吸血鬼の少女2
しばらくの間1日2回更新をしてみようと思います
「せ、責任ですか」
「ええ、私がここで行おうとしていた商売はあなたの言葉で全てできなくなりました。その責任を取っていただきたいのですよ」
そんなことを商人に言われる。でも、さすがにちょっと横暴すぎないかな。だって僕はただあそこにいる少女が吸血鬼だと零しただけ。それを信じてどこかに言ったのはこの街の人間じゃないか。
「我々にとって吸血鬼かもしれないと疑われること自体信用をなくす行為ですからね。それに彼女はまあ銀髪赤目という吸血鬼の特徴を持っています。それにあなたの言葉を聞いて彼女は反論を一切しなかった……それもあってあなたの言葉を信じたのですよ」
『吸血鬼のプライドってやつね』
そのプライドのせいで僕がとんでもなく不利な状況に陥っているのですけど!? というか、ユラム! お前吸血鬼が迫害されていることを黙ってたな!
『あら、ごめんなさい』
まったく悪いようには思っていない声で謝られる。そんなの形だけの謝罪をされたとしてもこっちとしてはまったく嬉しくない。
「でも、吸血鬼を売ろうとしたのはあなたでしょ? なら当然、こんなリスクを考えるべきよ」
「別に売るつもりはありませんでしたよ。あくまで見世物として連れてきただけです。あとはまあ、奴隷たちの力を見せるための道具として」
ユキが間に入ってくれたが、その言葉を聞いても商人は一切顔色を変えることなく、そんなことを言っている。つまり、奴隷たちの能力を見せつけるために彼女を傷つけるということだというのか。そんな説明をする前に僕がバラしてしまったから問題になっている、と。
「さすがに詭弁が過ぎるわ。それならどうしてアカリが言った時にあなたが訂正しなかったのよ」
「ええ、しようかと思いましたがふと、思い至ったことがありましてね」
「?」
そう言って商人が僕の方を見る。いや、見られても何がないやらまったくわかっていませんからね。
「近頃同業者で私の邪魔をしているものがいると聞きましてね。もしや、あなたがその手先ではないかと」
「違います」
なんで僕がそんなことをしないといけないんだ。そもそもこの歳に来ることをかなり嫌がっていたんだし。そしてあまりの言葉にユキたちも呆然としてしまっていた。
「そうですか? では……ああ、そういうことでしたか。わかりました」
「まったくわからないのですけど」
一人で勝手に納得しないでください。そしてきちんと説明をして欲しいです。間違いなく間違っていると断定できますけどお願いします。
「もしや、あれが欲しかったのでは? それで吸血鬼だとでまかせを」
「違います」
「アカリは吸血鬼だとわかった上であの発言をしているわ」
『私が種族を間違えるなんてありえないわよ』
その言葉だけはさすがに違うとして言い切ることができる。なぜだかユキも一緒に否定してくれたけど……ああ、そっか。僕がユラムから聞いたと思ってくれているんだな。
「まあ、さすがに間違いだった時のリスクを考えればでまかせというのは考えにくいでしょう。ただ、あなたが吸血鬼のことが憎くて憎くて仕方がなくてどうしても欲しい、だからこうして人を減らして……と考えたのではないですか?」
「だから違いますって」
丁寧に順序立てて話してくれましたけどまったくの誤解です。そもそも吸血鬼のことすら知らなくてなんともなしに呟いちゃっただけです。
「え、そうなの? アカリ? あなた奴隷を買うの否定的じゃなかった?」
「吸血鬼でも嫌だよ」
ユキ……僕が吸血鬼が欲しいって本気で思っているのか? ってなんでカナデやヒヨリも僕に冷たい視線を向けてきているんだ? でもまあ確かに他の奴隷を買うのかって言われたら確かに選ぶのは吸血鬼の方だけどさ。
「まさかアカリ、あの子が美人だから欲しいとか」
「なんでそんな発想になるんだよ」
仲間からのまさかの口撃にうなだれるしかない。そしてうなだれた僕を見て、商人は笑いながら僕に告げる。
「あなたが特に悪意なくあれを吸血鬼と呼んだことはわかりました。ですが、こちらとしても商売です。奴隷を一人、金貨100枚で買っていただく、これで手を打ちましょう」
「金貨100枚!?」
そんな大金持っていないんだけど。てか奴隷の相場ってどれくらいなわけだよ。
「うーん、人によるとしか言いようがないわね。安いのなら金貨1枚程度で済むけど高いのだとまあ金貨4桁は超えるわね」
「ええ、ですのでもし金貨100の値段を超えるモノがご所望でしたら超過分は支払っていただきます」
ユキの説明を聞いてそれならこいつが売ろうとしている奴隷の中で一番高いやつを買ってやろうかと思ったけどそこはしっかりと釘をさしてきやがった。まあ買うとしたら、の話だけどね。
「どうするの? 買えなくはないし、どの道買う予定だったから私としては構わないけど」
「買えるのかよ……」
そこに一番驚いてしまう。というかユキってどれだけのお金を持っているのだろうか。いや、ユキだけじゃなくてカナデやヒヨリも。僕はこの杖を手に入れる時に全財産を投げたから0ですけど。
「では、ご購入ということで。では移動しましょうか」
そう言って商人は僕を案内しようとする。……と、ここで僕の頭に一つ考えが浮かんだ。なあ、ユラム、一つ教えてくれるとありがたいのだけど。あの吸血鬼の能力って戦闘系?
『え? あー、そうね。戦闘系といえば戦闘系になるわね』
なるほどね。少しだけその言い回しに引っかかりを覚えるけど、まあそんなこと関係ない。そして僕は今案内しようとしている商人に向き直る。
「あの、一つ聞きたいのですが」
「はい、なんでしょう」
「あの吸血鬼が欲しい、といえば売っていただけますか?」
その言葉を聞いた商人は驚いたような表情を浮かべたがすぐに笑顔になって。
「なんだ、やっぱり欲しかったのですね。わかりました……まあ、もともと買い手がつかない代物ですしサービスです。金貨100枚で売りましょう」
買い手がつかないのか。最初にヒヨリにからかわれたときにちらっと言われたけどあんなに可愛いのに。
『まあ、人間とは異なるってだけで寄り付かないわよ。それに、吸血鬼なんてちょっとでも扱いを間違えたら死ぬわよ?』
あの、ユラム? そういうことはもっと早くに教えていただけるとありがたいのですけど。そしてユキたちからはまたしても氷の視線が。
「お金出すのやめようかしら」
「お願い……それに、彼女戦闘系の能力を持っているから」
なんとかユキを納得させてお金を払ってもらう……ってここだけ切り取ったら僕がかなり最低な人間なんだけど。間違いなくあれじゃん。いわゆる紐って言われるような人種じゃん。
「まあ私が生きているから使えるお金だしいいけど……」
「言いたいことがあるなら言って」
「あの子が美人だから欲しいとか思ったわけじゃないわよね?」
「どちらかといえばあの子が吸血鬼だから欲しいってところかな」
僕の言葉はどうやら意外だったようだ。ていうか、美人だから欲しいって……僕を一体どんな目で見ているんですか。
「お待たせいたしました。ではこちらが商品と、契約書になります」
「あ、はい」
受け取った契約書には僕がこの吸血鬼の主人となることを初めてとして細かなルールとかが書いていた。基本的には僕の自由らしいけど。解放するも性奴隷にするも。そして一番最後に名前があった。
「これからよろしくね、ルナ」
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