時計塔での戦い
ブクマありがとうございます。
これからも頑張ります。
「見えてきましたね」
「うん、神崎たちはもうついているのかな?」
「向こうは私たちと違って馬車などを使っているでしょうしさすがに着いているでしょうよ」
僕たちはサングイネの街から出て王都に向かっていった。そして王都にたどり着いた。サラちゃんやルナがいるので基本的に僕たちは馬車などを利用することはできない。僕が馬とかを扱うことができればよかったのだけど、それは当然無理なので借りるという選択肢もとれず、ルナが仲間に加わっていこうあるいて移動がデフォルトになっている。
「さて、と。見た感じ襲撃は受けてなさそうだよね」
「平和な感じがしますね」
そして王都の様子を確認してみる。ルナの言葉どうり、過ごしている人たちはみんな幸せそうというか少なくとも襲撃を受けていたら考えられないような表情をしている。間に合った、と考えるべきだろうか。
「ユキ、あとどれくらいで襲撃が始まるか、わかる?」
「それは無理ね。でも、大分近いわ……今すれ違った男性の人の未来が一切見えなかったから」
「そっか」
「お兄ちゃん、さっきから視線がすごいんだけど」
「言われてみれば私にも視線が飛んできますね」
「……ごめん、少し脇に避けようか」
二人の顔を隠すのをすっかり忘れていた。そういえばルナが仲間になってから、山とかエルフの里とか結構田舎の地域を巡ることが多かったけど、王都になるとさすがに目立つな。吸血鬼であるルナへの憎しみの視線が集まっている。
「なんとかルナたちへの視線をなくしたいな。辛いだろ?」
「別に問題ありません。いつも受けていましたので」
「ダメでしょ……ユキ、何かある?」
「帽子を被ったりして目や耳を隠せば大丈夫だと思うけど……」
「いえ、それはもう大丈夫みたいです」
「ん?」
『きたわよ』
ユキに対策を相談しようとしたら、カナデからこれ以上は必要ないと言われた。そして、ユラムの言葉。これが意味するのって、
「あいつらが? でも、どこに?」
「生き物の声が……変わりました。謎の人形? が出てきたって」
「白い人形……朝日の能力」
ユキから話は聞いていた。予測される橘たちの能力について。ただ、朝日さんの能力は未だにわからないけど。でも白い人形を操っていたということは傀儡系の能力? ただ、相手の人数が見た目よりもはるかに多いであろうことは想像つくな。兵の水増しとかそういう感じの。
「どこに現れたかわかる?」
「ちょっと待ってくださいね……王都の各地に現れたそうです。でもまだ人を襲うとかそういうことはないみたいですね」
「時期を待っているということかな?」
「可能性は高いわね……何かを狙っていると考えるのが自然よ」
なるほどね。なら、どうするか。橘たちがここにきたのは間違いない。でも、どこから攻撃してくるのか予測がつかない。それに、神崎たちはこれを知っているのか?
「ご主人様、どうしますか?」
「陽動の可能性もあるし……でもユキとカナデの二人で神崎たちに伝えていってくれるか?」
「ええ、わかったわ」
「わかりました」
本当なら王様が狙われているっていうことで僕やルナが行くのがいいのだろうけど、僕はかつて王宮から逃げたという負い目があるし、ルナは吸血鬼の関係上無理だ。サラちゃんも同じ。エルフだからそこまで迫害されるとかそういうことはないだろうけど、トラブルの火種は作りたくない。それに公爵の娘であるユキと巫女であるカナデなら適任だ。探知能力が大幅に失われるのは痛いけど、王宮へといく二人を見送る。
「私たちはどうしますか?」
「その朝日さんが作り出したっていう白い人形を探そう。なにかわかるかもしれない」
「わかったー」
僕は能力を解除して三人で動き始める。怪しい存在が現れたとなれば近くで何かしらの反応をする人がいてもおかしくない。騒ぎになっていないか警戒しながら王都を走り回る。そんな時だった、
「!、爆発音?」
「これは……王宮の方向でしょうか?」
突然何かが爆破されたような音が響き渡った。しかも方向は王宮の方。そして、それと同時にあちこちで悲鳴が聞こえてきた。
「どうやら始まったみたいですね」
「少しは休ませて欲しかったけど、仕方がないね。橘たちを探そう」
それでも、立ち止まってはいられない。僕たちはまた走り始める。しばらく走っていると、白い人形に襲われて逃げている王都の人たちがいた。
「ご主人様、どうしますか?」
「目に付く限りは倒そう。サラちゃんは怪我人の治療をお願いできる」
「まかせて!」
ルナとサラちゃんに指示して僕は近くにいる人形に向かって杖を振り下ろす。この後に橘と戦うことが予想されるから能力の使用はできる限り控えることにしよう。
「そこまで強くない?」
杖を振り下ろして、人形を横に飛ばす。そしてすぐに風が吹いて、その人形は細切れになった。耐久力とかはそこまで高くないのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……ひっ、吸血鬼」
「ご心配なく、彼女は僕の仲間です」
「仲間って言われても信用できるか!」
「あっ」
人形に襲われていた人を助けたのはいいものの、ルナの姿を見たら悲鳴をあげて逃げられてしまった。こういうことは言いたくないけど、助けたのに、そんな対応をされるなんてな。
「大丈夫です、私は慣れています」
「慣れちゃダメだよ」
「数が多いよー」
「サラちゃんも大丈夫?」
さっきの爆発を合図にして人形の数がかなり増えてきた。僕たちだけでは対処ができない。騎士団とかはいるはずなのに、どこにいるんだ?
『王宮も同時に襲われていて、各地にかなり強力な魔物が出現したそうよ。その対処でこっちまで手が回らないのよね』
「各地に魔物か……」
「ご主人様」
「どうした?」
ユラムからかなりありがたい助言をもらったところでルナがかなり神妙な顔をして僕に話しかけてきた。
「おそらくですが、これを操っている人間がいると思いますが……見た感じ一斉に襲ってきました。このように命令するには見通しのいい所で常に状況を見ている司令塔がいるはずです」
「それを叩けばこの人形たちをほぼほぼ無力化することができるってことか」
「はい。そしてそれが可能なのはおそらくあそこかと」
「あの時計塔……」
僕が王都にいた時から気になっていた。ひときわ高く存在している時計塔。あそこなら確かに見通しもいいし、王都を簡単に見渡すことができるだろうね。あそこに誰かがいるということか。なら、向かおう。
「よし、ルナとサラちゃんは王宮に行ってユキたちのサポートをお願い。僕が時計塔に行って司令塔の人間を止める」
「わかりました……できるだけ殺さないように気をつけます」
「ごめん、頼む」
あちこちで悲鳴が上がっている今のこの状況なら、ルナたちが王宮の中に入ることも可能だろう。そしてルナは僕が言おうとしていることをすぐに汲み取ってくれた。
「ちょっと、ここを見捨てるっていうの!?」
「さっきまで戦っていたのに?」
僕の言葉を聞いて、近くにいた人たちが驚いたように詰め寄ってくる。確かに僕はここから離れるつもりだし、それを見捨てると捉えることもできるだろうね。
でも、それは仕方がない。
「すみませんが、僕が『やりたいこと』はあなたたちを守ることじゃない、頼む! ルナ、サラちゃん」
「かしこまりました」
「お兄ちゃんも頑張ってねー」
二人の言葉を背中に受けながら、僕は時計台に向かってひたすら突き進んだ。そしてそこに行くまでに襲われている人たちを全て無視して。なんとしてでも、僕は橘たちを自分たちの手で止める。




