幻影の戦い7
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これからも頑張ります
「アカリ!」
僕が女性から神杖を取り返した瞬間にユキが抱きついてきた。咄嗟のことで受け身を取ることができずに、僕は地面に押し倒されてしまう。
「アカリ……よかった」
「あはは、ありがとう、ユキ」
でも、できればどいてくれると助かるんだけど。神崎と村長が用意した女性がどうなっているのか、心配だ。僕が勝ったことは間違いないが、そうなればあの二人はまだ幻術の中にいるということになる。
「あ、ごめんなさい」
「いいよ」
ユキはすぐに気がついてどいてくれた。そして僕は立ち上がる。……なんだろう。なんとなくだけど、ユキと顔を合わせずらい。まあカナデも栞も気まずいのは変わりないのだけどね。
「な、なんで貴様が」
「僕の勝ちで、いいですよね?」
村長がつっかかってくるが、僕が勝ったのは疑いようのない事実だ。にしても、あの幻術ってなんだったんだ? やけにリアリティーの高い幻術だったけど。
『あれは自分の望む世界を見せるものよ』
……それって、要はあの幻術は僕の望みだっていうのかよ。それはそれでかなりショックなんだけど。これからユキたちにどんな顔をして会えばいいのだろうか。僕がそんなことを思っていたら幻術をかけた女性が急に倒れた。
「え?」
「ちょっ」
村長やユキたちの驚きの声が聞こえてくる。でも、僕はその理由がわかっている。神杖の……宝玉の本来の能力を使用した結果、その負荷に耐えることができずに、倒れてしまったのだろう。また、術者が倒れてしまったことで神崎たちの幻術が解かれたみたいだ。
「すぐに室内に運ぼう……栞、回復魔法を!」
「え? うん、任せて」
僕はすぐに女性のもとに駆け寄る。そして同時に栞に回復魔法を使うように呼びかける。これで回復することができればいいのだけど……。
『まあ、効果は薄いでしょうけど0というわけではないし、その子の能力的に問題ないでしょう』
それならいいのかな。栞が回復魔法をかけてくれたお陰か、顔色はそこまで悪くない。僕はそのまま彼女を抱え上げて、村長の家へと入っていく。緊急事態だし家主に許可を得る必要なんて全くないだろう。
そして、村長の家に入り、奥の寝室まで運ぶ。そしてそこに横たわらせる。栞の回復魔法は定期的にかけておいたほうがいいのだろうか。
『まあ、そのほうが早く治るでしょうけど、このままでも特に問題ないわ』
ならいっか。そのまま僕はみんなの元へと戻る。戻ったら、村長とユキが言い争っていた。
「ですから、今回はアカリが勝ちました! なので宝玉も私たちがいただきます」
「それはならぬ! というか冷静に見ればその神杖はあの少年のもの、なにか細工をして自分だけ幻術にかからないようにしたに違いない」
これは……僕がなにかイカサマをしたと疑われているということでいいのだろうか。確かにこの神杖は僕が今は持ち主だけどさ、別に持ち主の特権とかないはず。
「何が気にくわないのですか?」
僕は村長たちに近づいて、村長に聞く。てかイカサマとか言うのならそっちも同じはずなのに。幻術が効きにくい能力を持っている人間を使うとかさ。
「貴様! お前、なんの細工をした?」
「細工、とは」
「決まっておる。自分だけ幻術にかからない細工よ。自分だけかからないようにして疑われないタイミングで解いたフリをしたのだろう?」
「違いますよ……一応効きますけど、そういう能力の可能性もあるのではないですか?」
「……なら、それこそイカサマよ。自分だけ能力が効かないとか」
なるほどね。何を言っても無駄なみたいだな。僕が能力という言葉を口にした時少しだけ動揺していたけど、すぐに何事もなかったかのように僕を責め立てる。なるほど、あくまでも自分が選んだ女性の能力には触れないというのだな。でも、そんな道理なんて通るはずがない。
「そうですか……なら、あなたの主張はなんですか?」
「貴様が不正で失格、そして神崎様と私たちでもう一度再勝負を行う」
一応、相手の言い分というか主張を聞いておく。こういう時相手の主張をちゃんと聞いておいたほうがいいことが多い気がする。なので聞いてみたらなんとまあ自分にとって都合のいい言い分だろうか。
「神崎たちはちなみにこの結果に納得しているのか?」
「え? ああ、そうだな。お前の勝ちだ、湊」
「なら私ども勝ちでよろしいかな?」
「ダメに決まっているでしょう。それに僕が不正を働いたというのならあなたの用意した女性はどうなのですか?」
「彼女は普通の女性だ」
ちっ、わかっていたけどはぐらかしてくるか。これ以上言及したとしても意味ないみたいだし。僕の言葉を聞いて神崎は何かに気がついたようだった。てか、神崎が納得しているのならこれでいい気がするけどそれは僕だけなのかな。
『こういう輩には力ずくで言うことを聞かせるほうがいいわよ』
ユラムがありがたいアドバイスをしてくれる。それもそうなのかもしれないけどさ、でも力ずくって言ったとしても僕はまともに戦えないし、向こうは何かしら言い訳をして村で強い人に戦わせるに決まっている。
『それでいいじゃない。そのほうが相手に分からせられる。それに神杖はもともとあなたが持っているから使ってもいいんじゃないかしら?』
それは……そうかもしれないな。じゃあ、それを提案してみるか。僕は最終確認の意味を込めて、村長に聞く。
「どうしても譲る気はないですか?」
「当たり前だ」
「わかりました。なら、戦いではっきりつけませんか?僕と一対一で戦って、勝ったほうの意見を聞く」
「湊! それは」
「ああ、もちろんですが、この神杖は使わせてもらいます。文句は言わせませんよ? これは元々僕が持っていたものです」
僕の提案を聞いて神崎が止めよとしてきたが、それを無視して言葉を重ねていく。僕の言葉を聞いた村長は眉をひそめると、
「だが、そこには我が村の宝玉がある。その能力を使われちゃあ」
「じゃあ、これは返しますよ!」
僕は神杖の先に埋まっていた紫色の宝玉を取り出すと、村長に手渡す。今取り外すことができたのはきっとユラムが何かしてくれたからだろう。ありがとう。
『その代わり、絶対にぶちのめしなさい』
了解です。宝玉を受け取った村長は笑うと、一人の男性を呼んだ。間違いなく、この村で最強の若者だろう。
「しょうがない。付き合ってやろう。だが、いくつか条件がある。まずはこちらも武器を使用する。そして、ここに大きな円を描くから戦う場所はその範囲内。範囲の外に出たら失格。それから武器が破壊されても失格、よろしいかな?」
「大丈夫です。ああ、あと参った、と言ったらそれは負けの宣言としてよろしいですね?」
「もちろん……さて、頼むぞ」
「わかったよ、父さん」
なるほどね、その男性は村長の息子だったのね。小説とかではよくありがちだよ。そして聞いたルールは特におかしなところはない。こちらが武器を使うというのに相手は禁止というのはさすがに理不尽だしそこに異存はない。そして、僕は戦う男性に確認する。
「それでは、泣いても笑っても最後戦い、でいいですよね?」
「ああ、もちろん」
「僕が勝てばその宝玉は僕のもの、あなたが勝てばこの神杖はあなた方のもの、そしてこの戦いでの能力の使用は可もちろん、この神杖の宝玉も含まれる」
「ああ、こちらもこの宝玉を使わせてもらうし」
「わかりました」
いつの間にやら男性の手には宝玉が握られていた。まあそもそも本来の効果のときでさえ討ち破ることができたわけだし問題ない。それに、これで僕も神杖の能力を使っていいわけだ。
「それでは、戦い、始め!」
ユキの号令で……僕と男性は走り出す。……絶対にこの戦い、負けるわけにはいかない。




