時計塔での戦い2
「ここが時計塔か」
しばらく走っていると、時計塔の下にやってきた。そこにはまた白い人形がいたが明らかに時計塔を守っているように思われる。ここに全体を見渡している奴がいるとみて間違いないだろうな。
「さっさと登ろうか」
おそらくだけど、一番上にいるのではないだろうか。その方が見渡しやすいし。そのためには目の前のこいつらを倒さないといけないな。
「雷を落としたいが……」
無駄に能力を使って疲労したくない。だから杖をぶつけていって人形をひたすら叩いていく。やっぱりそこまで強くはないようでしばらく殴っていれば消滅する。
『ねえ、無駄に体力を消耗していない?』
「それはあるかも……時間も無駄にしたくないし、終わらすか『雷』」
あんまり時間をかけるわけもいかないし、相手の数も多いから動き回っていて疲れてきた。だから雷を叩きつけて一気に殲滅した。
「これでいけるはず」
そして中に入っていく。一階は普通に博物館というかそんな感じだ。中にも敵がいるかと思っていたけど意外にも静かだった。
「罠?」
『単になにもないと思わせているのかもね』
「まあ、ここまで来たけどその可能性もあるわけか」
でも、一応上まで登ってみてみよう。誰かいるかもしれないし、それに上からなら今の王都の様子を確認することもできる。仮にここに誰もいなくても一応意味がある。そう思って、僕は階段を上り始めた。エレベーターとか便利なものはないからね。
『ルナを連れてきた方がよかったかしら?』
確かにそうすれば風で運んでくれそうだけど、それは当然できない。王宮にあいつらのうち誰かがいるのは間違いないわけだしそいつのところにルナがいてくれないと困る。僕の頭によぎるのは昌栄の街でのこと。気がついたら奴隷たちが全部殺されてしまっていた。ここの人間に連れて行かれたら橘たちも殺されてしまう。だから僕たちの誰かが止めなくてはいけない。そして国から守る。それが、僕がしたいことだ。
「思ったより早かったな」
「橘……」
登った先の展望台と思わしき場所に、『純潔』の宝玉を持った橘の姿があった。こいつが、ここで指示を出していたのか。でも、なぜに『純潔』の宝玉を使っていたんだ? 僕の視線が気になったのか、橘は教えてくれた。
「ああ、これで遠隔で連絡を取り合っている……いわば簡易的な通信機器みたいなものだ」
「そんな使い方があったのか」
「は? お前知らなかったのかよ」
「……」
だって、『忠義』の使い方に新しいものがあるってことに気がついたのでさえ最近だからね。だから他の宝玉にも同じようにって考えるのは当然だけど、それは僕の手から離れたからね。橘はそんな僕をみて、ため息をつく。
「まあいい。お前がここにきたってことは俺たちを止めに来たってことか。いや、あの少女にバレていたのか」
「そうだよ……王様を殺すって何考えているだ」
「別にいいだろ。お前には関係ない」
「お前らが捕まるだろ」
僕のやるべきことはお前たちを助けることだからね。別に王様が死のうがどうなろうが知っちゃこっちゃないが橘たちが死んでしまうのは避けたい。
「俺たちの心配か……うまくいけば逃げることができるんだけどな……みろよ。朝日の能力だけで王宮の騎士団はかなり撹乱されている」
橘に言われるがまま外をみてみればあちらこちらで爆発が起きている。そして白い人形と鎧をまとった人たちが戦っている。
「でも、かなり押されているぞ」
「いいんだよ。あれはそこまで戦闘能力はない……それに、よく見ろよ」
「ん?」
もう少ししっかりと見渡してみる。どこも白い人形が一方的に押されているだけだと思うけど……ってそうか。さっきユラムが教えてくれたっけ。あちこちに強力な個体が出現したって。それが暴れているのだろう。かなり煙が発生している地域がある。
「な? ちょっと力を入れて作ったやつだけでこうなる。そしてそれらは全て陽動……王宮からは誰一人として出してないだろ? 誰も王宮も襲われているだなんて思ってもいないんだよ」
「薄くなっているところを叩くわけか……でも言っておくぞ。そこには」
「神崎たちがいる。知ってるよ」
僕の言葉を遮るように橘は言い放つ。こいつ、そこまでわかっているのに、この作戦を実行したのかよ。実行する意味がわからないわけでもないのに。
「ここにはいないってことはあの吸血鬼は王宮にいるのか……だが、あいつ以外はたいしたことない」
「神崎たちはそうだろうな」
聞いた感じでは普通の魔物と戦うだけでもそうとう苦労しているみたいだし人間、しかも自分の知り合いとなればまず無理だろうな。そして橘は僕の方に向き直って、
「さて、と。ちょっと大掛かりな作戦なもんでついお前と話し込んでしまったが、さっさと始めようか」
「……ああ、そうだな」
僕は一旦、橘から距離を取る。橘も僕が距離を取るまで攻撃してこなかった。……こいつ、どうしたんだ?今日はいつもみたいに突っかかってこないんだけど。
『いや、単純に能力を使用しているからキツイだけでしょ……連絡を取るってどんだけのエネルギーを使うと思っているのよ』
「能力の使いすぎ、か」
「はっ、お前に心配されるいわれはねえよ……お前程度なら、この程度でも戦える」
「絶対に止めてやるよ『勤勉』」
そこそこ動けるだけの広さがあるとはいえ、自然現象なんて巻き起こしてしまったら下手したら、時計塔が崩壊するとかそんなことがあり得るのでまだ無難そうな能力を発動させる。これで、橘の能力を使うことができるはずだけど……
「はっ」
もう話すことがないということなのか橘が僕に向かって突っかかってくる。向かってくる拳を避けながら無防備になっている横腹に向けて蹴りを入れる。
「!」
「動きやすい」
橘の能力をコピーしてみて一番に感じたのは、動きやすさ。体がかなり思うように動かせる。いや、純粋に強化されている気がする。
「お前、動きが……いや、その宝玉の力か」
「よくわかったな」
「……」
邪神教というだけあって、こういう能力のことを記している本とかがあったとしてもおかしくないよね。それを知っていたということだろうか。まあ、それでも、関係ないよね。
「今の一撃……なかなか効いたよ。でも『憤怒』」
「!」
橘が赤い宝玉を取り出してそれが赤く輝いた瞬間に、僕の横腹にかなりの痛みが走った。なんとなくだけどちょうどさっき僕が蹴ったところが跳ね返ってきた感じがする。
『あれは「寛容」の宝玉。カウンター能力ね』
「なるほどね」
「ふっ」
痛みで体の動きが固まった瞬間に狙われて、橘拳を思いっきり腹に受ける。そのまま吹き飛ばされて、壁に激突する。衝撃で時計塔がかなり揺らいだ気がするけど……大丈夫だろうか。
「死ねっ」
「くそっ『雷』」
とっさに雷を発動させて橘に対抗する。雷よりも早く動くことができないので直撃する。
「うぐっ『憤怒』」
「『忠義』」
攻撃を受けた橘がまたしてもカウンターを放ってきたので僕自身を結界で覆うことで防ぐ。赤い光を遮断したことで防ぐことができたみたいだ。
「くそっ、面倒くさい能力を」
「それはお互い様だろ」
お互いに声を掛け合いながら、僕と橘は互いに距離をとりつつも次なる一手を考えていた。
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