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冥界の旅を終えて


「これで大体伝わったかな?」

「はい、大丈夫です」

「はぁ、結局アカリくんほとんど敬語だったじゃない」

「ははは」


 なんかタメ口で話すのって気後れしちゃったんだよね。でも、カレンさんからはたくさんのことを聞くことができたから満足かな。


「最後にアドバイス」

「?」

「自分を信じなさい、『ユラムの伝言』をあなたがもらえたのはきっと意味があるはずよ」

「知ってるよ」


 何もできない僕だから、ユラムが見たいと思ったんだよね。そして僕は最後の宝玉を手に入れてそしてカレンさんが作ってくれた道を通って井戸の外に出た。井戸の近くには、ルナがいて、ずっと待っててくれていた。


「お疲れ様でした」

「ありがとう……もしかして、ずっと待っててくれていたのか?」

「特にすることもなかったですし……それに、手に入れることができたみたいですね」

「うん」


 僕が持っている神杖には7つの宝玉が埋め込まれている。ユラムが最初に言っていたようにこれで、完成だ。それにカレンさんから簡単に能力についてレクチャーを受けたのが大きいな。これで……もう、誰かを失うなんてそんなことを経験することはない。


「ヒヨリ様やエレ様が待っております……向かいましょう」

「わかった」


 ルナと一緒に僕はエリ様の元に戻っていった。そういえば僕がいない間にどんなことを話していたのだろか。少しだけ気になるけどそれを聞くよりも先に、エリ様のところに到着した。


「あれ、終わったのね。お疲れ様」

「お疲れ様、アカリ」

「いえ、ありがとうございます」


 戻ってきたら二人から労いの言葉をもらった。それにしても冷静に振り返ってみてみても試練というほどの試練じゃなかったんだけど……あれで良かったのだろうか。


「試練の内容はあの子に一任していたわ。私はどうこう言うつもりなんて全くないし」

「そうなんですか?」

「ええ、魔王(あの子)が見定めたのなら、きっと大丈夫でしょう?」


 そんな風に僕の心配を見抜いたのか、エリ様はさりげなくフォローしてくれる。なんだかんだでこの人、ユラムよりも相当優しそうなんだけど。


「ユラム様相変わらずなのね」

「あはは……でも、とても頼りになる存在なのは間違いないです」

「そう、そんな風に思われているのなら、よかったわ……さて、と。あの子の試練を突破して、その神杖を手に入れたあなたになら、伝えてもいいでしょう」

「?」


 僕に伝えてもいいこと? 何だろうな。そう思っていたら今まで耳で聞いていた彼女の声が直接僕の頭の中に響いてきた。


『私の名前はエリス。冥界の主人です』

「!」

「ご主人様?」

「え? い、あの?」


 ちょっと待って。エリ様……いや、エリス様? この人僕に普通に名前を教えてくれたんだけど、一介の人間なんぞに教えてもいいものなのだろうか。いや、そもそも僕はユラムの名前を知っているからセーフ?


「それから、ヒヨリ」

「は、はい」

「今までお疲れ様でした。あなたの贖罪はこれで終わりです」

「え? しかしまだそこまで時間が経っていないのですが」

「大丈夫よ。アカリは少し不本意だけど原因が取り除かれた以上、魂たちの暴走はすぐに終わるわ」

「……」


 エリス様が僕を気遣うようにチラッと視線を向けてくる。やっぱり朝日さんが……そして彼女が死んでしまったからヒヨリの仕事がなくなってしまったと。結果的に見ればよかった、のか?


「というわけで、これで終わりよ。今までご苦労様」

「は、はあ」

「ま、でもさすがにここに来てもらって何も報酬なしっていうのは如何なものかと思うわね」

「え? い、いえ。これはそもそも私の贖罪で」

「人間の能力の影響の責任をあなたに押しつけるのがそもそも間違いだったのよ……まあ、こちらとしても体裁があったことをは理解してほしいけど」


 メンツの問題というやつかな。ヒヨリの能力でかなりここが大慌てになったのは事実だし、その責任を取らせたいというのは間違ってない。でも、これはエリス様の優しさ、なのかもしれないな。


「さて、と。あなたが望むのならあなたの能力を封印させることもできるのだけど……どうかしら?」

「ほ、本当ですか?」

「もちろんよ。ただ、その代わりあなたは無能力者になってしまうけど平気かしら?」

「……大丈夫です」

「ヒヨリ、本当に大丈夫か?」

「ええ、これで苦しむことがなくなるから」


 ヒヨリは悲しそうに笑いながらそう言った。なんとなくだけど、この笑いの裏に隠された思いを読み取ることができたかもしれない。ルナの方を見れば、彼女も辛そうな表情をしている。全てをリセットできるが故に、全てを望むことができる。でも、それをしたために、苦しんだ過去(トラウマ)になったんだもんな。荒療治とはいえ、これも一つの解決策なのかもしれない。


「そう、代わりに、この短刀をあげるわ」

「?」


 エリス様は手を前に出すと光り輝いて一本の短刀が現れた。そして、それをヒヨリに差し出している。


「これは……」

「冥界の石を研いで造り上げた短刀。現世において、かなりの斬れ味を保証するわ。特に不死者などに対して効果を発揮するでしょう」

「あ、ありがとうございます」


 ヒヨリは前に出て、短刀を受け取った。見た所刀身の部分が黒く輝いている。確かに、かなり斬れ味が高そうだ。


「そして……こちらに」

「はい」


 エリス様がその手をヒヨリの頭に乗っける。そしてその手がまた光り輝いた。しばらくヒヨリは目を瞑っていて、すぐにその目を開けた。


「はい、これで大丈夫よ。あなたの能力を封じたわ……人の手に余る能力を持って生まれさせたこと、ごめんなさいね」

「……」

「ヒヨリ……」


 エリス様はその言葉を言って頭を下げた。冥界の中で一番位が高いはずなのに、一人の人間に対してこうも簡単に頭を下げていいのだろうか。その姿を見て、ヒヨリは慌ててエリス様に話す。


「頭を上げてください……それに、私はこの能力で満足してます……確かに両親を救えなかったのは辛いけど、この能力のおかげでユキやアカリたちと出会えることができた、そう思っています」

「そう、ねえ、ヒヨリが死んじゃったら私の元で働かない?」

「え?」

「ま、それはヒヨリが死んだ時のことでいいでしょう」


 そして、エリス様は僕とルナの方に向いた。


「ルナ、今の仲間を大切にね」

「心得ております」

「最後にアカリ」

「はい」

お姉ちゃん(ユラム)をお願いね」

「は、はい」


 なんだろう。今、初めてユラムを様付けしていなかっただけじゃない。何か別の意味を持たせていたようにも感じられる。エリス様とユラムって……顔立ちは似ているような気もするけどそもそもユラムって姿がなんでもありだからな……。


「それじゃあ、道は作ってあげるから、早く出なさい。ただ、入ってきたところとは別のところに出ると思うけど」

「ありがとうございます」

「そう。それじゃあ、さようなら……多分二度と会うことはないでしょう、アカリ以外」

「ん?」


 なんで最後に僕の名前を言ったんだろうか。それがものすごく気になる。でも、それを気にするよりも先に、僕たちはエリス様が作ってくれた道を通って行った。そして、来た時と同じように揺らいでいる空間を通った。


「えっと……」

「森、ですね」


 僕たちが出たのは自然豊かな森だった。いや、確かに元とは別のところに出るよとは言われていたけど……まさかここまで違うところに出るとは思ってもいなかった。


「ここは」

「アカリ!」

「ユキ!」


 声が聞こえたので、振り返ってみたら、そこにはユキがいた。僕たちの姿を見つけると、僕たちの方に駆け寄ってくる。とりあえず、戻ることには成功したみたいだな。

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