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FANTASY OF BLOOD  作者: 戯言
1/3

データ1:魔王の一日

可愛い魔王は、お好きですか?


朝。


目を覚ました魔王は、まず髪をとかす。

出来るだけツンツンに髪を立たせる。

だがしかし、整髪料の類は一切使わない。

それは、髪が痛むからなどの理由ではなく、単に魔王のポリシーである。

そう、魔王は自分に厳しくなければならない。

それは、荒くれ者を束ねる魔王という立場にあるものとしては当然の事である。

城下町には、麻薬の密売人やギャングの類がはびこっている。

それも、一般に、人間と呼ばれる種族のものよりも、一回りも二回りも三回りもでかく、腕っ節も人間と比較にならないくらい強い。

火を吐いたり、時間をとめたりするような特殊能力タイプもいる。

魔王は日々肉体と精神を鍛え、そのような魔物を束ねなければならない。

城下町の魔物が不祥事を起こした場合は、魔王自ら制裁に行かねばならない。

魔王の一日は、毎日が波乱万丈、ドッキドキなのである。



髪をとかし終えた魔王は、朝食を食べる前に事務の仕事をする。

ほとんどは印を押すだけのものだが、中には署名をしなければならないものもある。

しかも、書類をよく見ずに印を押してしまうと、訳のわからないものに騙されてしまうこともある。以前は、危なく城中のメイドや執事、下働きの者全員にブルー○イディスクプレーヤーを買ってやるところだった。事務仕事に関して適当だった魔王も、このときから書類によく目を通すことにした。


やっと事務仕事を終えた魔王は、朝食を食べるために食堂へ向かう。

広い城の中では、何処へ行くにも一苦労である。

十分ほど歩いてやっと食堂へ辿り着く。

魔王の朝食はいつもパンである。

おかずは目玉焼きやハム、ウィンナーなど、出来るだけ庶民と同じものを食べるようにしている。魔王は、自分だけいい暮らしをしていては、町の庶民から非難を浴びると考え、貧相な食事をわざとしているのである。



食事を終えた魔王は、いよいよ城下町の視察に入る。

身支度を整え、城の裏門から外に出る。

魔王の服装は、一見魔王のそれとはわからない服装である。

はっきり言って、ボロである。

それは、自分の身分を隠すためであり、ありのままの城下町を見て回るためである。

自分が魔王だと分かると、自分をよく見せようと食事屋でハンバーグを多くしたり、クリームソーダのアイスを多く乗せたりした輩がいた。

だから、魔王はそれを防ぐため、身分を隠しているのである。



城の外に出た魔王は、城下町を颯爽と歩く。

たまに自分を魔王と気付く者もいるが、そのような者は口止め料を払い、黙らせる。

それでも黙らない奴は、制裁を与える。

魔王は強い。

かなり強い。

魔界で一番強い。

年に一回、魔王に挑戦する大会のようなものが開かれることもある。

その大会で、魔王は負けたことが無い。

何故そんなに強いのかというと、魔王は珍しい能力を持っているからである。

しかも、大抵の者は、ひとつのものに関して恐ろしい力を発揮する。

怪力を持つものは直接的な暴力で。

特殊能力を持つものは、その能力を使っての戦闘を得意とする。

つまり、怪力を持つものは特殊能力が弱いか、持たないもの。

特殊能力を持つものは、その能力を磨くために、筋肉を鍛えることをせず、能力をさらに高みへと持っていく。

しかし、魔王は違う。

万能タイプなのである。

身体もがっちり鍛えているし、能力もかなり高いレベルのものを使える。

そして、その能力とは、一度誰かの能力を見ただけで自分の能力として使えるという「アイシーク《ぬすみみ》」である。

はっきり言って卑怯な能力だ。

が、しかし、かなり役に立つ能力である。

魔王は、戦うたびに強くなる。

相手の能力を盗み、魔王は強くなる。

魔王が戦った相手は数え切れないほどである。

その戦った者達からいちいち特殊能力を盗んでいるので、魔王は自分でもどんな能力を盗んだのか忘れかけている。

たまに知らずの内に能力を発揮して、自分がこんな能力を持っていたのかと驚くこともしばしば。

困ったものである。



魔王は一軒の酒場に入る。

城下町のはずれのほうにある、古びた小ぢんまりとした酒場。

この酒場は、今年で68歳になるおじいさんが経営している。

魔王はカウンターの席に座り、ジンジャーエールを頼む。

これでも魔王は仕事中なので、酒は飲まない。

というか、この魔王は酒が飲めないのである。

魔王がちびちびジンジャーエールを飲んでいると、酒場のドアが乱暴に開かれる。

三人の屈強な魔物が入ってくる。

入ってきた魔物は、周りの客を跳ね飛ばし、奥のテーブルへ座る。

最初からいた客は、驚いてほとんどが帰ってしまった。

席についた魔物は、大声で話し始める。

注文もせず、テーブルに足を乗っけて、である。

おじいさんは魔物を注意しに行く。

魔物が怒り出した。

おじいさんが怒り出した。

魔物がおじいさんを床へ突き飛ばした。

おじいさんが魔物を酒場の外へ吹き飛ばした。

おじいさんの勝利、である。

実はこのおじいさん、魔王の師匠である。

魔王は、剣と能力のノウハウ、戦闘の知恵などをこのおじいさんから習った。

おじいさんがいなければ、今の魔王はない。

それくらいに恩人なのである。

そして、おじいさんはこの目の前で座ってジンジャーエールを飲んでいるのが魔王だということを知っている、城下町で数少ない者の一人である。

おじいさんは、魔王にそっと微笑みかけ、ジンジャーエールのおかわりを渡す。

魔王は黙ってそれを受け取る。

ジンジャーエールを飲み終えた魔王は、おじいさんに礼を告げ、お金を置いてその酒場を後にした。




魔王が、そろそろ城に戻ろうかと思案していたとき、事件は起こった。

通りの目の前の銀行から、爆発音が聞こえてきたのである。

魔王は、やれやれといった表情で銀行の中へ入って行く。

中は大惨事だった。

植木が倒され、机はひっくり返され、人がごみのように散らばっている。

その中で、十数人の人質と、今回の強盗の犯人の男達がいる。

男達の数、ざっと7人。

魔王は激怒した。

よくも俺の国の人間を殺してくれたな。

覚悟しやがれ。

手前ェらに明日はないと思え。

そう言って、魔王はそいつ等に飛び掛った。

0.8秒。

魔王は一人目に飛び掛り、首を掴んで180度ひねる。

男は悲鳴を上げる間も無く、息絶えた。

1.7秒。

ここで魔王は特殊能力を使う。

目があった相手を石にする「ゴーゴン《いしがため》」。

男三人を一気に石にする。

3秒。

男二人を一気に殴り倒す。

あっという間も無く、強盗は残り一人になった。

最後の一人は、いかにも強そうな屈強な男だった。

男はさも自信ありげに、魔王に向かってかかってこい、と合図した。

そして、戦いの火蓋は切って落とされる。

ぶつかり合う二人、にらみ合う二人。

だんだん傷が増えていく・・・、わけはなかった。

戦いは一瞬で魔王の勝利に終わった。

男が雄叫びを上げる間もないほどに、勝負は一瞬でついていた。

男の首が中を舞い、落ちると同時に魔王は背を向け、銀行を後にした。



一仕事終え城に戻った魔王は、メイドからの出迎えを受けながら中に入る。

あれだけの戦闘をした後でも、疲労はまったく見えない。

魔王は執務室に入り、事務の仕事をする。

今度の事務は、自分で書類を作らねばならない。

隣国との友好関係を立て直そうと、話し合いの場を設けねばと思案する。



ある程度の事務仕事を終え、魔王は夕食を摂る。

夕食の献立は、さばの塩焼きであった。

やはり夜も、庶民とできるだけ近い食事を摂る。

魔王の好きな食べ物はハンバーグだが、なかなか作ってはもらえない。

良い子にしていれば作ってもらえる事を魔王は知っている。

だから今日も魔王は国をまとめるための労力を惜しまない。

魔王が食事を終えると、時はすでに九時を回っていた。

良い子は寝る時間、である。

だから、魔王は眠りにつく。

明日の夕食はハンバーグであることを願って。

12歳の少年、魔王は眠りにつく。

明日こそは、国が平和である事を願って。




乱筆乱文誠に失礼。

僕が前に書いた、「魔王の一日」を連載化してみましたー。

次回に魔王のライバル!?勇者が現れる予定です。

期待していてくださいな。

感想、意見、よろしくお願いしますー。

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