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現代病床雨月物語 第二十一話  秋山 雪舟(作) 「民とマリア観音(その二)  徳川史観によって悪人にされた忠臣・松永 久秀」

作者: 秋山 雪舟

 徳川時代に流布された『信長公記』等では、松永久秀について、信長は「この老翁は世の人のなしがたき事を三つなした者なり将軍を殺し、主君の三好を殺し、大仏殿を焼いた」と言っていますが事実はそうではない様です。大仏殿の焼失だけがキリシタンサムライが火を付けた可能性があると言われています。

 今までの知識では悪人として登場するだけでした。しかし何となく違和感がありました。信長の残虐・非道な振る舞いは文書や言い伝えが残っていますが近畿では松永久秀の行いはほとんど伝えられず、悪人だった証拠に乏しいからです。逆にお城の建築の常識である多聞櫓を開発した人として有名だからです。

 私の夢に登場するキリシタンの老若男女の話しでは松永久秀を悪く言う人がいませんでした。

 夢に登場した老女の話では、三好長慶殿は父の死により急遽畿内での勢力を拡大する必要になり、多くの畿内のサムライが長慶殿に登用されることになりました。その中に高山ダリオ殿と共に松永久秀殿もいました。他にも柳生殿・結城アンリケ殿もいました。

 久秀殿は、長慶殿に才能を評価され頭角を現し自他共に認める長慶殿のブレーンになりました。のちにこの事が三好家の内紛の火種になりました。久秀殿は畿内において朝廷と権威をよりどころにした足利将軍家と武士や仏教勢力の複雑な力関係を考慮しながら三好家の地位の向上にひたむきに努力していました。また久秀殿は母である妙忍様の影響により熱心な法華宗の信徒でありました。久秀殿の配下の中には仏教に失望した人達がロレンソ了斎殿の話を聞く中でキリシタンになる者が多く現われました。私(老女)もその後にキリシタンになりました。以前は一向宗でした。

 久秀殿は決してキリシタンになることはありませんでしたが、キリシタンを弾圧することもありませんでした。久秀殿は家臣の能力を良く知っていたので逆に忠実なキリシタンの家臣を信頼して重用していました。また畿内では有名な楠正成・正行の子孫である楠正虎を登用し北朝の正親町天皇から書状をもらい間接的に南北朝の和解の労をとりもちました。久秀殿は、摂津・河内の歴史をないがしろにしない人でした。

 久秀殿の宿敵は、奈良の仏教勢力と結びついた筒井順慶殿でした。久秀殿は順慶殿と興福寺の勢力が結びついて足利将軍家を利用する事を嫌っていました。また、楽市楽座をめざすため興福寺の仏教徒が奈良経済を牛耳る事を嫌っていました。その後、久秀殿の運命は三好家の内紛により暗雲がたちこめます。発端は三好長慶殿が亡くなったことです。三好家の反松永久秀派が台頭してきました。久秀殿は何も悪くなかったのですが久秀殿は苦戦をしいられました。その後に三好家の家督を継いだ殿様の口添えにより反松永久秀派と和解することになり再び三好家に結集します。

 その時にはもう時代が織田信長殿の時代になっていました。久秀殿も信長殿の傘下にはいりました。久秀殿の最期(天正五年=一五七七年)は信長殿に反旗を翻しました。その理由は、織田家担当の奈良の代官である塙直政殿が大坂本願寺攻めで討ち死にしたにもかかわらず信長殿は塙直政殿の側近たちまでにも敗戦の責任を負わせ奈良を宿敵の筒井順慶殿に与えたからです。松永久秀殿は悪人ではなく最期まで三好家につくした忠臣です。とキリシタン老女は言っていました。

 私は、この話を聞いたときに感じました。なぜ徳川家は『信長公記』等を使い松永久秀殿を悪人にしなければならないのかをそれは江戸に幕府を開いた徳川家のアキレス腱だからです。松永久秀殿の事実を放置してしまうと朝廷のおひざ元の畿内においてキリシタンと連合した新しいタイプの第二・第三の楠正成・正行を生み出す恐れとキリシタンの弾圧の為だと思いました。いままでの歴史の違和感の謎が少し解けたと思いました。これからもいろいろな事が地下からわき出す泉のように歴史に新しい光があたる事でしょう。新しい何かが動き出す予感を感じました。


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