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パーティー結成

日々を繰り返す少女のエピローグ兼次の話のプロローグ的な感じです

 

「おはようございます、アカリさん」

「ああ、カナデさん、おはよう」

「目が覚めたんですね」

「ワタルさんも」


 朝起きて、のんびりとしていたら扉が開いてカナデさんとワタルさんが入ってきた。どうやら朝食を運んでくれたらしい。ワタルさんがここにいるのが不思議だったけど公爵経由でギルドの方に連絡が行ったと考えればまあ、ありえるか。そして朝食を食べながらワタルさんの言葉を聞く。


「君たちに一応知らせておこうと思ってね。昨日限りで監視は解除された」

「本当ですか」

「ああ、よかった」


 おお、解除されたのか。まあユキが僕に救われたって言っている以上、僕たちをこれ以上罪人として処理するわけにはいかないからね。


「私はリンシャンの街に帰ろうと思っているけど君たちはどうするんだ? もし一緒に帰るというのなら責任を持って送り届けるよ」

「いえ、大丈夫です」

「そうか……カナデ様は? 」

「私は…私も大丈夫です」


 ワタルさんからそう提案されるけども、僕はその申し出を断る。とても魅力的だけど戻ってしまうのもアレだし。ワタルさんは特に気にした風もなく、飄々としている。


「そうですか。では、二人とも、ここでお別れです……短い間でしたが、ありがとうございました」

「はい、今までありがとうございました」

「それから、これ」


 これでお別れ、か。旅をする以上、出会いと別れは切っても切れない関係だよな。そんなことを思っていると、ワタルさんは部屋の中に置いてある机の方に歩いて行く。なにかやり残したことでもあったっけ? 僕とカナデさんが注目していると、そこに小さな袋を置いた。えっと……中身は何が入っているんだ?


「少ないけれど旅費の足しにしてくれ。……今までのお詫びだと思ってくれて構わない」

「……ありがとうございます」

「それじゃ」


 そしてワタルさんは出て行く。断るのはむしろ無礼に値するよね。いや、これは野暮、の方が適した言葉なのかもしれない。ところで、今、実はこの部屋でカナデさんと二人っきりなんだよね。なんだか久しぶりな気がするな。すると、カナデさんの方から話しかけてきた。


「あの……」

「ん? 」

「アカリさんはこれからどうするんですか? 」

「僕? 僕はスイレンの村に行くかな」


 これからのことを聞かれる。特に隠す必要なんてないから僕は正直に答える。そういえばカナデさんワタルさんと一緒に帰らなくて良かったのだろうか


「それでですね……私、決めました! 」

「う、うん」


 決めましたって……宣言されても僕にどうしようもないんだけど。もちろん聞くに決まっているけどさ。彼女の決めたことなら、僕は尊重したい。ただ、普通はここで予想するべきことだった。


「私、アカリさんについていきます! 」

「……え? 」

「以前言っていましたよね? 私アカリさんについていこうと思います」


 そ、そういえば言っていたね。彼女に一緒に旅に出ない? って聞いた気がするよ。最初に聞いた時には断られてしまったけどあれからずっと考えてくれていたのかな。それならそれで、僕に断るという選択肢はない。


「そう……なら、よろしくお願いします」

「あ、敬語はもうなしでいいですよ。私は性格上無理ですが、アカリさんは私のことをカナデって読んでください! 」

「え、えっと……」

「よんでくださいね! 」

「わかりました」

『よかったじゃない。仲間ができて』


 それも、そうだな。てかカナデさん……カナデもまた呼び捨てにして欲しいって言ってきたな。やっぱり女子ってそこを気にするのかな。あ、そうだ。こうして正式に仲間となった以上伝えておかないといけないことがある。僕はカナデに呼びかける。


「カナデ」

「はい」

「よろしくお願いします」


 僕の言葉に少し驚いて……そして、カナデはにっこりと笑顔で返してきた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

『これであと二人ね、部屋の外にいるから呼んだら? 』

「あーカナデ、悪いけど部屋の外にいる二人を読んできてくれないか? 」

「え? 部屋の外、ですか? 」


 疑問の声をあげるけどそれでもカナデは部屋の扉を開けてくれた。そこにはヒヨリとユキの二人の姿があった。ユラム、お前気がついていたんだな。教えてくれてありがとう。急に扉を開けられた二人は驚いた表情をしていた。まさか気づかれているとは思ってなかったみたいだ。


「え? 」

「どうしてわかったの? 」

「わあ、アカリさんスゴイですね」

「なんていうか、ね」


 カナでの感嘆の声を聞きながら二人を招き入れる。そもそもユキさんはこの家の娘だから招き入れるって表現もどこかおかしいんだけどね。まあ、とにかく部屋に呼んだところだし要件を聞こうかな。


「どうしたの? 」

「ユキから聞いたけどあんたスイレンの村に行くのね」

「ああ、そうだね」

「はぁ」


 僕の言葉にヒヨリがため息をつく。なんでそんな対応をされるのかわからなくて心苦しいのだけど。


「どうしたの? 」

「ユキが付いていきたいって言っているのよ」

「あー」


 なるほど、それは納得。ヒヨリが疲れたように言っているのもわかる。カナデと違ってユキは立派な公爵の娘だ。それがよく知りもしない男と一緒に旅に出るなんて許されるはずもないのに。おまけに僕たちの微妙な状態を知っているもんな。しかし等のユキはといえば、決意をしっかり決めているみたいだ。


「でも私決めたから」

「アカリからもなんか言ってくれよ」

『世界を見たいんだって』

「あー、いいんじゃないか」

「本当! 」

「え? まじで」


 ユキは喜び、ヒヨリは絶望的な視線を向けてくる。でも、そんなことを言われたってね。「世界を見たい」それは僕が旅をする目的と全く同じだから。それならきっと、いつか別れるだろう。僕はどの道……この世界の人間じゃない。きっと、それが大きく左右されることがくるだろう。


「じゃあ私、お父様に話してくるね!」

「あ、ああ」


 ユキは笑顔で部屋の外に出て行った。走っていく音が聞こえてきたのできっとかなりうれしいのだろう。そして、残されたヒヨリも、ため息を吐きながら、


「はぁ、ユキが行くって言うんなら私も一緒に行くわ。いいわよね? 」

「もう構わないよ」


 これで全部で4人。いい感じのパーティーができたんじゃないか? それにヒヨリがいた方がなんだか何だで役に立ちそうだし。薄々感じていたけどカナデとユキ、間違いなく常識が欠如している。……僕に言われて持ってところだろうけどね。


『にしても、戦闘能力がほんとないわねー』


 ユラム、それは言ってはいけないことだと思う。4人の能力って神様と話せる、動物の言葉が聞ける、未来が視える、1日をやり直せる。だからね、なんて特殊系能力者の集まりだろうか。まあだから戦闘力を求めてスイレンに行くんでしょ? そんなことが決まっていくなか、カナデは少しだけ不機嫌そうだった。


「アカリさんと二人だと思ってたのに」

「まあ4人の方がパーティーっぽいでしょ」

「そうですけど」

「私……もしかしてかなり面倒なパーティーに入ってない? 」


 何かを察したようで絶望的な表情になるヒヨリ。あ、うん、とんでもなく面倒なパーティーです。よくある旅先で問題が起きてもまともに解決できないからね。てか冷静に見て一番戦闘能力があるのカナデだからね……。ヒヨリが呟いたときにユキが戻ってきた。


「戻ったわ」

「ど、どうだった? 」

「うん、縁を切るって言ったら許可してくれた」

「えぇ」


 ユキ……やることがかなり大胆なんだけど。そんなこと言われたら公爵もさすがに承諾せざるを得ないよね。あの感じからして間違いなく娘のことが大好きっぽいし。同じことを思ったヒヨリがユキに反しかけている。


「ユキ……あんたほんと大胆ね」

「ヒヨリは? ユキとっていうか僕たちと一緒に行くことを伝えなくてもいいの?」

「私は……伝えるような人はいないから」

「そ、そう……」


 あー……なんか聞いてはいけない質問だったのかな? ちょっとだけ気まずい空気が流れる。でも、それを察したのかヒヨリは明るく言う。


「それで……アカリ! あんたの能力を教えてくれない? あんたは私たちの能力を知っているけど私たちはあんたの能力を知らないのは不公平でしょ」

「まあ……そうだね」

『一応言えばいま、このタイミングなら誰も聞いていないわ』

「了解」


 ヒヨリの言葉に僕は納得するしかない。それに、同じパーティーとして動いていくわけだしお互いの能力を教えておいた方が何かと都合がいいよね。そしてユラムがいい情報を教えてくれた。思わず声に出して返事をしてしまった僕を三人が不思議そうに見つめてくる。


「ん? 」

「そういえばアカリさんひとりごと多いですよね」

「独り言っていうか、神様と会話しているんだけどね」

「「「え?」」」


 ちょうどいいタイミングで聞かれたしこのまま勢いで答えるとしよっか。すると、みんな一斉に同じ言葉を口にして固まってしまった。どんなのを想像していたって言うのだろうか。僕は自分の能力がこの世界の神様と話をすることだということを伝えた。その影響で能力を隠すことができるということ、またヒヨリの能力の影響を受けることなく記憶を維持できたということを全て話した。


「「「…」」」

「信じられないか? 」

「いや、信じられないというよりも、想像の遥か上を言っていたというか」

「ただ神様と会話してたのなら私の能力を知っていても不思議じゃないですよね」

「だから時々変なことを言っていたのね」


 これは……信じていないわけじゃないけどそれでも信じるのは難しいって感じなのかな。僕もいきなり『俺、神様と会話ができるんだ』って言われたら信じないと思うし。


「でも、アカリさんが言うのならそうなのでしょう」

「え? 信じてくれるのか」

「一応信じることにするわ。私の能力の影響を受けなかった理由もまあわかるしあんたが時々鋭いことをいうのも納得できるし」

「まだ半信半疑だけど、信じないと話進まないわ……それで、次の目的地とどう関わるの? 」

「あ、ああ」


 カナデに続いて、ヒヨリ、それからユキもみんな僕を信じると口に出してくれた。これがどこまで本当のことなのかわからないけど、信じると言ってくれたことでホッとした自分がいた。ああ、そっか。それならどうして次の目的地が決まったのか話しておく必要がありそうだな。


「スイレンの村に、神杖があってそれを手に入れることができれば僕は少し戦えるようになるみたいなんだ」

「ああ、そっか。冷静に考えてみれば私もユキもカナデももちろんアカリも全員が非戦闘系の能力だもんね」

「アカリは山賊だけでもボコボコだったしね」

「相変わらず容赦ないなお前ら」


 ユラムがいなかったらほんと終わっていたからね。まあ……だから僕は求めるんだ。戦えるだけの力を。もちろん戦闘力だけじゃなくて……もっと普遍的な力も欲しいんだけどね。


「ふふっ、そうね。アカリが強くなって私たちを守ってくれるようになるために、行きましょうか」

「そうだな」


 ユキの言葉で思い至る。うん、今このパーティーって男は僕だけだもんね。はぁ、別に女の子が弱いとかそんなことは思っていないけど、それでも、僕は守ることに決めてるからね……彼女たちは、僕と最も親しい人達だから。

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