神の武器
ブクマありがとうございます
「えっと……向こうに村らしき集落が見えるけどあれがスイレンの村であっているかな? 」
「多分そうね」
4人でパーティーを組んでからしばらくして僕たちはスイレンの村に…多分スイレンの村であろうところに到達した。断定できないのは理由があってこの世界には標識と呼ばれるようなものなんてないからわからないんだよね。一応ユキが地図を持っているのとカナデが動物たちに道を聞いたりしていたから迷ってはないと思う。僕の質問にユキが答える。
「とりあえず村人に聞いてみようかしら。話はそれからね」
「そうだな」
確かに誰かに聞かないとわからないもんね。そのまま村の方に近づいて誰かいないか探してみる。あ、向こうに村人らしき人がいるな。話しかけてみよう。
「あの、すみません」
「ん? 」
「この村ってスイレンで合っていますか? 」
「ああ、あっているよ」
「よかったぁ」
どうやら本当にここがスイレンの村であっているみたいだ。まあ村だからということではないだろうけど優しく教えてくれて助かったな。
「お前さんがた、旅のものかい? どうしてこんな田舎に」
「えっと、僕たちこの村に神杖があるって聞いて来たのです……が」
でも、優しいというのは僕の間違いだったかもしれない。僕が神杖という言葉を出した瞬間に、この村人から笑顔が消え去ってこちらを警戒するような顔をしてきた。あーもしかしてこれ普通に地雷踏んじゃった? そしてその村人は僕に尋ねてくる。
「なんのために神杖を欲する」
「『力』を手に入れるためです」
「……帰りな。ここに神杖はないよ」
「え……」
「ないったらないんだよ! 」
あーやってしまったかな。つい馬鹿正直答えてしまったけど失敗だったかもしれない。でも、これが僕なりの誠意だ。どうして誠意を思ったのかわからないけど。
「わかりました。ですがもう日が暮れます。せめて一晩泊めていただくことはできませんか? 」
「……いいだろう」
かなり険悪なムードになってしまったけど、ユキの機転で僕たちはこの村に泊めてもらえることになった。でも、さっきの態度からしてこの村に神杖があることは間違いない。そもそも、ユラムがここって言った時点で間違っていないんだけどね。にしてももう少し僕は自分自身の発言を考えた方がいいのかもしれない。少し焦っている気がするから気をつけよう。
『そうねぇ……まあ守り神的な役割も担っているのでしょうね。人々の希望的な』
あ、そっか。それによってこの村が栄えたのだとしたらそれを取ろうとする僕は当然この村にとって悪ということになるのだろうね。この村の平和を壊そうとしてるのだから…そっか。そこまで覚悟をする必要があるのか
『本当にご利益があるのかわからないけどね……まあ一応外敵の侵入を防いでいることは確かね』
「あら」
「どうしたの? カナデ」
「いえ、あそこの教会なんですけど」
村の中を歩いて今日の宿を探している時に、僕たちがこの村の教会のそばを通りかかった時にカナデが声を上げた。言われるがままに教会の方を見てみれば……特におかしな点はないと思う。でも、ユラムは違ったみたいだ。
『ああ、あそこに神杖があるわね』
「神杖がある教会みたいだけどどうしたのか? 」
「あそこに動物たちは近寄れないみたいです……でも、今のアカリさんの言葉で理由がわかりました」
「え? 」
動物たちが近寄れない? よくよく見てみればその他の建物には屋根とかに鳥たちが止まっていたりするのにその教会だけは一切止まっていなかった。止まりにくい感じはしないけど……もしかして神杖が守っているってそういうこと?
『そうね、「忠義」の力で結界を張っているのよ……まあ結界と言ってもこの村に害をなそうとする者を弾く程度だし範囲もあの教会だけだから大したことないわね』
結構影響あると思うんだけどな。それだと僕たちは入れないことにならないかな。あとで試してみる必要は絶対にあるんだけど、それよりも先に宿を見つけよう。それが先決だ。
「あ、あそこがいいんじゃない? 」
「ヒヨリの言う通りね。そこにしましょう」
しばらく歩いていたらヒヨリがいい場所を見つけてくれたみたいだ。そして僕たちはその宿らしきところに入る。そして部屋を取るわけだけど、一つ問題が発生した。
「これ、もしかして三部屋いるんじゃない? 」
「それもそうですね」
そう、部屋の問題だ。僕たちは4人で行動している。普通ならば2、2で別れるのが自然だろう。しかし、ここで問題なのは男女比だ。つまり、どんな風に分けようとも誰かが僕と一緒の部屋になってしまうのだ。
「え? 私アカリと一緒でも問題ないわよ」
「いやいやいや!」
ユキがとんでもないことを言い放つ。なんかこのお嬢様妙に積極的になっていませんかね。そりゃあ確かに三部屋とるよりもこっちの方が色々と都合がいいけどさ……主に料金的な面で。でも、それって問題が山ほどあると思うんだけど。男女が同じ部屋で寝るとかさ。てかこのお嬢様、これで無自覚なんだよね? 末恐ろしい。当然、ヒヨリやカナデは反対する。特にヒヨリの反対っぷりはすごい。まあ、理解しているからなんだろうな……。
「ユキあんた何言ってるの! 」
「そうですよ、ユキさん。アカリさんと同じ部屋なんて」
「ん? 私お父様と一緒に寝たこともあるし問題ないわよ」
「そういう話じゃない! 」
それは相手が家族だからいいわけで……てか、それって昔の話じゃないの? 今って確か別々だよね? だってあの部屋のベッドユキしか寝てる感じしなかったし。そんな風に言い争っていたら受付の人が痺れを切らしてしまった。
「はいはい二部屋ね」
「あ、あの……」
そして、受付の人は二部屋分の鍵だけを置いて奥の方に入って行ってしまった。色々と面倒になったのだろう。いや、これでいいのかよ。こうなったら……色々と覚悟を決めないといけないな。それに悲観するのはまだ早い。部屋の中にベットが一つだけじゃないかもしれない。二つあればそれでいいし、それに最悪僕は床で寝るとかそういう対処ができるはずだ。
「あ、アカリさん本当にユキさんと同じ部屋に泊まるんですか? 」
「もう鍵を渡されたちゃったからね…それにどんな部屋なのか行ってみなければわからないし」
カナデさんに聞かれるけど僕としては答えようがない。とにかく、今は行ってみないとわからないんだ。ヒヨリもそれに賛成してくれる。
「それもそうね……ひとまずは部屋を見てみましょう。もし三人で寝れるのならそれに越したことはないし」
そして部屋の扉を開けてみる。うん、旅人が泊まる感じのところだからそこまで広くはない。部屋の中にベットが1つ? しかし一人分というには少し大きすぎる。えっと、こういう奴ってなんていうんだっけ?
「大きいですね」
「そう? 私が寝てたのと大して変わらない気がするけど」
「ユキの家は公爵家だからね……一般のと同じと思わないで」
『これはダブルベッドというものね。一台で二人が使う用に作られているの』
ああ、それか。それからユキにはもう少し庶民の感覚というのを分かってもらわないと。でも、この状況はまずいな。恐れていた自体が起きてしまったよ。それにさらに悪いことに、ベッド以外のスペースがほとんどない。だから床で寝るという選択肢も取れそうにないし……それにこのベッドを三人で使うというのもなかなかに難しいんじゃないのかな? 三人とも小柄なのが救いだけど。
「決まりね。このベッドに私とアカリが寝ましょう」
「本当にいいの? ユキ」
「何か問題ある? 」
「もういいわ……それじゃ、これから教会に向かいましょう。ユキとカナデは先に外で待ってて」
「うん」
室内には僕とヒヨリだけが残される。ユキの決意が固いと見て、諦めたみたいだ。ただ、ここで僕だけが残されたのはきっと彼女の最後の釘差しだろう。言いたいことがわかるから先に伝えておく。
「一応言うけどユキには手を出さないから」
「当たり前でしょ? ユキに手、出したら殺すからね」
「わかってるって」
『別にいいんじゃない? これを期に童貞卒業したら』
そんな鬼畜なことできるか! 向こうが完全に好意を自覚しているのならともかく無自覚なのにそんなことするとかいくら何でもひどすぎる。この神様はなんてことを平気で言うんだよ。
『ええー面白いのに』
「それにどう考えてもお前に見られてるってことだろうが」
『あはは、バレた? 』
「アカリ、神様と会話してたの? てかなんの会話してたのよ」
「あはは……なんでもないよ」
ヒヨリに突っ込まれたけどごまかす。かなり冷たい目をしていたから何を考えていたのか察したのかな? てか、ユラム、お前女神だろうが。こんな会話しても平気なのかよ。
『私は性を超越せし者よ?』
「すみませんでした」
「アカリ? 」
「なんでもないよ……それよりも、もう下に降りないか?あんまり待たせるのも酷だし」
「それもそうね」
これ以上話していたら無駄に疲れるだけなので下に降りることを提案する。ヒヨリもあんまり待たせる気はなかったようで……言いたいことを言ったからだろうけど、賛成してくれた。僕たちはそのまま下におりてカナデとユキの二人と合流する。ユキがすぐに気がついてこちらに手を振ってくれた。こういう面でも彼女の育ちの良さがわかる。
「あ、アカリ、ヒヨリ! いくわよ」
「場所を聞いておきました。教会はあちらみたいです」
「相変わらずこういうのは得意だよね」
ここの村人は聞いても教えてくれないだろうからきっとまた生き物に聞いたんだろうな。カナデさん便利すぎる。そして僕たちは教会に向かった。するとそこには意外な出会いがあった。異世界に来て……色々な出会いがあったけど、はっきり言って、この時に一番驚いたと思う。それだけの衝撃があった。
「え? 小沼山? それに……世良まで」
「? ……湊じゃないか!! 」
教会の前に立っていた男二人。それは……王宮にで一緒に召喚されなかったクラスメートの姿だった。いや、なんでこんなところで……いや、そもそもどうしてここにいるんだよ。疑問が溢れんばからりに出てくる。




