遺跡での戦いを終えて
本日2話目の投稿になります。
ご注意ください。
この話で100話目に到達しました。応援ありがとうございます。
また、この話から長編になります。
「アカリ! よかった」
「ユキ、無事でよかった」
僕に抱きついてきて泣いているユキの背中を撫でながら僕はユキが走ってきた方向を見る。そこにいたのは桜花、朝日さん、そして、
「橘」
「あの人たちは私を助けてくれたわ」
「え? そうなの……橘助かったよ。ありがとう」
「橘くん……桜花くんに、朝日さん」
「神崎さんも湊くんのパーティーに入ったの?」
「ううん、今だけ」
橘がユキを助けた? その状況はよくわからないのだけどそれでも助かったのは間違いない。そして栞は朝日さんと話している。女子同士話があうのだろうな。
「ふん、別に俺が助けたのは打算があってからだ」
「代わりに宝玉をよこせ、的な?」
「ああ、そうだ」
「そうか、なら好きなだけ持って行けよ」
それなら仕方がないな。僕は橘たちの方に向かって歩いていく。
「待って、私のために」
「ああ、ありがたくもらおう……あ?」
「?」
突然橘が視線を上にあげた。まるで誰かに話しかけられたかのように。でも、ここには僕たち以外に誰もいないはずだけど……?
「わかったよ。湊。幻術の宝玉だけ寄越せ」
「え? うん」
なぜだかわからないが、『純潔』の宝玉しか求めてこなかった。あーもしかして、7つ目の宝玉のありかをまだ掴めていないとかそういうことなのかな? だから僕にある程度戦力を残しておいて最後の宝玉を手に入れることができるようにしておくと。正直言えば今回で『忠義』でも攻撃ができるということがわかったけれど、『分別』を奪われなくてよかったと思わざるを得ない。あれ失っちゃったら相当痛いし。いや、これからルナの能力を(劣化だけど)使えるから悪くないのか?
「はい」
「これで、今までの貸し借りは全てチャラだ」
「あ、ああ」
「そういえば坂上の命を救ってもらっていたんだっけ」
「桜花は黙ってろ」
僕は橘に近づいて宝玉を渡す。油断しておいてってことも考えたけど別にここで全ての宝玉を渡す覚悟で向かったわけだし別にいいのだけどね。そして橘は踵を返す。
「ちっ、これで目的は達した。帰るぞ」
「はいはい」
桜花もそれに続いた。そして、朝日さんと栞の方だけど……
「またね、神崎さん……みんなにはよろしく伝えといて」
「まって、深雪ちゃんから聞いてる……魔王の組織にいるって。でも、朝日さんたちが望むのなら」
「ごめんね、神崎さん」
「!」
望むのなら協力するから戻っておいで。そのようなことを栞は言おうとしたのだろう。でも、朝日さんはそれを遮った。
「私たち、もう戻れないの」
「そういうことだ。詳しい話が聞きたいなら湊にでも聞いておけ」
「……」
そう言い捨てて、橘と、桜花、そして朝日さんは全員、歩いてどこかに行ってしまった。ユキをここまで警護しながら連れてくることができたのだから三人でも大丈夫だろう。
「湊くん」
「あいつらは……もう、変わっちゃったんだよ」
これ以上は、さすがに言いたくない。クラスメートたちが、人を殺すことに躊躇いを覚えていないだなんて伝えるのは僕もキツイ。
「アカリ」
「あ、ユキ、大丈夫?」
「ええ、でも、伝えないといけないことがあるの」
「わかった。でも、先に宿に戻ろう……栞、せっかくパーティーになれたのに、申し訳ないけど」
「うん、さすがにわかるよ。湊くんは変わってしまった橘くんたちと戦っているんだよね」
「まあ、そんなところ」
ユキが伝えないといけないことってなんだ? 表情を見る限りかなりやばい内容であることは間違いないのだけどね。ま、僕たちももうここに用がないから帰るとするか。帰りの案内は……カナデがいるから問題ないか。僕はカナデに視線を向ける。
「私に任せてください。ユキ、わかっていると思うけどこれ以上戦闘はないわ」
「うん、わかってる」
そして僕たちはカナデの案内のもと、地下遺跡を抜けて、外にでた。そして最初の宿に戻ってきて、そして僕の部屋にみんな集合した。栞もまあ、一緒にいる。この調子だと明日ここから立つことになるだろうし。
「それで、ユキ、伝えないといけないことってなんだ?」
「うん、あの橘って人と一緒にいた時に視えたんだけど」
「橘未来が?」
「うん……」
ユキはここで言葉を切った。あえて一拍開けるというよりは自分の呼吸を整えるという感じだ。そして、呼吸を整えて一気に言い放った。
「王都が襲撃を受けて……そして陛下が殺されるわ」
「なっ」
ユキの言葉を聞いた瞬間、みんな言葉に詰まってしまった。陛下が殺される。つまり暗殺を企んでいるっていうことだよな。ん? 暗殺?
「なら、どうして『純潔』を奪ったんだ?」
「確かに幻術を仕掛けるのなら殺すという発想になりませんしね」
「だよな。ユキの未来を疑うわけじゃないけど、わざわざ僕の持っている宝玉からあれを選ぶ理由がない」
ルナも指摘してきたし、僕も気になっていることだけど、あの時の橘の様子は少しだけどおかしかった。だから僕から宝玉を奪うにしたってもっと他の宝玉があっただろうに。
「お兄ちゃんの持っているのを知らなかっただけじゃないのー?」
「まあ、その可能性が高いかな」
サラちゃんの言うように橘が把握していなくて、それで適当に言った可能性も確かにある。そこまで深く考える必要はないのかもしれないな。
「ま、まって、王都が襲撃されるんでしょ、なら、お兄ちゃんたちに知らせないと」
「そうだね。おそらく未来が視えるって現象としては理解できても頭では理解しがたいだろうから栞から伝えてくれないか? そこで僕の名前を出してもいいから」
「わかったわ。伝えてくる」
そして、栞は部屋の外に出て行った。ただ、神崎たちに知らせたところでってところは確かにある。それはルナも危惧していたようで、
「しかしおそらくですが、ご主人様の同郷の者たちは……邪神教側の人間が圧倒的に強いと思われます」
「栞が回復系だからっていうのもあるのだろうけど、それでも厳しいだろうね……だから」
そこで僕は言葉を切って、みんなを見渡す。そして話す。
「橘たちを止めるよ」
「うん!」
あえて僕たちの目的を宣言する。その意味を、サラちゃん以外は理解したようだった。カナデとユキから悲痛な感じの視線が飛んでくる。
「アカリ……」
「アカリさん」
「栞が出て行ってよかったよ……僕がすることは橘を止めることだ」
「わかりました」
「みんな、協力してくれ」
そう言葉を切って、みんなが首を縦にふるのを見て、僕は部屋の外に出る。とりあえず、今日の夕飯を作らないとね。




