神様との対話
『お疲れ様、アカリ』
目を閉じて、気が付いたら、僕はこの世界に最初に来た、あの白いところに立っていた。そして、目の前にはユラムの姿が。
「ユラム……」
「本当にお疲れ様。お陰様でアルムをもう一度封じ込めることができたわ」
「そっか」
ユラムからの言葉に、僕は安堵する。アルムが封じられたことで……いや、安堵なんてできないな。だって、邪神教のクラスメイトは全員死んでしまっているのだから。それが伝わったのだろう。ユラムは悲しそうに告げる。
「そうね。あの子達は全員死んでしまった。あなたは救うことができなかったと言えるわね」
「そうだよね」
「それでも、あなたはできることをやりきったわ。胸をはりなさい」
ユラムはそう言って、慰めてくれる。確かにクラスメイトは守ることができなかったけど、ユキたちを守ることはできたわけだ。僕は、よくやったと思う。それはそうと、僕は気になっていることをユラムに聞く。
「なあユラム」
「なにかしら?」
「僕は死んだのか?」
ここに来るまでの記憶が少しあやふやだけれど最後に倒れていたような記憶がある。実際、カレンさんから言われていた命の保証がない手段をとったわけだし、覚悟はしているけどさ。
「ええ、そうよ。あなたは死んだわ。私の力に耐えることはできずにね。それに、あれだけ力を使ったのだもの。無理よ」
「まあ、そうだよな」
そして返ってきた答えに僕は納得する。半信半疑だけれど、ユラムがそう言っているのなら、間違いないだろう。覚悟はしていたことだから、そこまで衝撃を受けることはない。
「悲しくないの?」
「まあ……僕の命で救うことができたのなら、安いものでしょ」
ユラムが不思議そうに聞いてくるけど僕は、言い切る。悲しみは……うん、ないな。全くない。もう少し生きていたかったとは思うけど、それでも、満足だ。信念を突き通して死ねたのだからね。ああ、橘の気持ちが少しだけわかったような気がするよ。
「まったく、少しは周りの人のことを気にしなさいよ」
「え?」
「わざとなの?……ほら」
ユラムはそう言って、小さな窓を開いてくれた。その窓から見えたのはあの広間に倒れている僕の姿と、それから僕を囲っているユキたちの姿だった。みんな、涙を流しながら僕に声をかけている。
「えっと」
「あなたが死んでみんな悲しんでいるのよ」
ユキだけじゃない。神崎たちも戻ってきて、そして、僕と七草の姿を見て悲しそうな表情をしている。
「これでも本当に後悔はない? これから、あなたは進んでいけたのでしょう?」
「まあ、そうだけど……どうしようもないでしょ?」
僕は死んだ。それは覆ようもない事実だ。ここから僕が生き返ることなんて決してないだろう。それこそ奇跡でも起きない限り。
「あなたは世界を救ってくれた。そのお礼として生き返らせることはできるわ」
「え?」
でも、僕は忘れていた。目の前の存在が、そんな奇跡を簡単に起こすことができる存在であるということを。世界の創造神、ユラム。彼女なら、可能だろう。でも、
「冥界は……生き返ったことによる埋め合わせはどうなるんだ?」
「それは私がなんとかします」
「え?」
ヒヨリの過去のことがよぎったので聞いたら、横から声が聞こえてきた。ここには僕とユラムしかいないと思っていたから驚いたけど、その方向を向いたら、そこにはエリス様の姿があった。
「え、エリス様?」
「あら、エリス来たの?」
「お姉ちゃんが心配でね」
「ん?」
お姉ちゃん? エリス様とユラムが姉妹だったの? エリス様がポツンとこぼした言葉に僕は思わず反応してしまう。それほどまでに衝撃的な内容だった。
「自分が死ぬよりもなの?」
「お姉ちゃん言ってなかったの? もしかして、アルムのことも」
「も、もしかして……」
「そ、あいつは私の弟」
「……」
さ、三姉妹だったのね。てか、アルムのやつ、自分の姉に対してあんな感情を持っていたのかよ。さすがにどうかと思うのだけどな。
「ま、それは置いておいて、エリス、大丈夫なの?」
「ええ、私としても世界を救ってくれた者への感謝はするべきだと思うから。お礼と考えれば少しくらいいじれるわ……まあ、それでも短命なのは避けられないけど」
「そうね。かつて私を降ろしたことがあるし、長生きは望めないわ」
「そ、そうなんだ」
僕としては2柱の神の会話に加わることすらできない。それに衝撃的なことが多すぎて、自分の命が短いかもしれないという事実は正直どうでもよくなってきた。そもそも僕は一度死んでいるわけだし、今更どうこう思うことはない。
「それで、アカリはどうしたいの? 生き返りたい?」
そしてユラムに改めて聞かれる。そうだな……ふと、みんなの様子を見る。この世界に来て、みんなと出会って、僕は変わることができた。その時間はとても楽しいもので……それに、そうだな。
「まだ、救っていない人がいる」
「?」
世良に小沼山、あいつらの存在がいる。僕がしたいこと、それは、みんなを救うこと。あいつらがいるのに、志半ばで終わるのはなんか気持ち悪いからね。
「でも、やっぱり、もう少しみんなと一緒にいたいかな」
後悔はない。悔いはない。それでも、少しだけ、もしも、願いが叶うのだとしたら、カナデ、ユキ、ヒヨリ、ルナ、そしてサラちゃんともう少し旅をしたかった。なんだかんだで彼女たちと落ち着いた旅ができていない気がするから。
「そ、ならいいわ。あなたを生き返らせるわ……あ、それで一つ質問なんだけど」
「なに?」
僕が生き返りたいという意思を伝えると、ユラムは静かに微笑んでくれた。そして、僕に聞きたいことがあるみたいだ。なんだろう……。
「生き返るに当たってあなたに一つだけ能力を授けたいと思うの。何がいい? このままだとあなたは何も能力を得ていないから」
ーーあなたはどんな能力がほしいですか?ーー
冗談めかして語られた言葉、僕が欲しい能力が何であるか、欲しい能力、この世界でたくさんのものを見た。純粋に肉体を強化したり、相手を洗脳したり自分の姿を変えたり……考え出したらキリがない。
でも、
「わかってるくせに」
僕はユラムの目を見て、はっきりと答える。まったく、わかりきってる質問をしてくるなんて相当意地が悪いな。あ、こいつもともとこんなんだっけ。そしてユラムは僕はそう答えるのかわかっていたのか、優しく微笑む。
「それで? なにかしら。早く言いなさいよ」
「ああ、じゃあ言うよ。ユラム、『お前と話す能力』、それが欲しい」
今度はもう、迷うことがなかった。
この話で完結となります。
今までありがとうございました。
また次の作品もよろしくお願いします。




