……服はこちらでもう着られますか?」

「はい、それでお願いします」


 ルナはお店に備え付けられている試着室にいって着替えた。出てきた彼女を見て、僕は率直に思ったことを伝える。


「うん、似合っているよ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ服も買ったし、一旦宿に帰る?」


 やっぱり年頃の女子なのか、オシャレをしたいのだろう。僕の言葉を聞いて、少しだけ照れたように返してくれた。何気に初めていい感じでコミュニケーションをとることができたと思う。そんなことを思いながら店から出て時のことだった。


「え?」

「なに……この音」


 遠くで人々が叫んでいる声が聞こえてきた。これは……なにかが始まったのか!?

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