最後の宝玉4
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「どこだ……」
下に向かってどんどん進んで行く。もう怨嗟の声は一切無視する。向かってくる魂も慣れた。気にするようなものでもない。そしてしばらく突き進んでいくと、底に到着した。
「ここが、底なのか?」
気がついたら、水が一切ない空間に出ていた。いつ、ここにきたのかわからない。ただ、目の前に橙色の宝玉が置かれているのが見えた。
「あった」
そこに向かって進んで行く。しかし、触れようとした瞬間に弾かれてしまう。
「触れることができない……」
「だって試練中だもんねー」
「誰!?」
後ろから突然聞こえてきた声に驚く。そして後ろを向くと、
「えっと」
「あはは、初めまして。私は花蓮。よろしくねー」
「あなたが試練の案内人ですか」
カレンと名乗った少女は金色の長い髪の毛をしていた。そして後ろに手を組んでいる。冥界の主人もそうだったけれど、ここの住民はみんな金髪なのだろうか。水色のワンピースを着ているけどさ。
「んー、別にたまたまだよ? そもそも私は昔はただの人間だったし」
「ヒヨリみたいな感じなのか」
冥界のお手伝いをしている。そして僕の試練を案内してくれるということか。それよりも、この子僕の嗜好を読み取ることができるのか。そんな風に見ていたら、カレンは笑って答える。
「ふふっ、視線が私の髪に向いていたからねー。こう見えて私洞察力はすごいんだよ?」
「そ、そうですか」
さっきから向こうのペースに巻かれっぱなしになっている。僕としてはみんなが待っているから早いところ終わらせたいんだけど。
「さて、と。試練についてなんだけど……」
その言葉とともに、後ろに回していた手を前に出した。そこには僕が離してしまったと思っていた神杖が握られていた。
「それはっ」
「ごめんね。勝手に取っちゃった。でもまあよくここまで揃えたね」
「……」
「そっか。ユラムちゃんに手伝ってもらったのか」
「ユラムちゃん?」
今、ユラムのことをユラムちゃんって言わなかったか? いやまあ、僕も呼び捨てにしているから人のことを言う権利なんて全くないんだけど、それでも驚いてしまう。
「そ。私の生前に持っていた能力はあなたと同じ『ユラムの伝言』……効果はわかるわよね?」
「はい。わかります」
散々お世話になっているからね。それにしても、この能力って僕が初めてじゃなかったんだ。僕の前にもこの能力を与えられた人がいたんだな。
「その杖を返して」
「はい。どうぞ」
「え?」
てっきり渋られると思っていたんだけど、意外にもすぐに渡してくれた。何か裏でもあるのだろうか。
「別に何もないよ。それじゃあ、私の試練を伝えるね、私とおしゃべりしましょうか」
「え?」
今、彼女はなんて言ったんだ? 彼女と話せばいいってこと? 予想外の言葉が続いて固まってしまった僕を見て、勘違いしたのか、彼女は付け加えるように言った。
「ああ、先に宝玉取りたかった? もう取れるよ? さっきは私の方に注意を引きたかったから結界を張っただけだし」
「その杖の能力を使えるんですね」
「同じユラムちゃんの使いだし敬語はいいよー。それに見た感じ年も近い感じがするし」
「は、はあ」
「それで、杖の能力でしょ? 当たり前じゃない。だって元々私の能力だもん」
「ど、どういうこと?」
元々能力を持っていた? えっと……僕その、『ユラムの伝言』? 以外の能力を何ももらっていないんだけど。なんでカレンさんだけは他にも能力をもらっているのだろう。
「なんて言ったらいいのかな。私は……あー、そもそも君の名前は?」
「僕? 湊朱莉です」
「アカリくんね。さて、アカリくんはさ、この世界の魔王の存在を知ってる?」
「は、はい」
世良や小沼山が候補として喚ばれていたんだよね。そして初代は女性なんだっけ? ……ってまさか。このタイミングで話し始めっていうことはつまり。
「あ、その顔は知ってる顔だね。どうも初代魔王の、カレンです」
「しょ、初代魔王!?」
ちょっと待って。いろいろ混乱しているんだけど。初代魔王がユラムの使い!? そのことをあの世界の人々は知っているのだろうか。それをいろんな人に話したら卒倒しそうだな。
「ははは、やっぱり知らなかったのね」
「なんで、初代魔王が……」
「え? 私がユラムちゃんの使いだから」
「そ、そうだけど、どうして魔王なんて」
「単純に世界がつまらなかったから」
「……」
つまらなかったから魔王になったのかよ。なんだかよくわからないな。
「本当に、つまらなかったのよ」
「……」
でも、その顔は、心から退屈を感じていたわけじゃないな。寂しそうな影のある感じがする。何があったのか知らないけど、きっと何かがあったんだな。
「ま、この話はおしまい。私が生きた時代はもうはるか昔の話なんだからアカリくんには関係ないでしょ?」
「それはそうだけど……」
「ねえ、今、どうなっているの? 魔王周りは私あんまり知らないんだよね」
「今? どうなってるって……魔王候補が召喚されてドタバタしてるかな」
「召喚? あー、もしかして薄々感じてたけどアカリくんってこの世界の住民じゃないの?」
「そうですね。別の世界……日本から召喚されました」
「日本」
「?」
日本という名前を出した瞬間、何かを思い出したように遠い目をした。何か琴線に引っかかることでもあったのだろうか。いや、そもそも僕達よりも先に召喚された人がいたのかもしれない。
「知り合いでもいたのですか?」
「ま、そんなところ。そっかー。じゃあ、君の知り合いが?」
「クラスメートの一部が、邪神教とそれから魔王候補として召喚されました……大部分は王宮にいるけど」
「そっか、そんな感じなんだ。それで? アカリくんはどうして宝玉を求めたの?」
「元々は自分がやりたいこと……誰かの命の危機に動けないのが嫌で力を求めました。今は、このままだとクラスメイトが死ぬと知って、それを止めるために動いています」
でも、そのために僕は他の人を見殺しにする。冷静に考えたら相当ヤバいことをしているよね。ついでに言えば流しちゃっているけど、橘を殺している。ヒヨリの能力でリセットされることがないので僕が殺したことはもう変えようがない。いや、リセットなんてさせるつもりもないけどさ。もうできないし。
「へえ、今はそう変わっているんだね」
「はい……」
「ん? 何かあったのかな?」
「カレンさんは、人を殺したことはありますか?」
「あるよー、たくさん。私にはむかってくる者達をことごとく殺したよ」
「そうですか」
「君も誰かを殺したのかな。それでちょっと凹んじゃってると」
「そんなところです」
正直言えばもうほとんど解決しているけどね。カレンさんもそれがわかっているのかこれ以上この話題を続けることはなかった。
「さて、と。私の能力と宝玉について話してなかったね。宝玉はね、私の能力を一つ一つ封じ込めたものなんだ」
「それで杖は」
「あれは……うーん、なんていうか、私の願いをユラムちゃんが叶えてくれた形なんだよね」
「願い?」
「そ。私の願い。それで、君にこんな話をしたのは理由があって、杖の本来の使い方を教えておこうって思って」
「本来の使い方?」
宝玉が本来の能力があるみたいな感じなのかな? それっれユラムの加護を得ている僕だけが使えることができる……そういえば橘も使えていたっけ。……え?
「さっき、邪神の話をアカリくんはしたよね……その決戦が近づいてきている。だから君に、教えるよ。この杖の本来あるべき姿を……それはーー」
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