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『慈愛』の力

ブクマありがとうございます。

これからも頑張ります。


「ここは?」

「あ、お兄ちゃん目が覚めたー! よかった」

「サラちゃん?」


 目を開けたらサラちゃんの姿が見えた。そして起き上がろうとしたら、すぐにサラちゃんに止められた。


「ダメだよお兄ちゃん。その怪我で動いたら」

「え、うん」


 おぼろげながらも記憶が戻って来る。気を失う前に確か腹を貫かれていたんだっけ。今は毛布がかけられているので見ることができない。痛みとかは特に感じない。この世界に鎮痛剤とかはないだろうからある程度回復したと思うことにしよう。そしてその横にいるヒヨリに声をかける。


「アカリ、大丈夫なの?」

「あ、ヒヨリ……運んでくれてありがとう」

「別にいいわよ……それで、何があったの? 橘って確か死んでるわよね?」

「ああ、そのことについても話すから、ルナたちを呼んでくれないか?」


 橘や邪神のことを話すためにもみんなを集めてもらう。そしてヒヨリが部屋から出て行く。ここって確か王都にいた時に泊まっていた宿とは違うような気がするけどどこなんだろう。


「ねえ、サラちゃん、ここってどこ?」

「ここは王都の外れにある宿だよ……王宮の近くとかはお兄ちゃんの悪評が広まっているから避けたほうがいいってユキお姉ちゃんが言ってた」

「そっか」


 どれだけ冥界で過ごしていたのかはわからないけど……体感的には1日経ってないよね。まあ少なくとも僕の評判が広がるぐらいには時間が経っているということだよね。そして部屋の扉が開いて、ヒヨリがカナデたちを連れてきた。


「それで、何があったの?」

「ああ、簡単に言うと、邪神が復活した」

「……ん?」

「え?」


 何があったのかを聞かれたので話したら変な目で見られた。まあ、いきなり神が蘇ったとか言われても信じられないよね。


「それで、蘇って何をしようっていうの?」

「え? 信じてくれるのか?」

「さすがにアカリの言うことだからね」

「別世界の人間だとか神様の声が聞こえるとか今までも似たようなことがありましたし」

「ははは」


 ルナの言葉を聞いて確かに僕は今までに結構信じられないことをいっているからね。カナデたちのほうを見ても苦笑いしている。でも、すぐに表情を引き締めて、彼女たちに話す。


「ごめん、実はよくわからないんだ、邪神の目的なんて」

「いつもアカリにアドバイスしてくれる神様はなんて言っているの?」

「実は……復活する直前に悲鳴が聞こえて、それから一切何も聞こえないんだ」


 そして僕は全部話した。ユラムの中に邪神がいて、邪神教の計略によって2柱の神が入れ替わってしまったことを。そして僕のクラスメートがもうかなり死んでしまっていることを。


「そうですか……これはかなりヤバイですね」

「でも王都に用事があるって言っていたけど来ているのかな……というかどれくらい時間が経ってるの?」

「あれから三日です。この宝玉とサラ様の能力によって一時的な応急処置を行うことができました」

「そっか。サラちゃん、ありがとう……そういえば宝玉は? 二つあったと思うけど」

「こちらです」


 ルナから二つの宝玉を渡される。『慈愛』と『節制』の宝玉。日暮さんが一矢報いるために奪ってくれた二つの宝玉。これが、邪神を切り崩す切り札になればいいのだけど。


「それで、どうされるのですか?」

「止める……王宮には神崎たちがいるから。それに日暮さんと約束したからね」

「そうですか。ですが、今は動いてはいけません。このまま動けば確実に死んでしまいますよ」

「……」


 死ぬ、か。別に僕の命くらい……って考えてもいいのだけどさすがにそんなことを口にできないし。僕はカナデのほうを見る。カナデなら王都で何か問題が起きた時にすぐにわかるだろうし。


「特に何かが起きているとかは聞いていないですが……」

「橘の体に馴染むようにしているのだろう」

「そうですか」

「ユキとカナデで神崎たちに警告を伝えてくれるか? 邪神のことは隠してもいいから、とにかく王都が襲われるということ、それから橘の死体は僕が見つけたってことを伝えて欲しい」

「わかったわ。カナデ、いきましょう。あ、それからヒヨリも来てくれる?」

「もちろんよ」


 そしてカナデ、ユキ、ヒヨリの三人は部屋から出て行った。ユキがヒヨリを誘ったのはおそらくヒヨリがしばらくいなかったから一緒にいたいのだろう。


「ご主人様」

「どうしたの?」

「確認しておきたいのですが、神様がいなくなったご主人様はこの宝玉の本来の能力の使用は可能なのでしょうか」

「あー、どうなんだろ」


 試してみたいのだけど……持っている二つの宝玉を見る。『節制』の宝玉はこの状況にそぐわないけど『慈愛』の方はまだ、使うことができるよな。物は試しだし、やってみるか。


「わかった、試してみよう。ルナ、ちょっとそこに立ってもらえる」

「ここですか?」

「うん」


 そして僕は『慈愛』の宝玉を手にとってルナたちを見る。息を吸って能力を発動させる。カレンさんから聞いていた通りなら、この状況でも使うことができるはずだ。


「『慈愛』」

「……」

「何も起きないね」

「そ、そうだね」


 ルナは依然としてその場に立っていた。宝玉の力を使ったと思ったけど、何も起きなかった。


「ご主人様、これは一体」

「えっとね、この宝玉の能力は瞬間移動なんだよ。対象の人物を移動することができる……はずなんだけど」

「私は動いていませんね」

「だよね」


 ルナから視線をずらして、自分の毛布をみる。そして、宝玉を握り締めると、僕にかかっていた毛布が消えた。


「きゃあ」

「ご、ごめん……ルナ、お願い」

「はい。サラ様、大丈夫ですか?」

「お兄ちゃん?」

「ご、ごめんって」


 いきなり自分の頭に毛布が現れたのでサラちゃんが悲鳴を上げている。ルナにすぐお願いしたからなんとかなったけどさすがに何も言わなかったのは失敗だったかもしれない。


「お兄ちゃん!」

「ごめん。本当にごめん」

「じゃあ今度何か埋め合わせしてよね!」

「わ、わかった」


 なんか予想以上に高くついちゃったけど仕方がない。これは僕が何も言わなかったのが悪いのだから。むしろこれで済んで良かったと思うべきかもしれない。でも、それよりも重大な問題がある。


「ご主人様、これは」

「うん、加護が……失われている」


 これは、ユラムがいなくなったから僕の能力もかなり制限されてしまったとみて間違いないだろう。本来の力を使うことができなくなってしまった。まあ、その代わりに反動がなくなったから良いと思うべきなのかもしれないけど。


「お兄ちゃん……大丈夫?」

「ああ、大丈夫」


 別に僕が何もできないというわけではない。この宝玉があればまだ能力の使用ができるのだから。ただ、こうなってしまえば誰でも良いということでもあるのだけどね。


「ご主人様……」

「大丈夫。絶望はしない……それよりも逆に考えよう。みんなも持つという選択肢が生まれるから」


 今までも考えていないわけではなかったけど、ユラムがいたから僕が宝玉を全部持っていたのだけど、僕が持つという重要性が薄れてしまったのなら誰にもたせてもいいわけだしね。これをメリットとして捉えることに……しよう。うん。


「とりあえず、カナデたちを待つことにしようか」

「そうですね」

「お姉ちゃんたち早く帰ってこないかなー」


 カナデたちを待ちながら、僕はこれからのことを考えていた。

ブクマ、評価していただけるととても嬉しいです。

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