表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/120

日々を繰り返す少女10

 

「こっちです! 」


 僕とユキさんは街の中を走っている。ヒヨリが追っ手を引きつけてくれているからしばらくは来ないだろうけどそれでもいつ出会うかわからない。それに……山賊にも気を配らなければいけない。注意することが山積みだけどなんとかするしかない。しばらく走り続けていたらユキさんの方から、かなり辛そうな息づかいが聞こえてきた。


「はぁ……はぁ……」

「あ、大丈夫ですか? 」

「大丈夫よ……それに、無理に敬語じゃなくてもいいわ」

「そ、そう? 」


 別に無理していたわけじゃないけど。でも、ユキさんのほうから無礼講でいいっていうのなら遠慮しなくてもいいな。それはそれとして、ユキさんの体のことを考えずに走るのはよくなかったな。まあかなり最低な発言になるけど、ユキさんのペースに合わせていたから僕は今回は息切れが起きなかったみたいだけど。


「わかった」

「それにあなただけ敬語だと私が公爵の娘ってことがバレてしまうわよ? 金髪青目はまだ誤魔化せるけど」

「それもそうだね……にしても綺麗な髪の毛だよね」

「そう?私の自慢よ」


 本音を言えばユキさんは少し照れたように笑った。うん、ちょっと恥ずかしいけど、空気が和んだし結果的に良かったかな。


『地雷の可能性もあったから気をつけておきなさいよね』


 その可能性は全く考慮していませんでした。反省します。女性の扱いについて本当によくわからなくて情けな限りだ。ただ、彼女と話していて少しだけ気になることがあったので確認する。それに、ペースを落とす意味で話ながら歩くのも悪くない。


「なんだろう、雰囲気が違う? 」

「え? ああ、久しぶりに知らない男性と話をしているからかしら? でも、ヒヨリともこんな感じよ」

「そうなの? 」

「ええ、私が呪われたのは5歳くらいの頃なんだけど、病弱でまともに外にでれなかったのよ。おまけにお父様はあれでしょ? 友人なんてそれこそヒヨリしかいないわ」

「……」


 あの、ユラム……こういうときになんて言ったらいいんだ? 何か言わなければいけないとわかっているけどそれでも……、


『あんたそれぐらい自分で考えなさいよ』


 いやだって予想以上に重たい話が飛び出てきたからさ。藪をつついたら大蛇が出てきたんだけど!? まあ……それでも思っていることを伝えるしかないな。


「なら、これから作ればいいんじゃないか? 」

「……そうね。あなたが呪いを解いてくれるのでしょう? 」

「もちろん」


 僕の言葉を聞いたユキさんは少し悲しそうな顔をしていたけどそれでも笑ってくれた。


『あんたの女性経験のなさを鑑みてギリギリ及第点ないぐらいね』


 それ失格ということですねそうですよね。てか本当にこういう時ってどんなことを言ったらいいんだよ。そんな風にちょっと反省する。すると、ユキさんの方から提案してくれた。


「それで……私もう少し街を見て回りたいわ。案内してくれる? 」

「いいけど、僕この街に来たの昨日だからね」


 それでも拙い記憶を頼りに案内する。ユキさんは真剣に聞いてくれた。なんていうか久しぶりにできた友人との時間を大切にしているようだった。まあ僕の知識じゃ説明なんて無理だったので全部ユラムに教えてもらったけど。説明をしていたら途中で急にユキさんが笑い始めた。


「ふふっ」

「どうしたの? 」

「アカリってなんだか誰かの説明を聞いているみたいね」

「ははは」

『この子、なかなか勘が鋭いわね』


 笑うしかない。だって本当に誰かの説明をそのまま口に出しているだけだから。でも別にいいよね? 人間の知識の99%は誰かからの受け売りだってなんかで読んだ覚えがあるし。


 ユキさんは一通り笑うと……、笑ったまま、僕に言葉を投げかける。とても優しい響きで。


「さて、と。そろそろお別れね」

「え? 」


 突然、そんなことを言い出した。一瞬面食らったけど、あたりを見渡してみれば理由がわかった、もう夕暮れだ。夜は……本当の最後の時間は家族と過ごしたいということだろう。でも、それではダメだ。だって……、


「待って、まだ呪いは」

「いいの。どんな手段か知らないけどアカリが本気で私の呪いを解こうとしていたってことは伝わってきたわ。でも……」

「!」


 まだユキさんが何かを言いかけていたけど、そのとき、向こうからギルドの人たちが走ってくるのが目に入った。どうやら見つかってしまったらしい。どうする……ここで別れて次の機会を考えてもいいけど……いや、そんな消極的な考え方でどうするんだ!


「こっちだ! 」

「え? 」


 一瞬だけ迷ったけどすぐに決断する。ユキさんの手を掴んで走り出す。


「こら!待ちなさい」


 後ろでそんな声が聞こえてきたが全て無視する。幸い、ここは人通りがかなり多い。人ごみを縫っていけばそのうち見失ってくれるだろう。それに、さっきまで休憩がてら歩いていたのも功をそうした。急に走り出してもなんとかなった。


「ダメ! そっちに行ったら……」


 走り出した僕に対してユキさんも何か言っているがそれも無視。てかユキさんの手って小さいんだな。そんな状況でもないのに思わずドキドキしてしまった。ああ本当に僕は純真なんだな……ユラムにものすごく否定されたけどなんでだよ。


 適度に脇道にそれていく。そしてしばらく走っていたら……人通りの全くないところに出た。後ろを振り返ってみてももう追いかけられている感じはしなかった。どうやら撒くことに成功したみたいだ。


「なんとか、撒いたかな? ユキさん、大丈夫? 」

「えぇ……でも、少し苦しいわ」

「ここで休みましょう」


 かなり苦しそうだ。僕だってかなり呼吸が乱れている。冷静に見ればそこまで長距離を走ったわけじゃないんだけど、やっぱり運動不足だったのか。一旦落ち着けるためにも僕たちは立ち止まって休憩する。できればどこかに座らせてあげたかったがそんなところなど見当たらなかった。


『あんたが椅子になってあげたら? 』


 それなんのプレイ? 疲れている時に冗談なんて言われても何も突っ込む気力が起きないからやめてほしいです。ユラムと軽口を言い合っているとユキさんが声をあげる。


「あ」

「ん? どうかした」

「そろそろ……手を離してほしいのだけど」

「あ、すみません」


 無我夢中で走っていたから忘れていたけどそういえば手を握っていたな。慌てて離す。ん? そういえば結構無遠慮に触っちゃってたよね。これ不敬罪で殺されない?


「ふぅ、あなたとの鬼ごっこ、楽しかったわ。でももうおしまいにしましょう」

「そういえばさっき走っている時に何か言いかけてなかった? 」

「……」


 やっぱりそうだ。僕から顔を背けるようにして立っている。まあ、ここまでくればさすがに僕でもわかる。


「もうすぐ、僕が死ぬ未来(時間)になるんだね」

「そうよ……あそこで私が家に帰っていればあなたは死なずに済んだ」

『それはこの「回」の話だけどね』


 そうなれば結局ユキさんは死んでしまうことになるのでヒヨリはもう一度能力を使う。そしてまたやり直すことになる。そんなことは口が裂けても言えないけどさ……ここでユキさんを守れなかったら、また僕たちは同じことを繰り返す。何度でも……何度でも。


「悪いけど、君が死んで僕が生き残ることは望んでいないから」

「どうして? 私とあなたは出会って間もないのよ? 」


 どうして? か。いろいろあるんだけど、僕の中ではもう決まっている。簡単なことだ。


「僕の『できること』だからだ」


 ユラムのおかげではあるけれど、こうしてユキさんを助けることができるのは未来を変える力を持ったヒヨリと、そのヒヨリの能力の影響を全く受けない僕しかいない。だから(・・・)僕は動く。今度はもう、見知った人の死を、見捨てるなんてことはしない。


「え? 」

「君の死を知って…何もしないなんて選択肢を取りたくないんだ……もう、誰も見捨てたくない」

『現実問題今もたくさんの人が死んでるけどね』


 それを言ったら身も蓋もない。山賊たちだってたくさん死んでいる。今もどこかで誰かが死んでいる。|そんなことはわかっている《・・・・・・・・・・・・》。でもだからって、諦めるようなことはしなくない。ここで諦めて、自分が動いていれば助かったかもしれない命の死を聞くのは、嫌なんだ。


「そ、そうなのね」

「ま、それにユキさんを守りたいってのもあるからね」

「え? 」

「来たよ」


 何か聞きたそうな感じを出しているけどそれは無理だ。残念ながら時間切れ。僕の向いている方向をみたユキさんは顔を青ざめさせる。誰が来たのか、わかったのだろう。


「そんな……」

「よお、兄ちゃんたち……こんなところでいちゃついてくれちゃって」

「俺たちも混ざらせてくれよ」

「いや、そこの女だけでもいいんだけどよ」


 山賊たちがやってきた。僕は見たことあるからすぐにわかったけど……いや、初見でもわかるな。なんかガラ悪そうだし。人は見た目で判断してはいけないっているけど……うん、ごめんなさい。山賊たちは、僕たちを囲うように立ちふさがる。ちっユキさんの安全だけでも確保したかったな。


「私がいけばアカリには手を出さないd」

「黙ってて」

「おお! 殊勝な心がけだな。いいぜ。お前は公爵の娘だろう? それに能力も優秀。精一杯使わせてもらうぜ」

「……!」


 山賊たちは口々に酷いことを言っている。ユキさんの顔がどんどんと青ざめていく。たっく、そんな顔をするぐらいなら身代わりになんてなるなって。僕はユキさんをかばうように前に立つ。


「お? 兄ちゃんやる気か?」

「素手で俺たちと戦おうっていうのか? 」

「素手でも武器なしでも戦わないといけない時があるんだよ」


 でも、正直言えば嫌です。武器ほしいです。なんでどこかで剣を一本でも買っていなかったのだろう……あ、金がなかった。


「へぇ、格好いいな」

「その威勢がいつまで持つかな! 」


 そんな言葉とともに、山賊たちは僕めがけて襲ってきた。……勢いで言っちゃったけど、僕まともな戦闘力ないけど大丈夫か? 最悪ユキさんだけでも逃がせればいっか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ