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最後の宝玉2


「ルナ、準備はいい?」

「大丈夫ですよ」


 僕たちは時計塔の近くにやってきた。そしてユラムに言われるまま、鏡を時計塔の下に置いた。


「これでいいんだよな?」

『あとは神杖を掲げてくれたらそれでいいわ……一つ足りないけど多分いけるでしょう』


 神杖を前に掲げたら、杖とそれから杖に反応するように鏡が輝き出した。そしてその光は僕たちを包んで……そして、その光が収まったとき、僕とルナは暗い道に立っていた。辺り一面漆黒に覆われていて、遠くを見通すことができない。そして、その道には街灯というか灯りは一切ない。


「『発火』」

「それは」

「自然災害で山火事とかがあるから火を起こすことも自然現象に含まれるのかと思ったら、予想通りだったね」

「なるほど、助かります」


 杖の先に光が灯る。これで多少は先を見ることができる。さて、と。ユラム、これどっちに進んだらいいんだ?


『まっすぐに進んで行きなさい』

「進もうか」

「はい……道が」

「ん?」


 後ろを振り返ってみたら少しだけ空間が揺らめいて向こうの世界が一瞬だけ見えた。でも、すぐにその空間が閉じていった。ん? これって、僕たちの帰り道だったんじゃないの? 大丈夫?


『冥界の主に気に入られればどうとでもなるわよ。というわけで、さっさと行きなさい……やっぱり完全じゃなかったから無理だったかー』


 完全じゃなかったって、ならどうして冥界なんかに最後の宝玉があるんだって突っ込みたいんだけどまあ、それは言ってはいけないことなのだろうな。よし、とにかく進んでいくか。


「ルナ、進もう」

「はい」


 僕たちはひたすらに進んでいく。しばらく進んでいたら、辺りにいわゆる火の玉というかそういう存在がふわふわ浮いていたりした。


「人魂かな?」

「どうでしょうかね」

「僕の世界では冥界といえば閻魔大王様がいるとか言われているんだけど、この世界ではどうなんだ?」

「そうですね……主人がいるとしか聞いたことがないです」

「そうなんだ」


 その主と会うことができればいいのだけど、実際すぐに出会うことができるのだろうか。とにかく進んでいくと、大きな門が見えてきた。そしてその前には白い服をきた人たちが大勢いた。


「あれは、死んだ人かな」

「みたいですね」

「はい、順番に並びなさいね」

「ん?」


 門のそばからなんか聞いたことのある声が聞こえてきたのだけど。そして近寄って行ったらそれが確信に変わった。門の前にて、死者の相手をしているヒヨリの姿があった。


「ひ、ヒヨリ?」

「え? アカリにルナ……あんたたち死んじゃったの?」

「あーいや、これの力でここにきたんだ」

「ああ、そういえば主人様が宝玉を持っていたっけ」


 ヒヨリが思い出すように目を細めた。それはそうと、ヒヨリはここで何をしているんだ? そんな風に見ていたら、ヒヨリもそれに気づいたようで、


「ああ、これ、私の罪の清算として冥界の手伝いをしているのよ。最初は魂を鎮めることをしていたんだけどなんか昨日辺りからはそれが収まっているのよね」

「ああ、そっか」


 以前、ケルベロスが言っていた、ここの魂が荒ぶっている原因、それはきっと朝日さんだったのだろうな。この世界と現世を繋いでいた鏡を持っていたしその可能性は高い。


「さて、と。主人様のところに案内するわ」

「え? いいのか?」

「アカリのことを話したら来たときに連れてこいって言われてるの」

「そ、そっか」


 そんな軽い感じでいいのだろうか。今の門の仕事とかを一切放棄しても問題ないのか? そんなことを思うけれどヒヨリの感じからして平気なんだろうな。そして僕とルナはヒヨリの後をついて、門をくぐる。門をくぐったとき、ちょっとだけ体が宙に浮いた気がしたけど、気のせいだろうか。


「うっ」

「ルナ? 大丈夫?」

「はい、問題ありません」

「そうか? 辛くなったら言えよ? 治癒するから」

「はい、ありがとうございます」


 ルナも何かしら感じているみたいだし、僕の気のせいではなかった? いや、これは僕たちが生きている人間……ルナは吸血鬼だけど、だから違和感を感じるのかな。結局ここは死者の国だしね。


 門を越えたら、その奥には巨大な宮殿があった。そしてその奥に進んでいくと、大きな椅子があり、そこに座っている女の人の姿が見えた。顔はよく見えないけれど、金髪の長い髪をツインテールにしているのが見えた。そして漆黒のドレスを着ている。


「あら、珍しいお客さんね……ヒヨリ、確認だけど、どっちがユラム様の使いかしら」

「!」

「アカリ?」

「ああ、もう大丈夫。どっちかなんてわかったから」


 この冥界の主人、今、ユラムの名前を口にしたんだけど。どうしてその名前を知っているのだろうか。ヒヨリが固まった僕とはっきり断言する女の人を見て、口を挟んだ。


「ご主人様?」

「その人間は創造神様の名前を知っていたわ」

「えっと……今、よく聞こえなかったところの部分ですか?」

「そうよ。普通の人間なら雑音が入るところを普通に聞き取れる。それは紛れもなく神様の御使いである証拠となる」

「私にも聞くことができませんでした」


 ルナが僕に嘘をつくとは思わないので本当に僕だけその名前を聞き取ることができたのか。それにしても、初っ端からユラムの名前を使ってくるなんて、この神様肝が座っているというか……あ、神様か。でも、とりあえず彼女と話をしてみよう。


「えっと、冥界の主人様は」

「そうねぇ。その名前あんまり好きじゃないし。うーん、エリと呼んでもらおうかしら?」

「エリ様、ですか」

「ええ、私の本名を伝えてもいいのだけど、それは試練を乗り越えて宝玉を手に入れた後に伝えましょう」

「そ、そうですか」


 ユラムの名前を散々聞いておいて今更だけど神様の名前をこんな感じに簡単に僕に伝えるのっていいことなのだろうか。そこまで気にする必要がないのかもしれないけど。


「それで、エリ様。私とご主人様に何をしてもらいたいのでしょうか」

「ああ、えっと、ご主人様と呼んでいるということはそこの人間の家臣なのね」

「はい」

「あー僕の名前は湊朱莉です。こちらは仲間のルナ」

「そう、アカリにルナね。さて、と。私の試練はアカリ一人に行ってもらうわ」

「僕一人で、ですか」


 ルナがいなくて、そして当然ヒヨリもいなくて、僕一人で受ける。今までも『節制』の宝玉をもらう時も似たような感じだったけど、その時はただ取ってくればいいだけだったし。そんな風に不安に思っているのを読まれたのかエリ様は優しく微笑む。


「あら? 怖気ずいて逃げるというのなら、それも構わないわ……扉を作ってあげるから帰りなさい」

「いや、怖いのは事実だけど、逃げることはしないです」


 もう、嫌だから。自分がしたかったことが失敗する経験なんてしたくないから。それに、みんなの思いを知ってしまった以上、僕に戦果なく帰るという選択肢はない。


「あら」

「だから、一人でも挑戦します」

「そう、いい返事ね。それじゃあ……ヒヨリ、裁きの井戸に連れて行ってあげて。私はルナと話をしておくから」

「かしこまりました……アカリ、いこう」

「ああ。ありがとう」


 そして僕は、ヒヨリに案内される形で試練が行われるという裁きの井戸に向かっていった。

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