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戦いを終えて その先へ


『落ち着いた?』

「多分」


 涙が引っ込んだという意味では落ち着いたと言えるだろう。悔しさとかそういう感情自体は残っているが、外見だけ見れば落ち着いた感じになっている、はずだ。


「アカリ? ご飯持ってきたわよ」

「ああ、ありがとう、ユキ」


 部屋の扉が開いてみんなが入ってきた。露骨に追い出してしまったから心配していたのだろう。入ってきたみんなは心配そうな顔をしている。


「アカリさん……」

「ごめん、みんな。心配かけた」

「それは構わないわよ……」


 気まずい沈黙が流れる。何か言いたいけど、言えないという感じだ。僕がずっと固執していたクラスメートが死んでしまった。それをみんな理解しているから、何も言えないのだろう。


「敢えて言わせていただきますが、ご主人様が気にしても仕方がない事だと思います」

「ルナ!」


 ユキが慌てて諌めに入るけど、ルナはそれを止めるぐらい強い口調で遮る。


「生きているものはいつか死にます。当たり前のことです」

「わかってるけど」

「もしかして、責任を感じているのですか?」

「……」

『力を手に入れたからってなんでも思い通りになるなんてあるわけないじゃない』


 ルナに、そしてユラムに本心を見透かされてしまい、僕は言葉に詰まってしまった。そんな様子を見て、ルナはさらに言う。


「それこそ傲慢です。はっきり言いますが、ご主人様は弱いです」

「はっきり言うなよ」

「戦うたびに倒れるあんたが弱くないわけないじゃない。ルナを見習いなよ」

「」


 そこまで言われたら何も言えない。確かに戦うたびに倒れているけどさ。傲慢、か。そうなのかもしれないけど、僕はそうすることでしか、立ち上がる事ができなかったから。そんな思いを知ってかしらずか、急にルナは微笑むと。


「それでも、私は救われました」

「私もですよ……アカリさんがいなかったら、変わってませんでした」

「命を救ってくれたのは紛れもなくアカリよ」

「お兄ちゃんのおかげで私たちは無駄に死ぬことがなかったんだよ?」


 ルナに続いて、カナデ、ユキ、サラちゃんが言葉を紡いでくる。その言葉を聞いて、僕は彼女たちを見る。みんな、僕を信頼した視線で見てくる。


『ま、忘れていると思うけど橘も救われた表情をしていたからね……確かに最善じゃない、アカリが望んだ結果じゃない。それでもアカリでしか、救えなかった人たちもいる』


 みんなが励ましてくれているのがわかる。かつて、奴隷たちを救うことができなかった。その時はまだ他人事でいられたけど、今回救えなかったのは僕が助けたかった人たち。それを受けて辛くなったりするけど、でも、


『前を向きなさい。あなたの戦いは、まだ終わっていないわよ……まあ、ここで全部投げ出して終わるっていうのでも私は止めないけどさ』

「それは、できない」

「ご主人様?」

諦める(・・・)なんて、一番できない」


 それをしてしまったら、今度こそ僕は動くことができなくなる。それは絶対に避けなければいけないことだから、僕はまた、立ち上がろう。


「まだ、終われない」

『ふーん、結局そうするのね』


 ……ユラム、ありがとう。


『お礼なんて言わなくていいわ』


 僕が言いたくなったんだから素直に受け取ってくれよ。ああ、それに、ユキたちにもきちんと言わないといけないな。


「みんな……」

「ん?」

「ありがとう……そして、頼む、まだ、力を貸して欲しい」


 僕はみんなにお礼を言って、頭をさげる。下げるといってもベッドの上だからなんだか様になっていないような気もするけど、さっき醜態を晒してしまったし、もう今更だ。


「構いませんよ。だからこうして一緒に旅をしているのですから」

「私もカナデと同じよ」

「ご主人様はただ命令すればいいのですよ」

「お兄ちゃんと一緒に行くって決めたからねー」

「ありがとう」


 みんなからの言葉を聞いて、少しだけ安心できた。


『……前も言ったけど、これもまた、力なのよ』


 わかってるよ。ユラム。さすがに2回言われたらいくら僕でも理解できる。こうして彼女たちがついてきてくれたのは紛れもなく、僕が今まで紡いできた力に他ならない。さっき傲慢な物言いをしたんだ。だからこれくらい大きい口を叩いたっていいよね。


「それで、これからどうしますか? ご主人様の傷が治ってからですけど」

「そうだね」

『わかってるわよ。最後の宝玉のありかを教えるわ……絶対にたどり着けないから』


 いや、たどり着けないって言われても。それなら教えられたも意味ないじゃないか。まあ、でも教えてくれよ。どこなんだ?


『冥界よ』

「冥界!?」

「アカリさん?」

「ああ、ごめん」


 おい、なんの冗談だ。


『冗談じゃないわよ。最後の宝玉は冥界にあるわ。あいつが持っているのよ』

「もしかして、冥界に最後の宝玉があるのですか?」

「そ、そうだよ」


 カナデたちに話しながら僕は内心かなり慌てている。ヒヨリがいるところだよね。


「じゃあ、ヒヨリに会えるのね」

「でも、どうやっていくんだ?」


 いくらヒヨリがいるとは言え、僕たちが簡単にいくことができるようなところではない。まさか一度死んでどうのこうのすればいいって話じゃないだろうし。てか死んでも生き返ることできるのか?


『そうねぇ。私が手引きしてもいいんだけど……ん?』

「あれは?」


 ユラムが言葉を切ったのでどうしたのかと思ったら僕たちの荷物がまとめられているところで何かが光っていた。あれは確か……ユキの持ち物だよね。


「これは……朝日が最後に持っていた鏡ね。ここから白い人形とか、色んなものを召喚していたわ」

「そっか」


 遺留品か。これが日本ならそれを朝日さんの棺桶に入れるとか墓前に供えるとかそういうことをするのだけど、もう、僕たちが手の届くところにいないからね。どうしようもできない。


『あら、ちゃんと道があるわね』

「ん?」

『あれは死後の世界と繋がっているわ。あの子の能力がそういうものだったし』

「その鏡を使えば冥界に行けるのか?」

「え?」

『一度だけね。私も手伝うけど、一度が限界』

「そっか……みんな、もうわかっていると思うけど、その鏡を使って僕たちは冥界にいく」


 みんなに宣言する。まさかこんなところに繋がっている鍵があっただなんて。でも、これはきっとこういう流れだと思うことにしよう。朝日さんが死者と関係のある能力を持っていたのも、きっと何か縁があるのだろう。


「すぐにでも出発したいけど、まだ僕の傷とかが治っていないからそれが治ってから出発しよう」

「はい」

「わかったわ」


 長々と話したからなのか、ちょっと疲れてしまったな。僕はゆっくりとベッドに寝っ転がった。そしてゆっくりと目を閉じた。


「おやすみなさいませ、ご主人様」

「おやすみ、アカリ」


 みんなの声を聞きながら、僕は静かに眠っていった。疲れたけど、充実した疲れのように思う。みんな、本当にありがとう。

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